インタビュー 二階堂ふみ

0

プレッシャー? 映画が好きでこの仕事をしてるので、ないですね(笑)

「ガチ!」BOUT. 173

 

二階堂ふみ

 

第36回モスクワ国際映画祭グランプリを受賞した「私の男」(熊切和嘉監督)のヒロインを演じた女優の二階堂ふみさんが第13回ニューヨーク・アジア映画祭でライジング・スター・アワードを受賞。リンカーンセンター・ウォルター・リード・シアターで行われた授賞式に出席するため、ニューヨークを訪れた。同映画祭では、主演の3作品が上映。そんな注目の女優、二階堂さんに作品への思いやニューヨークについて伺った。(聞き手・高橋克明)

 

ライジング・スター・アワード受賞

二階堂さんにとってニューヨークは特別な街と聞いたのですが…。

二階堂 去年、2カ月間だけですけど、短期留学してたんですね。ブルックリンとニュージャージーに住んでました。

そうだったんですね!(驚)

二階堂 はい(笑)。初めての海外はベネチア映画祭で行ったイタリアだったんですけど、その後(仕事としてではなく)自分の意志で自分でチケットを取って行ったのがニューヨークだったんです。

その特別な街で、今回、ライジング・スター・アワードを受賞されました。

二階堂 そうですねー。こういう形でまた帰ってくることができて本当にうれしいです。(にっこり)

でも二階堂さんにとってみれば、先日のモスクワ国際映画祭でも受賞されたり、その若さで各国の映画賞を総ナメされてらっしゃるので、もう特別な意味を持たないんじゃないかと変な心配をしてしまうのですが…。(笑)

二階堂 でも、あんまり賞にはこだわってないんです。賞を取ることよりも良い作品を作ることが大事であって、賞っていうのは、なんかグリコのおまけのようなもので、後からついてくるご褒美っていう感じなので…。受賞に関してはあんまり深く考えてないですね、ハイ。

なるほど。これまでも海外の映画祭には何度も出席されてらっしゃいますが、日本の映画館の反応と海外のそれは、やはり違いますか。

二階堂 全然違いますねー。こっちの方が(反応が)分かりやすいですよね。よく笑ってもくれるし、逆に面白くなかったら、途中退席も普通にしちゃうし(笑)。すごく正直で私は好きだなぁって思いますね。

2011年に行かれたベネチア映画祭はいかがでしたか。

二階堂 すごくすてきな街だったんですよ。リド島っていう小さな島で映画祭は行われるんですけど、街自体がお祭りみたいになって、本当の意味での映画の祭典って感じで…。日本の映画祭ももっと面白くなってくれればいいのにって思いましたね。

今回はニューヨークで出演作3本が北米初上映ということですが、それぞれどこをニューヨーカーに観てもらいたいですか。

「私の男」の一場面(© 2014 “My Man” Film Partners)

「私の男」の一場面(© 2014 “My Man” Film Partners)

二階堂 そうですね。まず「私の男」が上映されるっていうのがとにかく本当にうれしくて。私にとっては10代最後の、というより10代の集大成のような作品で、特別な思いがある映画がこの私の大好きな街で上映されるってことが、とてもうれしく思いますし、もちろん他の二つも特別な思い入れのある作品ですから。

「地獄でなぜ悪い」に関しては脚本も読まずに園子温監督の作品だからという理由で出演をオッケーしたと聞いたのですが。

二階堂 あれは単純にごはんを食べてる時に不意打ちに電話をもらって、「出てくれない?」みたいな(笑)。で、「あぁ、いいですよ」って答えたら、本当に決まっちゃったっていう残念な感じの、あんまりいい話じゃないんですけど(笑)。でも、監督とは本当に信頼関係はありますね。園さんが監督(する作品)なら(脚)本を読まなくても絶対面白いだろうっていうのは直感的に思ったので、考える必要もなく「はい」って答えました。

あの作品のラスト30分は本当にすごくて、撮影現場はどうだったんだろうって想像してしまいました。

二階堂 もうカット割りもあってないようなもんでした(笑)。とにかく撮りながら、(監督が)アイデアが出るたび、どんどん(シーンが)追加されていったり、もう何がなんだかよく分かんない状態でしたねー。やっぱり園さんの現場っていうのはどういう作品が出来上がるのか、終わってみるまで未知数ですね。

作品を観たり、お話を聞く限り、二階堂さんは映画製作の現場に関わっていくことが本当に楽しそうに見えますね。

二階堂 そう言っていただけるなんてすごくうれしいです。やっぱり私は(製作)現場がすごく好きでこの仕事を続けているので。観ていただいてる方にそう感じ取っていただけるのは本当にうれしいですね。

あらゆるタイプの作品に出演されてらっしゃいますが、出演作を選ぶ決め手はありますか。どういった基準で選んでらっしゃるでしょう。

二階堂 やっぱり、この作品に関わりたいかどうかっていうことが一番ですね。監督さんであったり、脚本であったり、キャストであったり、設定であったり、いろんな心ひかれる条件はあるんですけれど、一番大切なのは、この製作チームに自分自身が参加したいか、自分がこの作品の一部になりたいかっていうところだと思います。そこが一番大切ですね。

この先、二階堂さんのゴールはどこでしょう。ご自身でどういったタイプの女優さんになりたいか、理想のようなものはありますか。

二階堂 うーーーーーん……どうだろう。なんか細々とやっていけたらいいかなって(笑)。今も自由にやらせていただいているので、この先も出会いを大切にして自分がビビってくるものに影響を受けながら、面白い作品に出ていきたいってことだけですね。

今後の活躍が期待される若手俳優に贈られるライジング・スター・アワードを受賞した二階堂ふみさん(中央)。両端は主催関係者ら(photo credit: (c) Julie Cunnah)

今後の活躍が期待される若手俳優に贈られるライジング・スター・アワードを受賞した二階堂ふみさん(中央)。両端は主催関係者ら(photo credit: (c) Julie Cunnah)

周囲に本格派の女優と評価されていく中でプレッシャーのようなものは感じますか。二階堂さんの演技にある程度ハードルを高くして見てしまう傾向はもうすでに出来上がってしまっていると思うのですが。

二階堂 全くないですね(キッパリ)。誰かのために映画を作ってるわけではないので、演技を見て仮にガッカリされても、自分のためにやってるわけですから。それにそういうふうな裏切りもできるのが映画であったりもするので。いろんな(演技の)形があっていいと思うので、プレッシャーとか感じたことないですね。

最高です。(笑)

二階堂 ありがとうございます。(笑)

最後に、ニューヨークという街の印象を聞かせてください。

二階堂 もう本当に大好きな街です。とにかく、もう大好き。すごくアーティスティックな街ですよね。夏に来たのは初めてなんですけど、もう街全体がパワーにあふれてて。ジャズを気軽に聴きに行けるお店も多いし、美術館も多いし、映画館もいっぱいあるし、本当に、手を伸ばせばすぐそこにアートがある街ですから。ブルックリンなんて、街全体がアートですよね。日本ってやっぱり美術館に行くにしても高いお金を払って行かないとアートが見られない国ですから。普通に生活してて、目や耳にアーティスティックなものが入ってくる環境って子供にとってもすごくいいんじゃないかなって思うんです。もっと気軽に、というか…。

確かに僕たちはヘタしたらサンダルでミュージカルを観に行っちゃったりします…。

二階堂 (笑)。いいなあって思います。そういうの。あ、あとですね、私、初めて来た時、街を歩いててビックリしたんですけど…。

はい。

二階堂 ピザを箱のまま持って、1枚ずつ食べながら歩いてる人を見て、

はい。

二階堂 あと、フォークでお弁当を食べながら歩いてる人とか。

はい…………………………。あれ? 日本にはいないですか。

二階堂 いないです(笑)。あまり見かけないですよね。

……僕たち、もうそれが普通になっちゃっているかもしれないです…。

二階堂 そうなんですね(笑)。でもそういうのが本当に面白いなって。やっぱり皆さん自分がしたいことしてますよね。自分がしたいことに正直というか。人の目をいちいち気にしないというか。それって素晴らしいことだなって思います。

 

二階堂ふみ(にかいどう・ふみ) 職業:女優
1994年生まれ。沖縄県出身。2007年にテレビドラマ「受験の神様」で女優デビュー。09年公開の役所広司初監督作品「ガマの油」でオーディションを経てヒロイン役に抜てきされ、劇場映画デビュー。高校進学を機に上京。11年には青春映画「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」で映画初主演。また、第68回ベネチア国際映画祭に出品された園子温監督作品「ヒミズ」で最優秀新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。以降、NHK大河ドラマ「平清盛」(12)、「悪の教典」(12)、「脳男」(13)、「地獄でなぜ悪い」(13)、「ほとりの朔子」(13)などに出演し、第35回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第56回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞した。
【公式サイト】www.nikaidoufumi.com

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2014年7月26日号掲載)

Share.