〈コラム〉さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第20回

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着床前診断20~最新の性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断方法(8)~

受精卵の成長にばらつき 結局、冷凍されることが選択される

前回までのリポートでは、着床前診断の結果が出るまでに24時間かかるaCGH(アレイCGH)法を使用した場合には、フレッシュ移植を希望であれば、損傷のリスクがある3日目の受精卵で生体検査を実行するか、胚盤胞になるデー5、デー6まで待って生体移植を行い冷凍する、ということになるところ、米国で最新の新型着床前診断であるqPCRは生体検査をデー5、デー6での胚盤胞で行ったとしても、数時間後に結果が判明し、受精卵を冷凍せずにフレッシュでの移植が可能であることをお伝えしました。
しかし、現実には、複数の受精卵があった場合、複数の受精卵の成長率が同一であるとは限りません。胚培養士が受精卵の成長を観察、管理しますが、各受精卵が生体検査(細胞を一つ採取)が適切である胚盤胞になるタイミングはさまざまです。そうなると、最適な受精卵の移植のための同時点での比較・判断ができないため、各受精卵の成長度合いに従って生体検査を行い、その都度の冷凍を余儀なくされます。つまり、一つのサイクル中で採卵され、受精卵になっても、採卵後5日目に適切な胚盤胞になり生体検査される受精卵と、6日目に検査されるためには最適である胚盤胞の受精卵がありえます。最も妊娠率が高いと見込まれる受精卵を移植したいのは当然ですが、成長のばらつきがあるため、一斉に同時期判断の比較ができません。最近の米国トップクリニックなどの動向を見ていると、着床前診断を希望する場合は、結局、冷凍されることが選択され、別サイクルで移植サイクル、と仕切り直して戻ってきた結果と照合し、最適な移植がされるようになっています。
もちろん、受精卵のフレッシュ移植を希望する患者様には、上記の一つ一つの受精卵の成長に合わせた生体検査をせずに、5日目生体検査と設定し、米国で最新の新型着床前診断であるqPCRで生体検査することによって、5日生体~6日移植を行うことは可能です。
しかし、受精卵が冷凍され、別サイクルで移植することは必ずしも悪いニュースではないと最近の臨床結果で分かってきました。フレッシュ受精卵は間違いなく冷凍受精卵より優れる、としてきた今までの伝統的な観念からの乖離(かいり)です。
次回はこのことについて詳しく説明いたします。(次回は8月第1週号に掲載)

sakura life profile Photo〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/

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