古内東子(1)

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スタイルに合わせた小規模ホール
言葉をダイレクトに伝えたい

「ガチ!」BOUT.50

 

デビューから一貫して「恋愛」をテーマにラブソングを世に送り出しているシンガーソングライターの古内東子さん。昨年10月、エイベックス移籍第1弾として、3年ぶりとなるフルアルバム「In Love Again」をリリース。それを記念して、1月にニューヨークで初となるライブを行った。何かと縁のあるニューヨークでのライブ、またニューアルバムについてお話を伺った。(聞き手・高橋克明)

 

レコード会社移籍第1弾 アルバム「In Love Again」リリース 思い入れの地でNY初ライブ

まずは非常に寒い中、ニューヨークに来られまして(笑)、僕たちもこんな寒さはめったに経験した事ないのですが(インタビュー収録日1月後半)いかがでしょう、極寒のニューヨーク。(笑)

古内 そうですね(笑)。10年くらい前のちょうど今と同じ季節に(観光で戻って)来た事があって、その時の記憶をたぐり寄せて、で今回、防寒着、着て来たんですけど正解でしたね。(笑)

住まれていた20年前と、今と、この街の一番印象が変わった点はどこでしょうか。

古内 20年前って私自身が高校生だった頃だし、印象は随分変わりましたね。やっぱりもう少し暗いイメージがありました。ちょっと、危ないというか。今は雰囲気的には明るくて安全になりましたね。

古内さんにとって、アメリカは全然遠い国じゃない感じですよね。

古内 そうですね。なにか外国って感じはあんまりしないです。特にニューヨークは何度も来ているので西海岸以上に違和感がないです。

今回のアルバムは、実に3年ぶりのリリースです。

古内 今まで15年間やってきて、ここ(最近の)3年はいろいろ考える事もあって、歌う事とか、曲を作る事についてもう一度、こう、なんていうのかな、原点に帰って楽しめるようになった3年間だったんですね。だから逆にすごく新鮮な気持ちで作る事ができたし、プロモーション活動もミュージシャンやプロデューサー、スタッフたちと楽しんで(日本)全国を回れて、たくさんの方に直接会う事もできて、そのたびに、あー(この仕事を)ずっと続けて良かったなーって思いましたね。

今回のライブはジョーズ・パブですが、思い入れがあるホールと聞きました。

古内 ちょうど3年前に3カ月間だけこの街に滞在した時に、偶然、矢野顕子さんがジョーズ・パブでライブをされてまして。

それ以降、矢野さんは定期的にジョーズ・パブでされてらっしゃいますよね。

古内 私が見た日が、たまたま初めての日だったんですね。私の中では矢野顕子さんって大御所のような方で、にもかかわらず、「今日が初めてです」ってステージ上でおっしゃって、すごく緊張されていらっしゃったんです。それを見て、あーいいなぁ、と。チャレンジするってことが、すごく当時の私には新鮮に映って、“矢野さんワールド”に引き込まれていくうちに、とても刺激を受けたのを覚えてますね。わたしもいつかここでやってみたいって、その時から思ってました。

その思いが実現した今回のライブですが、当日はどういったお気持ちでのぞまれますか。

古内 今までずっと思い続けてきた、夢っていうと大げさなんですが、具体的な目標の一つがかなう瞬間である事は間違いないんですけど、でもあんまり気負わないように、自分がずっと続けてきた弾き語りというスタイルを自然にできたらいいなとは思います。感無量という気持ちと、いつも通りという気持ちと、その両方でのぞみたいですね。

日本でいつもやっているコンサートと違いはない、と。

古内 そうですね。もちろんこっちでやる以上、アメリカの方や外国の方が一人でもいらしたらMCも英語でやりたいなとは思いますけど、始まったら、いつもの感じで歌うと思うので(笑)。あとはその時そこに立った自分の気持ちを報告できればなと思います。

以前からお聞きしたかったのは古内さんはネームバリューの割に、いつも小規模なホールでコンサートされてますよね。もっと大きな会場でも十分お客さんが入ると思うのですが。

古内 その分、(コンサートの)頻度を多くしていきたいと思っているんです。もう、しょっちゅう、ライブをやってるようなシンガーになりたいんですね(笑)。「ライブやるの?」って聞かれたら、「あぁ、来月やるよ」って常に言えるような人になりたいから。あとは今の弾き語りのようなスタイルにしてからは、言葉をダイレクトに(観客に)伝えたいと思ってるので(小さなホールの方が)合いますよね。

なるほど。すごくヘンな質問になっちゃうんですが、レコーディングで歌う時、コンサートで歌う時、テレビの歌番組で歌う時、あるいは友達と一緒でカラオケで歌う時、歌手にとっては全部違うものなんでしょうか。

古内 うーん、そうですね。違うといえば違うんですけど、そのすべてが歌手として続けていくのにすごく大切な事だとは思いますね。でもライブは、わざわざそこにお客さんが足を運んでくれるという意味ではやはり特別な気がします。

古内さんは同性からの人気がすごくて、「恋愛の神様」っていわれたり、教祖みたいな感じでいわれたりしていますが、ご自身はそういわれる事に関しては、どう思われているのでしょう。

古内 友達にはからかわれます(笑)。からかわれるくらい、実はわたしもごくごく普通の一女性なんですけどね。普通に恋愛に悩んで普通に友達に相談して、叱咤(しった)されて…。でもだからこそ、逆に皆さんが共感して下さるのかな、と。自分の気持ちと似てると感じていただけているんじゃないかなと思います。

ぜひ、「恋愛の教祖」にお聞きしたかったのは理想の男性像なんですが。

古内 そうですね、自分の考えや世界を持っていて前向きな人。

なるほど。では次に女性読者にメッセージをいただけますか。

古内 えっと、いっぱい仕事をして、いっぱい恋をして、いろいろあっても、その気持ちだけは女性として忘れないでくださいって事かな。

最後にニューヨークの印象を聞かせて下さい。

古内 やっぱり受け入れ口が広いと思うんですよ。いつ来ても違和感ないのはそのせいかなと思って。気負う事なく、でもそれでいて、ちゃんと刺激を与えてくれて。うーん、東京にずっと住んでいるんですけど、わざわざスタイルを変えずに、すっと入ってこられるところなのでとてもなじみやすいです。

ニューヨークで初のライブを行った古内さん=1月、ジョーズ・パブ

ニューヨークで初のライブを行った古内さん=1月、ジョーズ・パブ

 

◎インタビューを終えて 年明けの気分も消えかかる2009年の3週間目、古内東子さんは大きめのダウンジャケットを着て現れました。「ホント、ごめんなさい。予定が押しちゃってまして…」。待ち合わせに遅れた事を詫びながら、ニットのキャップを脱ぐしぐさは「恋愛の教祖」というよりはむしろ隣にいそうなすごくかわいい女性でした。大統領就任式当日にもかかわらず、当日のジョーズ・パブは超満員でした。高校時代コネチカットに実際に住んでいた古内さんにとって、ここ東海岸は第2のホームタウン。あこがれとリラックスが見事に融合した素晴らしいライブに日本人の観客のみならずアメリカ人の観客も酔いしれていました。この取材中、今回のために日本から来てくれた友達が空港に到着したという電話を取った時、「恋愛の教祖」はこの日一番の笑顔をみせました。

古内東子(ふるうち とうこ) 職業:シンガーソングライター

東京都出身。93年2月シングル「はやくいそいで」でデビュ-。95年には「誰より好きなのに」を収録した5thアルバム「Hourglass」を発売。全国のCDショップのチャ-ト1位を独占。シングル「誰より好きなのに」のヒットに引っ張られながらロングセラーを記録。98年8月、7枚目のオリジナルアルバム「魔法の手」でオリコン・アルバムチャ-トで初登場1位を記録。恋愛の切なさ、女の子の日常をリアルに描き出す楽曲の数々は、OL、女子大生、女子高生を中心に支持を得、ファンを増やし続けている。新作レコーディングの傍ら、高杉さとみ、Skoop On Somebodyなどにも楽曲提供をしている。今年2月にはChemistryとコラボした「A PLACE FOR US」を発売した。公式サイト:www.tokofuruuchi.net/

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2009年3月28日号掲載)

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