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インタビュー 宮本亜門(1)

人によって異なる死生観をひとつのドラマで伝えたい

「ガチ!」BOUT.17

 

宮本亜門

 

ワシントンDCのケネディーセンターで開催される、日本の最先端の芸術を紹介するジャパンフェスティバルで、オリジナルの新作ミュージカルを発表する宮本亜門氏。公演を直前に控え、作品について直撃インタビューを行った。
(聞き手・高橋克明)

 

水上作品をミュージカル化「Up in the Air」DCで上演

公演まであと1週間をきりました。今は一番お忙しい時ですよね。

亜門 とても順調です(ニッコリ)。本番はたった4日間なんですけども自分たちにとっては、その先のニューヨーク公演や日本公演をぜひいつか実現したいと思っているので、今は大切に丁寧に創ろうとしているスタッフみんなの意気込みを感じているところです。

今回の「Up in the Air」の演出をするきっかけは何だったのでしょう。

亜門 水上勉さんの作品「ブンナよ、木からおりてこい」が原作なんです。僕が大学を卒業したころかな、当時観て非常に感動したんです。一見、童謡やファンタジーと思いきや実は生と死という深ーいテーマがあり、単なる楽しいだけでなくそこにある精神性みたいなものにすごく惹かれたのを覚えています。そしていつか自分がやれたらなぁと漠然とは思ってたんです。で、その後に僕はここ(ニューヨーク)で9.11を経験した。あの時の雰囲気も知ってるし街中からプラスティックのこげた匂いがしたのも覚えてる。それに(WTCから)人が飛び降りたという話も聞いていました。それから「生きるという事はなんだろう、死ぬという事は何だろう」という事を強烈に考えるようになったんですね。宗教とはまた別の部分で人により違う死生観がある、それを伝えたい時に、かといって布教活動するわけではなくひとつのドラマによって伝えていけたらと思ったんです。

この作品自体の演出は亜門さんにとって初めてとなるわけですが。

亜門 (主役が)蛙っていうと、ちょっとね(笑)最初は「子供向けですよね」って断られかけたんです。でも9.11以降ますますその思いは強くなりしつこく蛙、蛙、って何回も言って(笑)、そうしたら(今回の)ケネディーセンターからお話があって。ただ、自分の作品を東京でこんなことやってますよって紹介することにあまり興味がなく、日本の精神性が描かれているものをアメリカ人に伝えたいと考えるようになったんです。(だから)できたらオリジナルをやらせてほしいと。それに吉井さんが乗っかってくれて、やっと具体的にスタートした感じです。

宮本亜門非常に魅力的なメンバーがそろったと聞きました。

亜門 ええ、こんな小さなバジェットなのに。よく集まってくれましたよね(笑)。でもこの8人が実にいいんです。ブロードウェイの中でもよくこのメンバーが集まったねって言われるほど、実力派ぞろいのキャストが集まりました。とにかくすごいです。「ヘンリーのおかげだよっーっ」て毎日言ってます(笑)。それも含めてこの休憩なしの1時間30分の公演はある意味初めて演出をゼロから作り上げていったという、言ってみれば愛らしい子供のようなものですね。

今回のテーマは命という非常に重いものですね。

亜門 ホント重そうですね(笑)。別にあえて重い物を選んでやりたいわけじゃないんんですよ。ただ、楽しくエンターテインメントをつくるだけでは面白くないんです。ただの技術屋さんになったような気がして。もちろん技術はもっと勉強したいし、絶対に必要なものですけど目的としては今、僕たちが生きている時代に語りたい事を演劇を通じて伝えていく、作品を通じて人と語る事なんです。演劇の歴史云々とか功績を残すとかどうでもいいんです。僕が死んだら僕のこともみんな忘れてしまうのも悪くない。だって天国には何も持っていけませんものね。

宮本亜門東洋人初のオンブロードウェイの演出をしたり、数々の賞を受賞したりしているのに!

亜門 賞ですか? 困ったな。あんまりよく分かんない(笑)。もちろんそのおかげでお仕事頂いてこうやっていろいろな人とあえてありがたい話ですけど、それ以上は自分の中で響かないですね。「太平洋序曲」の時もノックをされた場所にたまたま僕がいたというだけで偉いわけでもすごいわけでも何でもない。(演劇という物を)好きで好きでオリジナル性を大切にする人だったら誰にでもチャンスはあるんです。だから僕も好きだという気持ちを大切にしたいとは思いますけど。

演出家、宮本亜門としては日本人の役者さんと海外の役者さん、どちらが演出しやすいですか。

亜門 どちらもやりやすいですよ。それぞれ(違う)面白さがあると思います。ただ、稽古場のうるささで言えばこっちの勝ちかな。ホントにみんな大声でしゃべる、しゃべる。友達同士のパーティーじゃないんだからよくそんなに話す事(あるな、と)昨日会ったばかりじゃん!みたいな(笑)。でも楽しんで笑ってる中に本当の彼らのピカピカ光ってる才能がどんどん出てくるんです。日本の場合は怖いくらい稽古場が静かだからこっちが引き出していかなきゃいけないし、こっち(アメリカ)はいい加減うるさいよって言わなきゃいけない。でも(日本とアメリカを)行ったり、来たりして本当に面白いですね、人って面白い、国って面白いなって経験で感じれます。

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◎インタビューを終えて

今回お会いしたのは実に4年ぶり。2004年の「太平洋序曲;Pacific Overture」の時にインタビューさせていただいて以来でした。その時はオンブロードウェイにおいて東洋人初のプロテューサーという事で世界中の舞台人から注目を浴びる大プロジェクトでした。そして今回の作品。亜門さんは「ある意味初めてすべてゼロから創りあげていった作品」と本当にうれしそうな笑顔で答えてくれました。あたらめて、演出家、宮本亜門にとって重要なのは作品の規模でなくその作品を通じて伝えたいメッセージなのだなと実感しました。DCまで車で片道5時間、行く価値ありです。

 

宮本亜門(みやもと あもん) 職業:演出家
1958年生まれ、東京都出身。1987年、オリジナルミュージカルで演出家デビュー。同作品で「昭和63年度文化庁芸術祭賞」を受賞。2004年、ブロードウェイにて「太平洋序曲」を手がける。ミュージカルのみならず、ストレートプレイ、オペラ等、現在最も注目される演出家として、活動の場を広げている。公式サイト:http://amon-miyamoto.com/

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2008年2月3日号掲載)


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