森田剛

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亜門さんの「作品」 百パーセント表現したい

「ガチ!」BOUT.100

森田剛

 

「リンカーンセンター・フェスティバル」でニューヨーク公演を行った宮本亜門さん演出の舞台「金閣寺」(7月21日~24日)。吃音(きつおん)に対して強いコンプレックスを持つ青年僧・溝口という難しい役に挑んだ森田剛さん。宮本作品の、三島由紀夫作品の主役として舞台に立つ前日にお話を伺った。(聞き手・高橋克明)

 

舞台「金閣寺」NYで上演

いよいよ明日、初日を迎えますが今のお気持ちはいかがでしょう。

森田 (出発前に)日本で(記者)会見やった時もピンと来てなかったんですけど、こっちに来て、ようやく、だなと。やっぱり日本人以外の人たちに見ていただけるのはすごくうれしいことだし、特に今、日本が大変な時期に、このタイミングで「金閣寺」という舞台をやるのはすごく意味があることだと思うし、うん、すごく感慨深いですね。

日本公演時と今回のニューヨーク公演、気持ちの上で違いはありますか。

森田 全然一緒です。一緒じゃないといけないと思うし。今は、ですけど。

今回演じた主役の溝口という男は孤独感と閉塞感が同居した人物で、演じるには非常に難しい人物だったのではないでしょうか。

森田  一人の人間が生まれて死ぬのって1回きりじゃないですか。でも、溝口の場合は自分の力で1回死んでまたもう1回生まれ変わる、再生する強さを持っている人間だと思うんですね。言葉では伝えきれない、そういった部分をこっちの観客に気付かせたいっていうのはあります。上演中に「こいつ、生まれ変わったんだ な」って。

日本では役作りのための坊主頭が話題になったりもしましたが。

森田 最初、台本いただいて読んだ時に(主人公が)坊主だと分かったわけですけども、最初はちょこちょこ切ってたんですが、あんまりしっくり来なかったんで、最終的には思い切って、坊主にしました。そこでやっとスイッチが入ったというか、「なれた」気がしましたね。

今回、溝口という男を演じられる前と演じられた後、ご自身の中で何か変化はありましたか。

森田  うーん、そうですね。(しばらく考え込み)やっぱり「生きる」ってことについてはすごく考えましたね。「生きる」って、すごくシンプルだけど、すごく深いですよね。同時に自分という人間についても考えさせられました。自分はどんな人間なんだろうと。答えなんて出ないんでしょうけど。

宮本亜門さんの演出についてはどういった印象をお持ちでしょう。

森田  亜門さんの演出って、すごく細かいところまで指示される時と、僕ら演者の思うまま、好きにやっていいよっていう時と両方あるんですね。だから、やっててすごく信頼されているっていうのは感じました。亜門さんが頭の中で想像していることを僕は僕の体を使って百パーセント表現したい。そういう気持ちでいたので、亜門さんの求めることには全てその通り従いたいなっていうのはありました。

では今後も亜門さんから出演のオファーがあれば快諾する、と。

森田 あるんですかね?(笑)あったらうれしいですね。でも(そのためには)僕がもう少し力を付けたいなと思います。

森田剛原作者の三島由紀夫についての思い入れは。

森田 僕は意外とないんですよね。本読んでも最後まで読めなかったんで(笑)。だから僕にとってはやっぱり今回は亜門さんの「作品」としてやった気がします。

東京公演ではV6の他のメンバーもご覧になったと思うのですが、それぞれの反応はいかがだったでしょうか。

森田 あー、でも分かんないでしょうね(笑)。ま、(簡単に)分かられたくないっていう気持ちも正直あります。

今回、共演された高岡蒼甫さんと大東俊介さんという同世代の役者2人についてはどんな印象を持たれてますか。

森田 「金閣寺」って(いう作品は)溝口と(高岡演じる)柏木と(大東演じる)鶴川っていう3人の親密な関係の上に成り立っているので、(舞台裏も)そのまんま。柏木と鶴川から見た溝口の印象を聞いたりとか、逆に溝口から見た柏木、鶴川の印象を話したり。

ライバルというより良き仲間ですね。

森田 そうですね。昨日も到着してすぐに、3人でキックボード買ってそこらじゅう走り回ってたんで。(笑)

森田剛(もりた ごう) 職業:俳優
1979年2月20日生まれ。埼玉県出身。1993年、ジャニーズ事務所に入所。95年、V6のメンバーとして「MUSIC FOR THE PEOPLE」でCDデビュー。歌手として人気を博すなか、映画、ドラマでも活躍。2005年、劇団☆新感線の作品で主演を務めて以来、舞台にも精力的に挑んでいる。

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2011年8月6日号掲載)

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