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インタビュー 初音ミク生みの親 伊藤博之

初音ミクをファンの方々と共に、さらに世界中に広げていきたい

「ガチ!」BOUT. 191

 

日本が生み出したバーチャル・シンガー、初音ミク。歌声合成ソフトウェアのキャラクターとして誕生後、“彼女”にあわせてクリエーターたちが創作した音楽・イラスト・動画などが話題となり、世界的に人気に。先月ニューヨークで開催されたコンサートでは2日間で5000人を動員した。生みの親、クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之社長にお話を伺った。 (聞き手・高橋克明)

NYで5000人動員

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社長、最初にお聞きしたかったのは、本社が札幌にありますよね。東京ではない意図があるのでしょうか。

伊藤 意図? 意図は……僕が札幌にいるから。(笑)

なるほど。(笑)

伊藤 北海道出身なんですよ。で、起業した際にも札幌にいましたので、特別な理由はないんですけれど。(笑)

東京が日本の中心のイメージがあって、ビジネスをする上での便宜上を考えてしまったのですが。

伊藤 あまり影響はないですね。(札幌から)成田まで1時間半。都内にいても成田まで1時間半かかっちゃいますから、交通的にアクセスが不便ってことはないですね。それに、北海道には可能性があると思ってますから。今となっては札幌で良かったなとは思ってます。

初音ミクは可能性そのものという気がします。今回のエクスポは、インドネシア、ロス、ニューヨークで立て続けに成功を納めました。クリエーターとして、どういった点がこれだけの人に受け入れられたと思いますか。

伊藤 初音ミクは、もともとは音楽のソフトウェアなんですよ。もっと具体的にいうと歌声を合成するソフトなんですよね。初音ミクというソフトを買ってきたとして、自分のパソコンに入れます。そうすると自分の好きな歌詞、メロディーで歌を歌ってくれる。歌声を合成するソフトにキャラクターをつけたことにより、バーチャルな人格が出来上がったわけですね。そうすると、初音ミクを使って音楽を作る方が大勢出てらっしゃって、出来上がったものをネットで公開するようになったわけです。

自分の“作品”を初音ミクに歌わせる。1122-gachi-M_hatsunemiku_Itoh

伊藤 そうですね。「ユーチューブ」に投稿する際も、“ビジュアルの何か”があったほうが投稿しやすいですよね。見た目がないものは投稿しにくい。なので、“初音ミクのイラスト自体を自由に使ってください”って無償で公開したんですね。「初音ミク」というソフトを発売した、その日にそうしました。すると、たくさんの方が初音ミクを使って音楽を作ってくれる。音楽だけじゃなくて、3Dのイラストを作って公開される方とか、さまざまな創作がネット上で起きまして。

世界中に広がる速度も速いはずですね…。

伊藤 アメリカやヨーロッパだけでなく、アジアまで、さまざまな人が初音ミクを見てて、好きになってくれる。それだけでなく、世界中の人が初音ミクのクリエーターとして、さまざまな国でイベントやコンサートを開いてくれる。

社長の知らないところで、「初音ミクコンサート」が行われている。(笑)

伊藤 そうなんです(笑)。そういった方が世界中にいらっしゃるということは毎日、初音ミクの新曲がリリースされるということなんですね。本来、アーティストが3カ月に1回くらいの割合で出す新曲を、初音ミクの場合は毎晩、何十曲も新曲が出てくる。それを楽しみに、世界中の方々がまた、初音ミクの動画を見る。そうするとまずます初音ミクの存在が大きくなり、それを繰り返すごとにどんどん大きくなっていく。そういった流れで知名度が一気に世界中に広がっていったんですね。

当初の肖像権、と言っていいのか、商標登録に関しては…。

伊藤 もちろん、初音ミクは当社の権利になっています。その上で、どうぞ好きに使ってください、という形で、まずはネット上でルールを決めました。ある一定の基準で使う限りはどうぞご自由に、というライセンスを作って、その後に一般公開しました。

実は初音ミクが勝手に一人歩きしてここまで世界的な認知を取ったと当初思っていたのですが、お話を聞く限り、伊藤社長は最初から海外を視野に入れてらっしゃって、今のムーブメントも当初から予想されていたということが分かりました。

伊藤 もちろん、勝手に広がっていったという側面もあるとは思います。ただ、庭を作る際、放っておくだけだと雑草でボサボサになりますけど、きちんとキレイに整頓して、石ころも落ちてない状態で、みんなが気持ちよく利用できる状態にするには、やはり、それなりのメンテナンスも必要でしたねー。しかも日本庭園だけでなくて、他の国の庭園も作っていくとなると自分たちで意識をしっかり持ってメンテナンスしていかなきゃいけない。

世界規模の“庭園”を作る上で一番苦労した点はなんでしょう。

伊藤 やはり、先ほど話したルールづくりですね。クリエーター、というか自己表現をされるファンが多いわけですから、初音ミクを使う方たちの間でマナーを啓蒙(けいもう)する。初音ミクを使って何か物をつくる際には気持ちよく声を掛け合って、その雰囲気を作る。そこには非常に苦労しましたね。

この世界中のファンをつないでいるアイコンが日本のものということがうれしかったりします。(笑)

伊藤 そうですね、日本発のコンテンツなので、音楽も日本語で歌っている曲がほとんどなんですよ。なので、どこの国のコンサートでもお客さん、日本語で口ずさんでくれるんですね。東南アジアでも北米でも、皆さん日本語で歌ってくれるんです。

……すごいですね。(驚)

伊藤 ………すごいですね。(笑)

先日、アメリカを代表するテレビ番組であるトークショー「デイビッド・レターマンショー」(「レイト・ショー・ウィズ・デイビッド・レターマン」)にも出演されました。反響はスゴかったのではないですか。

伊藤 実は全然…(笑)。日本では「デイビッド・レターマンショー」って言っても「何ですか、それ?」って状態だと思います(笑)。アメリカ人他、外国の方の反応を聞いて、あぁすごい番組に出たんだなっていう印象を持たれる方はいましたけど、日本のメディアからはほとんどアプローチがなくて。(笑)

ホントですか!?(笑)

伊藤 御社が初めて…。(笑)

あの番組で日本のアーティストが歌ったということがまだ信じられないくらいの偉業なはずですが。

伊藤 まぁ、アーティストかどうかは…人間じゃないんで。(笑)

従来のアイドルを応援している人は、一緒に年を取っていく楽しみもあると聞きます。初音ミクに関しては年を取らない。

伊藤 そうですね(笑)。そこは確かに、そうかもしれないですね。

ただ今のお話を聞くと、従来のアイドルと最初から立ち位置が違うわけで…。

伊藤 うん、 初音ミク自体は自ら歌うことも、自ら踊ることもなくて、自己表現したい人が初音ミクを支えてる。「ものを作る人」を応援したいという本能は人種を問わず、人間誰しも持っているものなので、「初音ミク」というモチーフはそれを後押ししてるに過ぎないんですね。自己表現する人のシンボルみたいな存在なんですね。絵を描くにしても、音楽を作るにしても、ダンスを踊るにしても初音ミクを使えば、世界中の多くの人に見てもらえるわけですから。今後、形を変えていくことはあっても、そこの(自己表現する人のアイコンだという)本質は変わらないと思いますね。人間が何かを表現したいという本能がある限り、社会から必要なくなることはないと思っています。自己表現する場所がインターネットですから、その潮流はずっと続いていくんじゃないかと思うんですよ。

ワールドツアーも成功させた初音ミクですが、今後の展開はどうお考えでしょうか。

伊藤 ムーブメントとして世界中に徐々に浸透してきてますけれど、あの〜、初音ミク自体は誰かに後ろで支えてもらって初めて皆さんの目に届くものなんですよ。なので、今後も初音ミクを使って創作をするファンの方々と一緒に、このインターネット文化を維持しながら、さらに世界中に広げていきたいですね。
★ インタビューの舞台裏 → ameblo.jp/matenrounikki/entry-11941926193.html

 

ニューヨークで行われた「HATSUNE MIKU EXPO」の模様
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web_HatsuneMikuExpoNY_1018_13 web_IMG_2264
web_HatsuneMikuExpoNY_1018_7 (© SEGA/ © Crypton Future Media, INC. www.piapro.net Graphics by SEGA / MARZA ANIMATION PLANET INC. Production by MAGES.)

伊藤博之(いとう ひろゆき) 職業:クリエーター、(株)クリプトン・フューチャー・メディア代表取締役
1965年、北海道生まれ。北海学園大学経済学部卒業。北海道大学に職員として在籍後、95年、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社を札幌市に設立。効果音やBGM、携帯電話の着信メロディなど、音に特化した事業を展開。2007年音声合成ソフト『初音ミク』を発売、大ヒット商品となる。コンサートと企画展示を併催した初音ミクの創作文化を世界に向けて発信するイベント「HATSUNE MIKU EXPO」の第1弾を5月にインドネシア・ジャカルタで、10月にはロサンゼルスとニューヨークで開催した。北海道情報大学客員教授。
クリプトン・フューチャー・メディア公式サイト:www.crypton.co.jp/、初音ミク公式ブログ:blog.piapro.net/

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2014年11月22日号掲載)


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