〈コラム〉HIP HOPなセレブシェフの店

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トミー富田「​ハーレム浅草下町考」Vol. 54

店名&ロゴが示すとおり、メニューの90%以上 がチキン料理。中にはキムチ風味もあり面白い。

ハーレムの入り口110丁目から北の8番街(フレデリック・ダグラ大通り)は、数年前からレストラン・ロウと呼ばれ始めましたが、最近その数はめっきり増え、イタリアン、すし屋、ビールバー、ワインショップ、ベーカリー、フィットネス、ティー専門店…。ざっと以上の新店が並び、まるでアッパーウエストの続きのような街並みで面白くありません。

そんな中で、2015年春にオープンした新参者ながら、とことんハーレムを意識して作られた「Streetbird Rotisserie(ストリートバード・ロティサリー)」は私のお気に入り。このコラム内で、7年前のオープン当時に“オバマ大統領も来た”と紹介した「レッドルースター」は、ハーレム初のセレブシェフレストランでしたが、そのマーカス・サミュエルソンのハーレム2号店となります。

116th Street Tacos”はイーストハーレムからネーミング。他にもハーレムにちなんだ名前がメニューに並ぶ。

エチオピア生まれ、スウェーデン育ち、NYで各賞に輝き、テレビでもお馴染み、今や全米に6店、北欧に5店を展開しながら、現在はハーレム在住のマーカス。「レッドースター」で表現しきれなかった“ハーレムらしさ”を出すために構想4年についやしたとか。70〜90年代のヒップホップ、ブロックパーティをイメージしたメニューとインテリアになっています。地元のアーティストによる壁や床のグラフィティや写真、Boombox(ラジカセ)を積み重ねた巨大アートなど、セレブシェフのイメージからはほど遠い、カジュアルな店内が心地よいのです。

マーカスの店はどこもそれぞれにデザインコンセプトが光ります。彼自身、雑誌「ヴァニティ・フェア」で2年連続ベストドレッサーにランクインしている洒落者で、実は彼のファッション担当をしているのは以前このコラムで紹介したハーレムのこだわり洋品店です。ハーレムコミュニティに貢献しようとしていることが随所から伝わるところもこのお店を紹介したかった私のポイント。オープン当初の気負ったところが、やっと少しずつ取れはじめ、古きハーレムとニューハーレムのいい按配となってきました。オールドスクールのBGMとセレブシェフのストリートフードを楽しみに是非ふらっと出かけてみては。

■お店情報
「Streetbird Rotisserie」
2149 Frederick Douglass Blvd.(1 16丁目角)
212-206-2557
streetbirdnyc.com/

(次回は4月第2週号掲載)

〈筆者プロフィル〉トミー富田(トミーとみた) 東京浅草生まれ。ニューヨーク・ハーレム在住23年の音楽プロデューサー。1994年にアジア人初の「Dr.マーティン・ルーサー・キングJr.アワード」を受賞。ハーレム商工会議所会員。アポロ劇場ボードメンバー。20年以上続けている大人気の「トミー富田のハーレムツアー」は、日本からのファン、リピーターが多いことでも有名。

■トミー富田のハーレムツアー 電話:46・410・0786

ウェブ:tommytomita.com

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