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インタビュー 米倉涼子

“生まれ変わってもやっぱり「シカゴ」はやりたい”

ブロードウェーで10日からシカゴに主演  「ガチ!」BOUT.123

 

ニューヨークのブロードウェーでロングラン中のミュージカル「CHICAGO(シ カゴ)」に10日から15日(全6公演)まで主演する女優の米倉涼子さん。現地キャストに加わり、ロキシー・ハート役で全編英語の舞台に挑む。ブロード ウェーデビューとなった今回、舞台にかける思いを公演に先駆け語っていただいた。
(聞き手・高橋克明)
◇ ◇ ◇

公演間近ですが、今のお気持ちはいかがですか。

米倉 想像してた以上に練習させてもらえる時間が少なくて。だからお稽古する時間を自分から作んなきゃいけないんですね。日本だと毎日6時間くらいみっちりっていうのが当たり前のことなんですけど、ブロードウェーがそうなのか、15年以上公演し続けてる舞台だからそうなのか、全然(時間を)取ってもらえない。厳しいですね。日本でも孤独だったのに、ここでも、また孤独なんだ、みたいな。(笑)

稽古の段階で、すでに日本とは違う点も多々ある、と。

米倉 まず(合同練習に与えられる)時間が少ないです。アンサンブルもいろいろ変わったりするので、合わせることもあるんですけど、いったん合わせたら、後は自分でやるしかないっていう。後は、息を出さなきゃいけないってことに、すごくエネルギーを使うんだなって今更ながらビックリしてます。

息を出す?

米倉 ひとつの言葉を言うために、息を使って全てを前に出すっていうか、普通のおしゃべりではなく、お芝居になると(観客に)届かせるためにもっと言葉をフォーワードにするっていうのかな。ずっと出しっぱなしにする感じなんですよ。

しかも英語で、ですよね。

米倉 もうね・・・。萎えそうです(笑)。そもそも台本を全て覚えればペラペラになるのかなぁとか思ってたんですけど、全然ダメですね。(笑)

セリフでも相当、苦労もされたんですね。

米倉 「された」じゃなく今でも大変です!とにかく、苦労ってもんじゃないですね(笑)。普通にしゃべればいい、伝わればいいって問題ではないので。でも結構長い間、日本では練習してきて、ものすごく厳しい方が教えてくださったので、今となってはそれが助かってますけどね。「いいよー、大丈夫。聞こえるよー」って感じで流されるわけじゃなく、もう本当に一つ一つの単語にフォーカスしながら練習したので。ただ、こっちに来てから覚えた単語もやらなきゃいけない(笑)。日本人って英語を話す時、単語の最後の方を抜かしがちだったりしますよね。最後の方を省略しても通じると思っているというか。だから(最後まできっちり発音することに)ものすごいエネルギーが必要なんだなっていうのを、こっちに来てから毎日実感してるところです。

米倉さんだと簡単にこなしちゃうイメージもありますが。

米倉 ぜーんぜんっ! だって、そもそも私、イングリッシュスピーカーじゃないから(笑)。日本語の台本だって覚えるのに時間かかるじゃないですか。そこからさらにスラスラ言えるようにならなきゃいけないし、もちろん意味も分かってないといけない。だからやっぱり時間かかりますよね。多分、皆さんが想像する1000倍大変だと思います。(笑)

当然ですが、母国語の舞台とは全然違うわけですね。

米倉 全っ然、違うし、もう最初はのどが痛くて痛くて、私、死んじゃうんじゃないかなって。歌でのどがやられるんならまだしも、しゃべってるだけでやられちゃいそうでしたから。最初のうちは、もう(日本に)帰りたいって思いましたから。もう出なくてもいいからって。軽い思いつきで(舞台に)立てたらいいなぁって言っちゃったことがこんなにキツイことになるなんて。

(笑)。こんなはずじゃなかった、と。

米倉 でも、だからこそやりがいがあるし、意味があるって思ってます。壁は大きいし、苦労もあるけど、でも苦労って楽しいんですよ、すごく。嫌なんですけど、でも生きてる感じがする。今、この時点で誰よりも私は人生を感じてる、生きてるって思えるんです。(公演期間は)1週間だけだけど、誰にも味わえない、これは私のものなんですっていう感じですね。申し訳ないけど、ゴメンねって感じで(笑)。だから、やっぱり言ってみるもんだなって今は思ってます。(笑)

主役としてブロードウェーに立つのは、日本人女優では54年ぶりの快挙ですし。

米倉 でも、(54年ぶり)だからやりたいっていうよりも、すごいことだからやりたいっていう気持ちですね。みんながやれないものと思っているからこそやりたい、そういう思いの方がずっと強いです。

そのブロードウェーに立ちたいと実際に意識したきっかけは何だったんでしょう。

米倉 (ブロードウェーキャストの)アムラ(フェイ・ライト)が日本に来て(※日本公演で日本語で出演)それこそ日本語なんて「ありがとう」しか知らなかった彼女が、やってみる? って聞かれたら、何も考えずに「やる!」って答えたらしいんです。そんなアムラの「やってやる」っていう気持ちを見た時、私は彼女より若いし(笑)、同じ舞台だし、(日本公演の)「シカゴ」のカンパニーはオリジナルのカンパニーと姉妹のような関係で、振り付けも衣装も全部同じだから言葉さえクリアできればやれるのかしらって。もちろん、私はダンサーじゃないし、歌手でもないし、ただ、ただ、お芝居をしてきただけで、それすらも10年くらいしか経ってないですけど、でも、そんなことは観る人には関係なくて、プロとして挑戦するっていう感覚は同じなんじゃないかなって思ったんですね。

演じられる主役のロキシー・ハートという女性。米倉さんから見てどういった女性でしょう。

米倉 言葉であまり説明できないんですよね、彼女の性格を。いろいろ教えてくれる人はいるんですけど、でも演じる人によって全然違う。(過去)何十人も(の人が演じた)ロキシー・ハートっていますけど、やっぱりその全てが演じる人によって違いますよね。当たり前なんですけど。

確かに、そうですね。

米倉 単純に言ったら、人殺しで、芝居上手で、自分の嘘(うそ)に入り込んじゃう人っていうのかな。嘘つきっていうよりも自分がついた嘘をいつの間にか嘘とも思わず、本当と思える人。お芝居してるつもりにならないで、嘘が言えちゃう人なのかなって思います。

当初から自身が演じてみたいと思われていましたか。

米倉 初めて観た時は、ヴェルマの方が断然好きで、観る時もいつもヴェルマばかりを観ていたし、映画(版)を観た時もヴェルマ役の方に惹(ひ)かれてましたね。(笑)

僕も最初聞いた時はヴェルマ役かと勝手に思ってました。

米倉 「え! ヴェルマじゃないの」ってよく言われます(笑)。ただ(ヴェルマ役に比べて若干)踊りの量が少なくて、お芝居(を見せること)ができるっていうのがロキシー(役)の醍醐味(だいごみ)なのかなって、

今は思いますね。

「緊張感」という意味ではいかがですか。すでに経験している日本と、今度のプロードウェーに違いはありますか。

米倉 同じです(あっさり)。日本(の時)だって、初ミュージカルだったし、(今回)ブロードウェーに立つ時も、多分、私、同じような緊張感があると思うんです。ブロードウェーだから怖いってわけじゃなくて、ちゃんとできるのか、大丈夫なのかが怖いってだけで、同じ舞台ですから。ブロードウェーも世界各国からお客さんが来ているように、東京(公演)も外国の方が観に来ているし、そういう意味では舞台がどこにあるかっていうのはどうでもいい。自分がやりたいことを自分が満足できるようにやれるかどうか、自分に緊張してるって感じですね。

ではご自身の中で楽しみなのはどちらでしょう。

米倉 うーん、日本語だと翻訳台本なので、英語の方が伝わりやすいかもしれないです。「こういう言葉って日本語じゃあんまり使わないよね」っていうふうに訳されていることもありますし。それにミュージカルは尺の問題もあるので、そういった意味では英語の方がやっぱり(観客に)ストレートに伝わるのかなとは思いますね。韻を踏んだり、リズムもそうだし、いろいろなものが音の中に組み込まれてたり、良く考えて作られているって思います、やっぱり言葉が多い分、日本語にするのは難しいんだと思いますけど…。でも結局は同じだと思いますね。

ただ、日本の場合だと米倉さんの知名度で劇場に足を運ぶファンもいますよね。米倉ファンはそれだけで来場する。ここ(劇場)では半分は観光客で埋まり、米倉さんのことを知らない人もかなりの数が来場されると思うんです。

米倉 私、ラッキーだなって思うのが、自分のファンクラブってないんですね。なので自分のファンがどれくらいいるのか普段から分からないんですよ。もしかしたら10人かもしれないし、100人かもしれない。分かってないんです。それって逆にラッキーだなって思うんですね。もちろん、ファンの方がいらっしゃるから演じられているということも分かってるんですけど、ファンを作るためにこれをやろうとか、一度も思ったことないんです。本当に自分が演じたいから、演じるっていうのが一番伝わるんじゃないかな。別にかっこつけてるわけじゃないんですけど、やりたいことをやるからこそ、観てくださる方も楽しいと思ってくれるんじゃないかなって信じてるんですね。結局、そういうふうにやる方がうまくいくって思ってます。

なるほど。ちょっと抽象的な質問になってしまいますが、今回の舞台を通じて観客に伝えたいことって言葉にすると何でしょう。

米倉 なんっにも考えてないです! 何にも考えません、もう(笑)。そんなこと考えてる余裕自体、今はないですね。

分かりました(笑)。ではブロードウェーのあるこのニューヨークは、ご自身の中で「好きな街」にランクインされてますか。

米倉 実はあんまり得意じゃなかったんですね、最初は(笑)。なんだか忙しいし、東京にいる時とあんまり変わらないし、リラックスできないなって。でも、今は、日本人よりアメリカの人の方が自己主張がちゃんとあってすごく分かりやすくていいなって思えてきてますね。イエスかノーか、良いか悪いか、人の顔色をうかがわず、無駄な時間を使わなくていいなって思います。本当にこの人に愛があるかないかも分かるし。

はい。

米倉 街自体は日本の方がきれいだなとは思いますけど。(笑)

はい。(笑)

米倉 でもその前に、今の私にとってはほんとにチャレンジの場所だなってことですね。そう思います。まー、でも、そうですね…。うん、なんか好きになれそうです。好きになりました。(笑)

最後に一つだけ。米倉さんは生まれ変わってもまた女優という職業を選ばれるでしょうか。

米倉 (しばらく考え)…。なにか、でも、やっぱり「シカゴ」はやりたいですね。こっちで初めて「シカゴ」を観た時から思ってるんですけど、こういうこと言うと他の仕事に対して失礼な感じに聞こえたら嫌なんですけど、でも「シカゴ」さえあればいいかなって、これからも。それぐらい好き! 何でなのかうまく説明できないですけど、でも、本当に好きなんです。

■米倉さんの「シカゴ」出演情報

出演スケジュール:7月10日~15日(午後8時、15日のみ7時半)

劇場:Ambassador Theatre(219 W. 49th St, bet B’way & 8th Ave)

公式サイト:www.chicagothemusical.com

米倉涼子(よねくら りょうこ) 職業:女優

神奈川県出身。1992年「第6回全日本国民的美少女コンテスト」審査員特別賞を受賞。モデル活動を経て、99年に女優デビュー。NHK大河ドラマ「武蔵MUSASHI」、「黒革の手帖」、「交渉人」など数々のドラマ、映画、CMで活躍。2012年舞台「風と共に去りぬ」で菊田一夫賞を受賞。ブロードウェーミュージカル「CHICAGO」日本語版(08・10年)にロキシー役で主演し、好評を博す。12年7月のブロードウェイデビューに引き続き、8月末より東京、赤坂ACTシアターにて北米からの招聘(しょうへい)カンパニーのメンバーとしてロキシー役を演じる。

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2012年7月7日号掲載)


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