ジョシュ・バーネット

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闘いにひそむ美しさも観て

「ガチ!」BOUT. 13

11月7日から、アジア系テレビ局イマジンアジアンTVで放送が開始される「パンクラス:伝説の格闘家(Pancrase:Legends of Mixed Martial Arts)」。その記者会見のため、ニュ-ヨークを訪れた、パンクラス初代チャンピオン、ジョシュ・バーネットにインタビューを決行した。(聞き手・高橋克明)

 

“蒼い目のケンシロウ” ジョシュ・バーネット

ジョシュさん、初めまして。小学校のとき『北斗の拳』のケンシロウを見て以来、僕にとってジョシュさんはもっとも好きなファイターです。

 ドウモアリガトウ(日本語で)。僕にとってもケンシロウは勿論、MY FAVORITE FIGHTERだよ。

実は昨年の10月ラスベガスで一度お会いしてるんですが(※1)覚えてもらってますか?

 (絶対、覚えてない様子で)モ、モチロン!あの時はありがとう。久しぶりだね。

(笑)今回、いよいよ米国で初の『パンクラス』放送が決まりました。どういった経緯でホストをつとめる事になったのでしょう?

 僕の方から言ったんだよ。番組作りに参加させてくれって、ね。だって僕以上にパンクラスに詳しいアメリカ人はいないからね。知ってる? 僕がパンクラスのチャンピオンなんだよ。

(笑)自分で言わなくても知ってますよ! アメリカで格闘技と言えばUFC、あるいはプロレス団体のWWEがメジャーです。そんな中、視聴者にはパンクラスのどこを観てほしいと思いますか?

 過激さだけでなく闘いにひそむ美しさも観てほしいね。闘いって怖いとか恐ろしいとか思われがちじゃない。だけどそれ以上に試合によっては美しさもある。単なる勝ち負けだけでなくリングの中で僕たちが、彼らがどうパフオーマンスを繰り広げるか。そこを観てほしいね。

ルール的にもパウンドより関節技で決まる試合の方が圧倒的に多いですもんね。

 だからパンクラスは他の格闘技団体と違って家族とテレビの前で座ってゆっくり安心して観られるコンテンツだと思う。ショー自体の躍動感を感じる事が出来ると思うよ。

他の団体は家族で観られない?

 UFCの事言ってる?(笑)(※2)いい質問だね。(笑)はっきり言ってUFCは大人の娯楽とは思えないなぁ。悪いとは言わないけど、もし僕に子供がいたら観せたいとは思わないね。罵り合いも多いし。彼ら(子供達)がパンクラスを観たいというのを信じてるよ。

ジョシュさんにとってパンクラスとはなんでしょう?

 うーーん、勿論ひとことじゃあ言い表せないよね。僕にとっては本当に深い意味を持っている。それに僕だけじゃなくパンクラスなしでは今日の多くの素晴らしい選手は存在してなかったと思うし、間違いなく業界全体も今のMMA(総合格闘技)のレベルにまで達していないよね。

近い将来、ここアメリカでジョシュさんの試合を観る事が出来ますか?

 OF COURSE!! まずここアメリカでパンクラスが成功するのに僕が手助けできる事があれば何でもやるつもりなんだ。パンクラスとはずっと良い関係でいたいしさっきも言ったように今のMMAシーンにパンクラスはとても重要だという気持ちは変わらないしね。そのパンクラスのチャンピオンになれたという事は僕の人生の中でも最も誇りに思える事だよ。

でもアメリカを主戦場にするとジョシュさんの好きな秋葉原にそんなに行けなくなりますね。

 (興奮気味に)OH~~! それはBIG PROBLEMだね。アキハバラは素晴らしい街だし、特に中野ブロードウェイは…(ここから特に話の筋に関係ない話がかなり長く続くので大幅カット)。

ただ、かつての盟友達がここアメリカでは思うような結果が出ていません(※3)。

 ミルコの事? 非常に残念な結果だったね。だけど僕を倒さない限りUFCの方がPRIDEより上とは言えないんじゃないかな。それにまだ、ヒョードル(※4)だっているしね。

そのヒョードル選手との初対決を日本のファンは今一番見たがっています。

 今のところヒョードルとの試合を実現できるかどうか何とも言えないな。主催者次第だと思うよ。僕の方はあいかわらずいつでも望むとこだけどね。いろいろなしがらみもあると思うけど解決策をきっと見つけ出せると思ってるよ。

最後にニューヨークについての感想を聞かせてください。

 以前に一度だけUFCの試合で来た事があるけどジムがあるホームタウンはシアトルなんだ。でも僕にとってはやっぱりアキハバラの方が好きかな。(笑)

※1 昨年10月PRIDE初の米進出大会『PRIDE・32』に出場。柔道金メダリスト パウエル・ナツラを見事撃破。試合後控え室で談笑する機会があり『GIVE MEメイシ!』といわれビジネスカードまで交換したのだが。

※2 UFCとは現在アメリカナンバー1の格闘技団体。ジョシュはそこの史上最年少チャンピオンだったが代表の名物社長ダナ・ホワイトとは因縁浅からぬ関係。はっきり言っちゃうと仲悪いのだ。

※3 PRIDE 消滅に伴い主要選手がUFCに大量流出。あのミルコクロコップも連敗。インタビュー後にはアナハイム大会でマウリシオ・ショーグンまで負けてしまった。その当日リングサイドにいた筆者は格闘技を観て初めて泣いた。

※4 エメリヤエンコ・ヒョードル。ロシアン皇帝といわれる現MMA界最強の選手。先日ニューヨークにおいてUFCでなく新興団体M-1と正式に契約した記者会見があった。その際弊社の社員が調子に乗って本紙を渡したところ、さすがの最強皇帝も全編日本語の新聞を渡され明らかに迷惑そうに戸惑う。ちなみにその日の表紙は『渡哲也イメチェンで主演ドラマに挑戦』だった。

◎インタビューを終えて

はっきり言ってテープレコーダーを止めた後の世間話の方が面白く秋葉原の事、ジャパニーズアニメの事、そして勿論北斗の拳の事と盛り上がりまくり。こんな事ならレコーダーまわしたままの方が良かったなと思ってしまう程だった。最後はイマジンアジアンのスタッフの方に電気消すよーと言われて部屋を追い出される現パンクラスチャンピオンと筆者。その後は『ヨロシクオネゲーシマース』と2度目の名刺交換。最後までリング上のキャッチレスリング同様、我々のハートをがっちりキャッチして離さないジョシュであった。

JOSH BARNETT(ジョシュ・バーネット)
職業:MMAファイター

1977年11月10日、米・ワシントン州出身 191cm 116.5kg。

元・UFCヘビー、現パンクラス無差別級チャンピオン。PRIDEでも昨年の無差別級トーナメントにおいてMVP級の準優勝。自身を『蒼い目のケンシロウ』と呼ぶほどの北斗の拳、ケンシロウマニア。入場テーマはもちろん『愛を取り戻せ』(アニメ『北斗の拳』のテーマ)でYOU ARE SHARK!とクチずさみながらリングに向かう姿に多くの日本のファンは何度も昇天させられた。『僕はアメリカ代表でなく日本代表として闘うよ』と言いきる親日ファイターのその徹底ぶりは『日本人はこうでなくっちゃ』とわざわざ来日してから(米国で買うより高い)グッチのバックを購入するほど。『世界最強のオタク』とも呼ばれる。

■番組紹介「JPancrase:Legends of Mixed Martial Arts」

1993年から2000年までの船木誠勝、ケン・シャムロック、バス・ルッテン、鈴木みのる、フランク・シャムロック、近藤有己など、パンクラスの黄金時代を引っ張った往年のファイター達の闘いをフラッシュバック。パンクラスの現チャンピオンであるジョシュ・バーネットがホスト役を務め、それぞれの試合を振り返る。ImagineAsian TV:www.iatv.tv

※パンクラスとは

約15年前に発足した日本を代表する総合格闘技団体の一つ。当時『藤原組』を退団した船木誠勝、鈴木みのるらでスタート。当時の『秒殺』という流行語はこのパンクラスのハイスパートしすぎちゃったレスリングにより試合結果までハイスピードになってしまったという、そんな現象から生み出されたものだと筆者は密かに思っていたりなんかする。

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2007年11月4日号掲載)

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