〈コラム〉ニューヨーカーの引っ越し事情から読み解く 家賃に収入が追いつかない現状反映

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タイチ不動産「不動産と住まい事情あれこれ」第70回

まるでDNAに組み込まれているかのようにニューヨーカーは頻繁に引っ越しを繰り返します。ニューヨーカーの70%は賃貸アパートに住んでいるので年に一度のリース更新時には契約延長か、さもなければ新居へ引っ越しを決断しなければいけません。ニューヨーク大手引っ越し業者の2015年度のデータからニューヨーカーはどのように、どこへ、なぜ引っ越しをするのかを探ってみました。

ニューヨーカーのボローへのこだわり

今回の発見の一つはブルックリンから同じブルックリンへやクイーンズから同じクイーンズへと、同一の区(ボロー)内での引っ越しが圧倒的に多く、全体の86%を占めていて、異なるボローへの引っ越しが14%しかなかったことです。ボローを越えての引っ越しが少ない理由は数々想像できますが、アバンギャルドなニューヨーカーには似つかわしくなく保守的な気もします。

マンハッタン内での引っ越しではチェルシーやイーストビレッジ、フラットアイロン、トライベッカなどのダウンタウンが38%、次いでマレーヒルやキップスベイなどのミッドタウンが22%、リンカーンセンターやモーニングサイドヒルなどのアッパーウエストサイドが22%を占めています。

マンハッタン以外への引っ越しを決断

マンハッタンからの引っ越しを決めてもニューヨーカーはあまり遠隔地は選んではいません。一番人気の転居先はブルックリンでした。最も人気があったのはファミリーにも快適な環境のダウンタウンエリアでブルックリンハイツやキャロルガーデン、ダンボ、フォートグリーンなどの北西部が35%、ウイリアムズバーグやグリーンポイントなどの北部が11%、パークスロープも人気があり11%を占めます。

ニューヨーカーはより賃料の安いエリアへ移動中

この大手引っ越し業者のデータで最も興味深いのは全体の68%の引っ越しは、同一ボローの内外の移動を問わず、引っ越し先が賃貸マーケットのより安い価格帯のエリアへの移動を示していることです。これは現在も進行中のニューヨーク賃貸マーケットの高騰に、ニューヨーカーの収入の上昇が追いついていない現状を反映しています。現在のニューヨーカーはより安いアパートを求めて大移動中ということです。
(タイチ不動産 茂古沼孝)
(次回は12月第3週号掲載)

〈記事提供〉
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