菊地凛子

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ハリウッドであれ日本映画であれ、そこに〝違い〟を感じたくない

「ガチ!」BOUT.151

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今夏最大の話題作の一つ「パシフィク・リム(Pacific Rim)」(監督:ギレルモ・デル・トロ)。怪獣と兵士が操縦する巨大ロボットの壮大な戦いを描く本作で、重要な役どころを演じる女優の菊地凛子さんにお話を伺った。米国での数々の映画賞で高い評価を受け、今や日本を代表するハリウッド女優となった菊地さんが語る、制作費2億ドルをかけた本SF超大作の撮影秘話、出演に至るまでの経緯とは。全米公開7月12日。日本公開は8月9日。
(聞き手・高橋克明)

ハリウッドのSF超大作に出演

スゴいスケールの映像でした。今回の作品に出演するまでの経緯を教えてください。

菊地 (監督の)ギレルモ(・デル・トロ)が、日本人で役を探しているということでしたので、ギレルモとプライベートでも仲のいい(映画「バベル」の)アレハンドロ(・ゴンザレス・イニャリトゥ監督)にメールを送ったんですね。ぜひ、オーディションだけでも受けさせてほしいって。それが撮影の始まるちょうど半年くらい前でしたね。

アレハンドロ監督とは映画「バベル」に出演して以来、交流があったわけですね。

菊地 そうなんです。ご一緒してからもう8年くらい経つんですけど、いつかまた一緒に仕事したいってことは伝えてたんです。今回は(ギレルモ監督を)紹介していただきました。

オーディションの時点で手応えはありましたか。

菊地 最初はすごくナーバスになってたんですね。でも、それを見たギレルモ監督が、オーディション前にアイスクリーム屋さんに連れて行ってくれたりして。それでリラックスできたんだと思います。(笑)

出演が決定した時はどんなお気持ちでしたか。

菊地 いやぁ、もう、ホントに。夢が叶ったような気持ちでした。以前から出演したいって思ってたギレルモ監督の作品で、しかもSF大作ですから。

ハリウッド映画に日本人が出演する場合、今回のように主役級で全編にわたって登場するのは過去に数えるほどだったと思います。

菊地 そうですね。ラッキーでした。(笑)
DF-05678.DNGしかも、今までとはまた違った役柄でしたね。

菊地 ずっとやりたかった役だったんですね。いわゆるスーパーヒーロー(ヒロイン)っていうのを。フィジカルの面では非っ常〜に大変でしたけど。(笑)

肉体改造もされたとか。

菊地 撮影に入る2カ月前にブートキャンプをしましたね。

2カ月間トレーニングをされたんですか。

菊地 ええ。ウエートリフティングをやったり、ビーチで走ったり。非常に厳しいコーチの下、体を鍛えて、あと食事制限も同時にやりました。メニューも決まっていて、体を大きくしていったんです。今までとは違う役だったので、今までとは違うチャレンジをしたって感じですね。
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その成果もあって、こん棒を使っての戦闘シーンは非常にインパクトがありました。

菊地 もともと自分も殺陣は若いころからやっていて得意な方だったんですね。そこは結構、楽しんでやらせてもらったんですよ。どっちかっていうと、それ以上にコックピットのシーンの方が大変でしたね。

巨大ロボットを操縦するシーンですね。

菊地 スーツがすごく重くって。自分たちに装着されているメカニカルアームっていうんですけれど、非常に重くて(演技でなく)実際に声を張り上げないと両手も両足も動かない状態だったんです。今考えればギレルモ(監督)は多分、わざとそういうふうに作ったんじゃないかなって。ロボットを操縦するための、ある程度フィジカルな面でリアリティーを出さなきゃいけないってこともあったんだと思います。(実在するなら)実際の本物の重さで作られたって感じですかね。

戦闘シーンよりも、バーチャルでロボットを動かすシーンの方が大変だったとは意外です。(笑)

菊地 撮影前のトレーニングをやってる時は、これが終わって撮影に入れば少しは楽になるだろうなって思ってたんですけれど、入ってからの方が大変でした。(笑)
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今回は芦田愛菜ちゃん(写真内-右)が菊地さんの子供時代を演じていらっしゃいます。実際、2人が共演するシーンはありませんでしたが、顔合わせなどで会われましたか。

菊地 ええ、もちろん。セットにも遊びに来てましたし。私、彼女の大ファンだったんですね。とってもかわいらしいコなんですけど、でも、撮影時は本当にプロフェッショナルなんです。影響を受けましたね。

ハリウッドで撮影に入る場合と、日本での役者活動、一番の大きな違いはなんですか。

菊地 うーーーーーん、トレーラーがあるかないか(笑)。まぁバジェット(製作費)が違うので、こっちだと大きなトレーラーがあって、みたいな(笑)。それくらいの差ですかねー。変わりはないと思います。ハリウッドがどうとか、日本映画がどうみたいにあまりカテゴライズせずに、どれも変わらないっていうふうに思ってたいんですね。(観る側の)一映画ファンとしても、そう思ってます。
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場所がどこであれ、演じる仕事に違いはない、と。

菊地 そうですね。それぞれに苦労がありますし、乗り越えなきゃいけない課題もありますので。(日米の差というより)そのプロジェクトによると思います。それがどこであれ、毎回新しい経験ができるって思うようにしています。(出演する)作品によって毎回違う体験ができるってことだと思いますね。

現在ニューヨークに住まわれているとのことですが、プライベートでは東京とどちらがお好きでしょう。

菊地 基本、ニューヨークに住んでいて仕事がある時に東京に戻るっていう生活なので、まだ(快適な場所を)ニューヨークで見つけられてないんですけど…。どうでしょう(笑)。日本人の私としては、確かにニューヨークに住む方がいろいろ大変なことは多いかもしれないですね。でも苦労の先に、それを乗り越えた結果、何かあるのはニューヨークかもしれないです。やりがいがあって、達成感があって生きていく上で楽しいのは、こっちだと思います。非常に刺激的な街ですから。

今後の女優・菊地凛子としてのゴールを教えてください。

菊地 “やりたい”と思える作品には、どんどん自分から動いていこうと思いますし(それと同時に)チャンスがあれば、どんな役にも挑戦していこうと思ってます。あとは…そうですね、頑張ろうってだけですね。(笑)

◇ ◇ ◇

※プロモーションでロサンゼルス滞在中に電話インタビュー
文中写真は全て © 2013 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC

作品情報●

12日公開 「パシフィック・リム」

2013年8月11日、太平洋の深海の裂け目から超高層ビル並の巨体をもった怪物「KAIJU」が突如出現し、サンフランシスコ湾を襲撃。わずか6日間で三つの都市が壊滅する。人類は存亡を懸けて団結し、環太平洋沿岸(パシフィック・リム)諸国は英知を結集して人型巨大兵器「イェーガー」を開発、KAIJUと戦う。それから10年が過ぎ、戦いは続いていたが、かつてKAIJUにより兄を亡くし、失意のどん底にいたイェーガーのパイロット、ローリー(チャーリー・ハナム)は再び立ち上がることを決意。日本人研究者のマコ・モリ(菊地凛子)とコンビを組み、旧型イェーガーのジプシー・デンジャーを修復する。菊地が演じる日本人女性マコの幼少期役で芦田愛菜がハリウッドデビュー。
英語サイト:www.pacificrimmovie.com//日本サイト:wwws.warnerbros.co.jp/pacificrim/

 

菊地凛子(きくち りんこ)職業:女優
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神奈川県出身、1981年生まれ。99年、新藤兼人監督の「生きたい」で映画デビュー。その後、映画では「三文役者」「空の穴」「17才」などに出演する一方、テレビドラマや舞台でも活躍、女優としてキャリアを重ねる。2006年ブラッド・ピットも出演しているアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の話題作「バベル」に耳の不自由な日本人女子高校生役で大抜てきされるとその熱演が評判となり、ナショナルボード・オブ・レビュー賞新人女優賞獲得をはじめ、全米で数々の映画賞の候補に挙げられるなど、一躍期待の若手女優として世界的な注目を集める存在となった。

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

(2013年7月13日号掲載)

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