和田アキ子

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人種問わず、魂でぶつかれば絶対気持ちが返ってくる
レイちゃんを胸に抱いて歌いたい

「ガチ!」BOUT.32 

和田アキ子

今年でデビュー40周年を迎える、歌手和田アキ子さんがアポロシアターで集大成コンサートを行う。日本人では初の同劇場単独ソロライブになる予定。紀伊国屋NY店にてプレスイベント、日本クラブでの講演会を行った、その長い1日すべてが終了した後、特別に楽屋にて単独インタビューをお受けしていただいた。
(聞き手・高橋克明)

 

デビュー40周年
アポロシアターで初の海外公演

長い一日、お疲れのところありがとうございます。

和田 いいえ、何でも聞いてください。(にっこり)

アッコさんご自身はニューヨークは何回目ですか?

和田 ニューヨークはもうね、今まで8回くらい来てるんですよ、実は。一番最初に来たのはレイ・チャールズが出ていたBlue Noteでした。もう25年前になりますね。一番最近だと4年前かな。

4年ぶりのニューヨークはいかがでしょう。

和田 今回はもっと親しみを感じましたね。なにか、帰ってきたなって感じです。

アッコさんといえばやはりレイ・チャールズさんとの思い出に関してお聞きしたくなります。

和田 うん、一番の思い出と言えばね、やはりデビュー30周年のコンサートを東京国際フォーラムでやった時でしょうね。レイちゃん、私はレイちゃんって呼んでるんですけど、レイちゃんは私のためだけに2日間日本に来てくれてね。その時に一緒にコラボレーションできた事が最大の思い出だと思いますね。

今回のアポロシアターも本当は共演されたかったと…。

和田 そう、その時にレイちゃんと約束したんですよ。「10年後も一緒にやってくれる?」って。そしたら「オッケー、アッコ!」ってハグしてくれたんですけど、残念ながらレイちゃんは神様のもとへ逝っちゃったんで。だから今回はレイちゃんを胸に抱いて歌いたいと思いますね。

先ほどの会見で「今回のアポロ、もしレイちゃんと一緒に歌えたらもう死んでも良かった」とおっしゃっていたのがすごく印象的でした。

和田 私がこの世界に入ったのはやっぱりレイ・チャールズという人のおかげですから。10年前の30周年(コンサート)の時もコラボさせてもらってるわけで、自分の中では当然40周年も一緒に歌うものだと思っていましたから。だから、なんていうのかな、うーん(しばらく考えて)やっぱりレイちゃんが横にいると思って当日は歌いたいですね。

和田アキ子

アッコさんにとってやはりアポロ・シアターは思い入れが…。

和田 (すかさず)聖地です、聖地。最初は想像もつかなかったわけですから、今やれる事の幸せをすごく感じますね。

プレッシャーもありますか?

和田 プレッシャーはね、もう通り越しましたね。日本人でソロの単独公演は初めてなんですけど、でも私もいろんな人から影響を受けて40年歌ってこれたので自分がちゃんと歌って次の世代のミュージシャンたちに扉を開きたいという責任感はあります。そういった意味でもアポロは特別ですね、やっぱり。

今回は英語でもスピーチをされるという事なのですが。

和田 私の友人、インターナショナルの学校に通ってる学生とか、アメリカ人とか3人ほどに発音を教えてもらったんですけど、全員発音が違うんですよ(笑)。アメリカは広いですからね。そのすべてが“イングリッシュ”だとは思うんですけど。一人は「(正確な発音でなくても)アッコさんのスピリッツでニューヨーカーには伝わるから大丈夫!」って言うし。もう一人は「やっぱり英語はちゃんと発音した方がいい」って言うし。で違う一人はI am a soul manって歌詞を「甘い、そーめん」で「アマソーメン」って言えばうまく聞こえるからって。

あーなるほど。

和田 でも違う一人に「アマソーメン」って聞かせたら「なに、それ」って。

(笑)大変ですね。

和田 大変です、本当に大変です。でもせっかく来たんですから、ちょっとは英語で話したいなと、トライしてみようかなって思っています。

和田アキ子

あの、アッコさんは僕が子供のときからテレビの第一線で活躍されていて、そんなアッコさんが先ほどの会見で「いまだにステージの直前では緊張して震えが止まらない」とおっしゃっていたので驚きました。

和田 歌うときだけ。なぜか歌のときだけは緊張するんですよ。

はー。

和田 バラエティーはね、「アッコにおまかせ!」のような生放送もなんっともないんですね。もう生で、あれ22年やってるんですけど1回も緊張した事がない(笑)。で、歌になるとこれがまぁ、舞台前はコップに入ってる水が飲めないんですね、震えて衣装にこぼしちゃうので。それからはストローで飲むようになっちゃって。それっくらい歌は緊張しますね。

意外な感じもします。

和田 だけど、越路(吹雪)さんもすっごいあがり症だったんですよ、有名なほど。だから(私と)似てるわねって言っていただいた事もあって。で、(美空)ひばりさんはひばりさんで、まっったくあがらない人。

そうなんですか。

和田 ひばりさんに「緊張して歌えないんです」って言ったら頭コツンって叩かれて「歌うあんたが緊張したら聴く方はどうすんだよ」って言われて。あの人わりとべらんめえ口調だったんですよ、はい(笑)。だからわたしにとって教わる事が多かった両巨頭が両極端だったんです。でも緊張はこれはもう、しょうがないかなぁ。デビューして5年くらいまでは何ともなかったんですよ。それこそ言葉は悪いですけど「かかってこんかい」みたいなかんじでしたね。

歌というものが分かり始めてきたという事だったんでしょうか。

和田 そうですね。(緊張し始めたのは)本当の意味で詩の重みや詩の内容を語りたくなってきてからだと思います。今回(の日本ツアーの時)も阿久(悠)さんの事思い出したり、レイちゃんの事思い出したり、関西弁でおかんっていうんですけど死んだ母親の事思い出したりして、歌いながら涙ぐむのは何回かありましたね。

当日は集大成としてどんなお気持ちでステージに臨まれますか。

和田 うまくはいえないんですけど今回のアポロは「最初」ですけど「最後」ではないので。うん、すべてはお見せしますけど、そこで力つきるわけにはいかないですから。引退興行とかなわけではないですから…。うーん、何て言うんだろう、アポロはすべてなんですけど、すべてではないんですよ…。分かります?

はい。なんとなく分かります。

和田 うーーん、どういえばいいかな。How do you say?(笑)

(いきなり振られて)え、えーとアポロは、すべてだけど……………すべてではない。

和田 そのままやないか(笑)。でもとにかく本当に和田アキ子を感じて帰っていただきたいなと思いますね。「アポロ劇場」ですからやっぱりこれはもう、Soul to Soul! 日本人もアメリカ人も魂でぶつかれば絶対気持ちが返ってくるとわたしは思っています。いろいろ考えたんですけど、でもね友達もみんな、そのまんまのアッコさんで伝わるって言ってくれたんで、それが励みになってるので。そのまんまの和田アキ子をお見せできればいいかなーと思います。

最後に読者に向けてメッセージをいただけますでしょうか。

和田 ニューヨークにいらっしゃる理由は皆さんそれぞれにあると思うんですよ。夢を抱いて来ている方、仕事で来ている方。でも昔からBig Appleっていろんな人が集まって誰にでも平等にチャンスがあると思うんです。でも誰にでもチャンスがあるってことはそれだけ人より努力していかなきゃいけない。だからもし悩んだり、落ち込んだりしてる人はもう1回自分を初心に戻して考えてほしいし、今、成功なさってる方はいかにしてそれを持続させるかを考えてほしい。あとはこれだけさまざまな人種がいる街も珍しいと思うんですよ。だからいい意味で「日本人ここにあり」っていうジャンルがもっとあってもいい。例えば飲食業にしろ、建築業にしろ、学生にしろ、先生にしろ、すべて、さすが日本人というのがね、もっとあってもいいかなと思います。だってここはアメリカだけど、ここはニューヨークだから。

 

紀伊國屋ニューヨーク店でのプレスイベントで、コンサートの内容やメディア関係者によるQ&Aが行われた。和田さんはアポロシアターでのコンサートへむけた意気込みを語った=26日午後3時

紀伊國屋ニューヨーク店でのプレスイベントで、コンサートの内容やメディア関係者によるQ&Aが行われた。和田さんはアポロシアターでのコンサートへむけた意気込みを語った=26日午後3時

■インタビューを終えて  今回のコンサートについては日本出発前にもニューヨーク到着後にも多くの方から質問攻めだったはずです。重複している質問も何度もあったはずでした。それでもそのすべてに真剣に、そしてとても優しく答えて下さいました。「これまで数えきれないほど、芸能人、和田アキ子には危機が訪れました。それでも私の歌を待ってくれている人が一人でもいらっしゃるかぎり私は立ち直らなければいけないんだ、そう思って今までやってきました」。その知名度から、ゴッド姉ちゃん、芸能界ご意見番、といろいろな名称で語られる事が多いアッコさん。ただ、そう話されるご本人からは何よりもまず歌手のための自分であるという事、そして今まで何人もの観客をその歌声で魅了してきた自負、が垣間見えました。「今回、私は阿久悠さんともレイ・チャールズとも一緒に舞台に立ちます」。明日のアポロシアターはご本人の集大成としての意味合いだけでなく、在NYのわれわれにとっても見逃せない歴史的なミュージックシーンになるはずです。

和田アキ子(わだ あきこ)

職業:歌手

大阪市生まれ。17歳の時、大阪のゴーゴー喫茶で歌っているのが評判になり、スカウトされる。1968年「星空の孤独」でレコードデビュー。72年に発表した「あの鐘を鳴らすのはあなた」で日本レコード大賞最優秀歌唱賞受賞、その抜群の歌唱力を全国に知らしめた。以後、アルバム33枚、シングル82枚と、多くのヒット曲を世に送り出す。歌手活動と並行して、テレビ・ラジオ番組の司会、映画、ドラマ、バラエティー番組への出演などマルチな才能を発揮。日本ではその名前を知らない者のいない国民的タレントである。公式サイト:www.akofc.com/

■コンサート情報

29日、ことしでデビュー40周年を迎える和田アキ子さん初の海外公演「POWER & SOUL」が開かれる。和田さんが「神様」と仰ぐレイ・チャールズ氏の原点「アポロシアター」で行われる。

〝和製R&Bの女王〟の異名を持つ和田さんが、本場ニューヨークの地で、初めて歌声を披露。名曲「笑って許して」や「あの鐘を鳴らすのはあなた」など、 自身のオリジナルソングに加え、ことし活動50周年を迎える伝説のデュオ「Sam & Dave」のサム・ムーア氏や、R&B界の大御所クイーン「Wild Women」といったスペシャルゲストも招き、豪華なセッションも披露する。

【日時】9月29日(月)【会場】アポロシアター

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2008年9月28日号掲載)

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