インタビュー 綾野剛(1)

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役者として、今回初めて「映画」に愛された気がしました

「ガチ!」BOUT. 179  

 

綾野剛

 

ことし4月に日本で封切られた、綾野剛さんの主演映画「そこのみにて光輝く(英題「The Light Shines Only There」)」(監督・呉美保)が、カナダで開催された第38回モントリオール世界映画祭で、最優秀監督賞を獲得した。プレス上映会と公式会見に出席するために現地を訪れた綾野さんに、急きょ電話インタビューという形で時間を取っていただき、お話を聞いた。同作は4日、第87回米アカデミー賞外国語映画賞部門の日本出品作品にも決定し、ますます話題になっている。
(聞き手・高橋克明)

映画「そこのみにて光輝く」モントリオール映画祭で最優秀監督賞受賞 

もしもし。お忙しいところ、このたびはお電話でのお時間を取っていただきありがとうございます。

綾野 とんでもないです。本当に恐縮です。ありがとうございます。

現在、モントリオールということなのですが、街の印象はいかがでしょうか。

綾野 非常に映画に密接な国だと感じました。昨夜(8月31日)9時ごろに到着したんですが、ちょうどホテルの前で野外映画を上映してたんです。観ている市民の方々の姿を見て、若い人たちも騒がないし、邪魔もしない。何か、この街の映画に対する姿勢というものを感じて、とても勉強になりました。

北米というよりも、ヨーロッパに近い感じだと言われていますね。

綾野 近代的なビルと昔のヨーロッパ調のビルが混在して、独特ですよね。何かいつでも映画を撮れそうな雰囲気が流れてます。

今回はその街で開催された世界的な映画祭での出品ですね。

綾野 やっぱり素直にうれしかったです。日本の映画を世界に届けられるわけですから。

今回演じられた主人公は“生きる目的を見失った男”という非常に難しい役柄だったわけですが、役作りをする上で気をつけたことはありますか。

綾野 まずはその瞬間、瞬間を生きる、ということです。僕たちの日常生活でも、何も考えてないこともあれば、必死に何かをしていることもある。“生きる”って結局はその瞬間、瞬間の連続だと思うんです。撮影中はその“生きる”ってことを意識してやってきました。それが(撮影が進むにつれ)いつの間にか無意識に変わっていったんです。

その役柄の人間になっていった、と。

綾野 (気持ちを)イン、する前に自然になれてました。それはとても良かったなと思っています。

共演の池脇千鶴さんはどんな方ですか。

綾野 昔から存じ上げていたので、やっぱり“日本の宝”だなと思いました。決して過度な表現ではなく。彼女は、演じているというより(役柄の)その人を生きている、という印象でした。

割と激しい濡れ場もありました。昔から知っている仲だからこそのやりづらさもあったのではないですか。

綾野 それは全くなかったです。自然と(シーンに)入っていけました。池脇さんも「綾野君に任せるね」っておっしゃってくれましたし。それは「千夏」という役を通して言ってくれてますし、僕も「達夫」として「愛してます」と始まったシーンですから当然のようにやってました。

(今回、)最優秀監督賞を受賞された呉美保監督は、綾野さんから見てどういった方でしょう。

綾野 ああいった作品を撮っている方にもかかわらず、非常にチャーミングな方です。撮影中はいつも現場をリラックスさせてくれるような監督なんです。舌をペロっと出してみたりとか、かわいらしくて、普段の姿を見ていると、とてもこの映画を撮った監督とは思えない。

なるほど(笑)。今回の作品に出演したことでご自身の中でこれまでと一番変化したことは何でしょう。

綾野 すごく具体的なことを言うと、初めて映画に愛されたような気がしました。

この作品に。

綾野 そうですね。もっと言うなら「映画」というものに。役者として「あ、今、僕、映画に愛されたんだな」って思う瞬間がありました。

そんな作品に出合うことはめったに…。

綾野 ないですね。

今日も多くの海外のメディアからの取材を受けられたと思うのですが、日本の記者と彼らの取材の仕方はやはり違いますか。

綾野 全然違います。(彼らは)質問の前に必ず、映画の感想を述べてくれるんです。この作品を観て、まずは自分が感じたこと、伝えたいことを惜しまずに話してくれるんです。そこは決定的に違いました。

なるほど(笑)。日本の記者会見などではありえないですね。

綾野 (彼らは)いきなり質問からスタートしないです。このシーンはこう感じました。あのシーンはこう思いました。ところで、このシーンはどういう気持ちで演じたのですか…ていう感じです。

答える綾野さんもそれは嫌ではない?

綾野 非常にうれしいです。こういったところは日本は先進国なのに、時間の都合だったりでなかなかできていないところだと思うんです。そういうところはもっと学ぶべきだなと勉強になりました。

今、こちらはニューヨークからお電話させていただいているのですが、来られたことはありますか。

綾野 それがないんです。

ちょっと頑張れば車でも来られる距離ですから。

綾野 ぜひ、お伺いしたいです。その際にはお目にかかれたらと思います。

ぜひ(笑)。最後に在米の日本人読者にメッセージをいただけますでしょうか。

綾野 はい。また一つ誇れる日本映画が生まれました。その作品を一人でも多くの皆さまに届けられるように僕たちも日々まい進していきます。それに、また違う形でも皆さまにお目にかかれたらと思っています。

今日はプレミア上映前の貴重なお時間を取っていただきありがとうございました。それにしても……綾野さん、男前なのにとっても気さくで、話しやすくて、助かりました。(笑)

綾野 とんでもないです(笑)。こちらこそありがとうございました。

 

★ インタビューの舞台裏 → ameblo.jp/matenrounikki/entry-11920399087.html

 

米アカデミー賞出品決定でコメント

綾野さん「大変光栄」

大変光栄です。この作品を、日本映画を、届けられるチャンスをいただいて感謝しています。

 

作品紹介
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41歳で自ら命を絶った不遇の作家・佐藤泰志さんの長編小説「そこのみにて光輝く」を原作に、函館の短い夏を舞台に紡ぎ出す、運命の出会いと家族の物語。生きる目的を見失った男と愛を諦めた女との出会い、そして底辺で生きる家族を慈しむようなまなざしで描く。
モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞を受賞したほか、英レインダンス映画祭、エジプト・カイロ国際映画祭など6カ国に招待され、日本国内外で大きな注目が集まっている。
主演は綾野剛、ヒロインに池脇千鶴。ヒロインの弟を菅田将暉が演じる。出演はほかに、高橋和也、火野正平、伊佐山ひろ子、田村泰二郎ら。監督は「酒井家 のしあわせ」で長編デビューを飾り、「オカンの嫁入り」で新藤兼人賞を受賞した呉美保。日本では4月19日から全国公開され、東京や札幌などでアンコール 上映中。
【公式ウェブ】hikarikagayaku.jp/

綾野剛(あやの ごう) 職業:俳優
1982年1月26日生まれ。岐阜県出身。2003年に俳優デビュー。その後、『Life』(07/佐々木紳監督)では主演と音楽監督を務める。「最高の離婚」(13/CX)、「空飛ぶ広報室」(13/TBS)、大河ドラマ「八重の桜」(13/NHK)、「S―最後の警官―」(14/TBS)など話題のドラマに出演。映画『クローズZEROⅡ』(09/三池崇史監督)で強烈な印象を残した。以降、『シュアリー・サムデイ』(10/小栗旬監督)、『GANTS PERFECT ANSWER』(11/佐藤信介監督)、『孤独な惑星』(11/筒井武文監督)、『へルタースケルター』(12/蜷川実花監督)、『るろうに剣心』(12/大友啓史監督)、『その夜の侍』(12/赤堀雅秋監督)、『新しい靴を買わなくちゃ』(12/北川悦吏子監督)、『横道世之介』(13/沖田修一監督)、『シャニダールの花』(13/石井岳龍監督)、『ガッチャマン』(13/佐藤東弥監督)、『夏の終わり』(熊切和嘉監督)、『白ゆき姫殺人事件』(14/中村義洋監督)、『闇金ウシジマくん2』(14/山口雅俊)、『ルパン三世』(14/北村龍平監督)など、多くの監督から信頼を得てオファーが絶えない。公開待機作として、『新宿スワン』(15/園子温)、『S―最後の警官―』(15)がある。

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2014年9月13日号掲載)

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