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インタビュー 宮本亜門(3)

この街で新たな表現を提供したい

 「ガチ!」BOUT.99

 

宮本亜門

 

毎夏ニューヨークで開催され、世界的な注目を集める「リンカーンセンター・フェスティバル」。今年の招待作品「金閣寺」の演出を手掛ける宮本亜門さんに、舞台にかける意気込み、原作に寄せる思い、自身とニューヨークの結びつきを語ってもらった。(聞き手・高橋克明)

 

舞台「金閣寺」NYで上演 

日本人として初のブロードウェイ・ミュージカルの演出を手掛けた「太平洋序曲」(2004年)から7年、今回はリンカーンセンターフェスティバルに演劇としての招待ですが。

宮本 今までどうしても「亜門」というとミュージカル、と思われてきたので、今回は芝居で評価いただいたことはうれしいですね。まして三島由紀夫の舞台化なので、これをニューヨーカーたちがどう見るか。ワクワクもしてるし、ちょっと緊張もしています。もう、ニューヨーカーは「MISHIMA」ってだけですごい興味を持つから。(笑)

確かに(笑)。特に今回は三島作品の中でも荘厳なイメージがある「金閣寺」です。舞台化は非常に難しかったのではないでしょうか。

宮本 あの長編小説を2、3時間の舞台作品として仕上げるのは不可能だろうと、皆さんに言われてきました。だからこそのチャレンジで、そこに僕は燃えてしまうタイプなので結果的には良かったのかな、と。ストーリー自体は…ま、重いですよね(笑)。最後は焼いちゃう話だからね。コンプレックスを持った男がどうやって自分は生きていけるのか、その方法論を探していく話なので、どうしたって重いです(笑)。ただ、明るい舞台ではないけれども「こんなの見たことない!」という舞台にはなっていると思います。ボイスパフォーマーを入れた音楽に、目くるめく舞台が展開していき、最後はスペクタクルなところもあって、大胆で実験的な作りになっていると思います。ちょっとした賭けではあったけど、そういう意味では僕らしい作品と言えますね。僕にはお芝居はお芝居らしく、ミュージカルはミュージカルらしくこうあるべきだという発想が全くないんですね。ジャンルを飛び越えてそれぞれの面白さを全部詰め込んで、新たな作品として表現ができればいいじゃないかと。だから今回もオーソドックスが好きな人からは反感を買うかもしれない。でも賛否両論も含め、反応はすごい楽しみですね。

見どころを一言で言うのは難しいと思いますが。

宮本 そうですね。これは三島の書いた言葉で戦後、日本は「ニュートラルで、富裕な、空っぽな」状態が続くことになります。人間が表面上だけの付き合いになり、お互いにちゃんと向き合おうとせず、お金やモノに全てが偏っていく。主役の溝口はそんなはずじゃないとどんどん苦しみ、悩んでいく。そして最後にああいった行動に出る。これはそのまま三島由紀夫の生き方と重なっているんですね。三島さん自身、生きる以上、自分が今生きているという確実な実感が欲しかった人で“それなり”に生きられない人だったんですよ。その生き方が東京(公演)でも若い人たちにすごく響いたと思うんです。あらためて、三島さんって「昔の人」なんかじゃなく「今の人」なんだなって思いました。生きる以上精一杯生きたい、人と目を合わせず適度に生きるのは嘘なんだと、それを反映したところにこの「金閣寺」の面白さがあると思いますね。

その溝口役にV6の森田剛さんを指名された理由はなんでしょう。

宮本 僕は森田君がジャニーズであるとかは全くどうでもいいことで、本当に森田剛という一人の役者に魅かれたんですね。原作が溝口の語る内面だけで構成されているものなので、観客が溝口に感情移入できなかったらこの舞台はできない。そう思った時にV6?なのかな、いつも端っこにいて(笑)ちょっと斜めにモノを見ているような森田くんが「溝口」に重なって見えたんですね。特に稽古に入ってからの彼の目はいい意味で孤独と狂気を持つようになった。他の同世代の二人(高岡蒼甫、大東俊介)と一緒に、何一つブレることのない集中力でやってのけてくれましたね。

亜門さんにとってニューヨークで演出を手掛けるという意味は何でしょうか。

宮本亜門宮本 この1年でヨーロッパ各地を回って気付いたことは、演劇に関してはニューヨークが最先端ではなくなってきているってことなんですね。ニューヨークこそ素晴らしいと思い続けていることで、いつの間にか遅れちゃったというか。正直に言うと、今のニューヨークの演劇は感覚が古いです。ある意味一番遅れているかもしれない。ヨーロッパの人はニューヨークを新しいとは全く思ってないですね。フランス、ベルギー、ドイツ、イタリア、北欧ではもっとアバンギャルドなものを、と新たな挑戦が始まっています。ブロードウェイって実はすごくコンサバティブなところでどうしてもハッピーエンドでないと安心できないというか、新たな挑戦がなかなか受け入れられないところではあると思うんです。だからこそ、僕はこの街で皆さんがイメージしているものと違ったミュージカルを、芝居を提供していきたい。ニューヨーカーにしてみれば、おせっかいって言われるかもしれないけれど、そういう新たな流れとニューヨークの持つ大きさみたいなものをうまく融合させて、こんなものもできるんだよっ、ていうのを提供していきたいんですよ。すごく生意気だけど、いろんな挑戦ができるってことをニューヨークの人にも知ってほしいんですね。

ということは、今後もニューヨークには訪れていただけますね。

宮本 僕ねー、ニューヨークに来続けて、もう30年以上でしょう。だから僕にとってニューヨークは「訪れる」っていう感覚ではないんですよね、もう。街角全てに思い出が残っちゃってるから(笑)。だから、ここはもう、いいと「。(マル)」を打つことは永遠にないだろうなと思います。今も空港からタクシーに乗って摩天楼が見えてくると、呼吸が楽になるんですよ。はーっ戻ってきたって。好き勝手な格好して歩いてるニューヨーカーたちを見てると楽だよなぁ、人間くさくていいなあぁと。その気持ち、変わんないでしょうね。もうこの歳までそう思っちゃってるから。そして、いろんな作品を作りたいという思いも、やっぱり変わらないんじゃないかと思いますね。

宮本亜門(みやもと あもん)職業:演出家
1958年生まれ。東京都出身。出演者、振付師を経て、2年間ロンドン、ニューヨークに留学。帰国後(1987年)、演出家としてデビュー。翌88年には、同作品で「昭和63年度文化庁芸術祭賞」を受賞。ミュージカルのみならず、ストレートプレイ、オペラなど、現在最も注目される演出家として、活動の場を国内外へ広げている。2004年に、ニューヨークのオンブロードウェイにて「太平洋序曲」を東洋人初の演出家として手掛け、同作はトニー賞の4部門でノミネートされる。公式サイト:http://amon-miyamoto.com

 

◎公演情報 ことし1月にオープンしたKAAT〈神奈川芸術劇場〉の芸術監督に就任した宮本亜門さん。そのこけら落としとして、三島由紀夫原作の「金閣寺(The Temple of the Golden Pavilion)」を舞台化。同作は今夏、リンカーン・フェスティバルに正式招へいされ、リンカーンセンター内ローズシアターで21日から24日の間、全4公演(21日、22日、23日夜8時、24日午後2時)を行う。出演は、森田剛、高岡蒼甫、大東俊介、中越典子ほか。

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2011年7月16日号掲載)


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