日本クラブWEBギャラリー企画展
明治以降、社会が劇的に変化した中で、日々の仕事に誠実に向き合った日本人の陶工たちの作品への思いは食器や美術品となって主に米国に向けて輸出された。そして、それらは「オールド・ノリタケ」と総称され、米国社会で受け継がれ、愛されてきた。
明治以降の日本の近代輸出磁器は、当初、裏印に国名がNipponと記されていたため、現在米国では“Nippon”と呼ばれ、美術品として珍重されている。“Nippon”は高い関税障壁を乗り越え、米国内で驚異的な販売実績を誇った。しかし、1920年頃から、原産地国名を、「“legible English”で標記せよ」との米国政府通達で、“Nippon”から“Japan”へとその表記を変えた。
その頃、それまでヨーロッパの芸術や流行を好み、尊んでいた米国市民は、自分たちが作り出したアメリカン・アール・デコの魅力に気づき、熱狂。日本の輸出磁器も、それまでの異国趣味から、アメリカン・アール・デコへと意匠を変えていく。
本展では、“Nippon”と呼ばれた前半と、アメリカン・アール・デコを中心とした後半に分けてその変遷をたどる。本展は、日本を代表する輸出陶磁器の研究家である井谷善恵博士(東京藝術大学特任教授)の監修により開催される。
「近代に生きた日本人の持つ技術と意匠の素晴らしさ、そして、オールド・ノリタケに反映された米国人の家族や隣人への愛を見つめ直し、その先に何があるのか探ることのできる展覧会になることを願っています」(主催者)
■概要
【主催】日本クラブ
【協賛】J.C.C. Fund(ニューヨーク日本商工会議所基金)
【後援】日本ポーセリン協会
【監修】井谷 善惠
【会期】2021年11月18日(木)-12月29日(水)
【場所】日本クラブWEBギャラリー
【詳細】〈Eメール〉gallery@nipponclub.org
〈ウェブ〉https://nippongallery.nipponclub.org/
■ バーチャル・オープニング・レセプション(先着500人まで)
参加費無料 (任意で医療従事者へのお弁当プロジェクトへ寄付)
レセプションでは、井谷善惠博士に、「近代日本輸出磁器の煌めき」と題した講演が行われる。また、エンターテインメントとして、邦楽演奏家の麻生花帆氏に、能や歌舞伎で使われている小鼓の楽器の話、お囃子の話などを通じて小鼓の魅力について話を伺う。
【日時】11月18日(木)午後7時〜8時
【申し込み】日本クラブウェブサイト(www.nipponclub.org)より申し込み
(または、https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_H1UKY4JnTUKXWYXvWXHS4A)
【問い合わせ】gallery@nipponclub.org
【講演者プロフィル】
井谷 善惠(いたに よしえ)
関西学院大学大学院文学研究科で美術工芸史を学び、修士取得後、夫の仕事の関係で渡英。SOASロンドン大学大学院で引き続き工芸(近代輸出工芸史)を研究し、2000年M.A.を取得、その後オックスフォード大学大学院オリエント研究所の博士課程に入学、06年哲学博士D.Phil取得後、帰国。東京藝術大学、金沢大学、多摩大学などで工芸史、日本美術史、異文化交流史などを教えながら執筆活動を行い、15年4月から東京藝術大学グローバルサポートセンター特任教授に就任し現在に至る。21年9月から帝京大学医療技術部放射線学科客員教授に就任。社会的活動として、日本ポーセリン協会会長、日本コーヒー文化学会副会長、一般社団法人国際交流代表理事、一般社団法人アジアテキスタイル文化研究所代表理事など。
主な著書(抜粋)
『オールドノリタケ-近代輸出磁器の煌めき』いなほ書房 2017年、『アガサ・クリスティ─とコーヒー』いなほ書房2018年、『藪明山の世界』いなほ書房 愛蔵版 2020年
【エンターテインメント参加者プロフィル】
麻生 花帆(あそう かほ)
邦楽演奏家、日本舞踊家、俳優。
東京藝術大学大学院博士課程修了。邦楽囃子の分野で初の博士号を取得。安宅賞を受賞。自分にしか出来ない作品をと音楽や舞を取り入れた一人芝居に挑戦するなど、自身の美意識に基づいた独自の表現を展開し、国内外で「和が奏でる魅力」を伝えている。囃子を藤舎呂船に師事し「藤舎花帆」の名で、日本舞踊を松本幸四郎に師事し「松本幸妃」の名で活動。東京藝術大学大学非常勤講師。