インタビュー 工藤夕貴

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アメリカに来て初めて人間として成長できた

「ガチ!」BOUT.215

 

工藤夕貴
「SAYURI」「ラッシュアワー3」などハリウッド映画に多数出演し、国際派女優として知られる工藤夕貴さん。工藤さんが出演する「この国の空」(現在日本で公開中)が、7月18日にニューヨークのジャパン・ソサエティー(JS)主催の日本映画祭「第9回JAPAN CUTS」でワールドプレミアとして上映された。主人公・里子(二階堂ふみ)の母親・蔦枝役を演じた工藤さんはニューヨークを訪れ、脚本も務めた荒井晴彦監督、森重晃プロデューサーとともに舞台あいさつと質疑応答に登壇。上映前に、お話を伺った。 (聞き手・高橋克明)

 

「この国の空」NYで上映

出演された「この国の空」がいよいよ今晩、北米初上映です。でも工藤さんの場合、出演作の北米プレミアに出席されることは、過去何度もありましたよね。

工藤 でも、日本の作品でアメリカ人に観ていただくのは、実は今回が初めてなんです。なので、アメリカの方がどんな反応されるのかすごく楽しみですね。

今回の作品、出演を決めた経緯を教えてください。

工藤 もう純粋に脚本が好きだったんです。頂いて読んだ際に、あー、これは久しぶりに面白い作品だなぁって。私の(演じる)キャラクターも普通のステレオタイプじゃないお母さんで。何か女性というものをしっかり持っていて、なおかつ面白い人で。作品全編に描かれている雰囲気も、きっといい映画になるんじゃないかなって思わせてくれるものを持っていたので、ぜひともって感じでやらせていただいたんですね。

戦中の明治の女性を演じました。演じるにあたって役へのアプローチはどのようにされたでしょう。

工藤 シーンの中で(演じる蔦枝の)気持ちが理解しづらいところがあって、(彼女は)矛盾したことも言うんですよ。娘の里子には「彼(市毛)に心を許しちゃいけない」って言いながら他の人には「ありがたい存在」みたいなことを言ったり。でも、今回は監督が脚本を書かれているので、聞けば答えはそこにあるというか、 その場ですぐに教えていただけるわけで、「こういう時代で彼女の周りには若い男性といえば彼くらいしかいなくて、恋を知らないまま死んでしまうのはなんて不憫(ふびん)だろうって思っている。擬似的にでも恋愛をさせてあげたい部分もある」って言われたんですね。あぁ、なるほどって思ったりして。そうやって確認して、納得しながら進めていきましたね。脚本家と監督が同じ方だと答えはそこにあるんですよね。やっぱり監督が納得してくれるものを私たちが演じるのが一番だと思いますし。

娘役の二階堂ふみさんとの共演はいかがでしたか。

工藤 楽しかったですね、すごく。彼女は若いのにいい意味でハングリー精神を持っている女優さんなので、すごく応援してあげたくなるものを持っていて。どこかで若い時の自分を重ねて見ている部分もあったり。もちろん彼女の方が当時の私より洗練されていて、大人で、逆に今振り返れば、あぁ、こういうところが自分には足りなかったんだなって、勉強になる部分もありました。(撮影)初日に、ふみちゃんが私に「(英語を)今勉強してるから、良かったら英語で話してくれませんか」って言ってきたので、それからは2人の会話はずっと英語で。二人でもんぺ着て、時代劇の格好なのに、ずーっと現場では英語だったんですよ(笑)。ちょっと不思議な感じでしたけど、でも英語って年齢差や男女差がない言語なので、おかげですごく早く、お互い近い存在になれました。日本語では築き得なかった関係性が作れたので、そういう点では英語が一役買ってくれたと思います。

日本映画に出演される際と、ハリウッドや海外の作品に出演される際と、お気持ちの中で違いはありますか。

工藤 あんまりないですねー。特にどこの国の映画だからって、そういう感覚で撮影に入ったことはないです、はい。もちろん現場の雰囲気は違うとは思います。アメリカは「この仕事はこの人」って細部にわたって決まっていて、(撮影カメラ用の)レールを敷く人はレールだけ敷く。日本ではレール敷く人がカメラもやったり、みんなで作業しますよね。日本は共同作業する国だと思います。違いと言えば、それくらいで、私自身の作品へ対する気持ちの違いというのは、何もないですね。

工藤さんは、今では珍しくなくなった「日本人ハリウッドスター」の先駆けだと思うんです。海外の作品に出演する役者の中ではパイオニア的存在で、今、振り返ってこれまでの経歴はご自身にはどう映るのでしょう。

工藤 アメリカに来られたから、自分は成長できたし、初めて一人の人間として生きるってことも学べたので、良かったなって思っています。そうじゃなかったら、いまだに半人前のままだったろうなって思うんです。12歳のころから学校も行かないで芸能界のお仕事だけしてきたので、たくさん知らないこともあったし、守られてきすぎたところもあったと思うんです。人生勉強ができてなかった分、こっちに来て、初めて誰にも助けてもらえない状況の中に自分を置くことができた。それで成長できたと思ってるので、日本にいたら絶対できないことだったと思います。

以前、テレビ番組で工藤さんが世界で一番好きな街はニューヨークと答えてらっしゃったのを観たことがあるのですが。

工藤 そうですね、あの…今考えると、ロサンゼルスよりニューヨークにいた方が私、良かったのかなって思う時が…(笑)。ロサンゼルスだと映画しかないんですよ。なかなか映画業界の方以外とのつながりが、広がらない…。周りにはどうしても業界の人ばかりになっちゃって。以前、普通のネイバーフッド(近所の人)を探して引っ越したんですけど、それでも、やっぱり、近所の奥さんが芸能人だったり。どこかに必ずエンターテインメントがある場所なので、なかなか普通の友達ができづらい。あとは車社会なので、人と触れ合うこと自体少なくなっちゃうんです。でもニューヨークって路上を歩いたり、地下鉄乗ったり、タクシー乗ったり、いっぱい人と触れ合うから。

街の性格は明らかに違いますよね。

工藤 あとはシアターとかも、もっとやりたかったなって思うんですね。女優としても、ニューヨークにいたら、もっといろんな面白いものを経験できたんじゃないかなって、ちょっと、思ったりする。(笑)

分かりました。工藤さんはNYが好きで、LAが嫌いってことで…。(笑)

工藤 いやいや、好きです、好きです(笑)。ロスはロスで解放感があって、絵に描いたようなアメリカって感じで、それはそれで好きですよ。

それでは最後の質問になりま…。

工藤 ホント、好きですよ! ロサンゼルス!(笑)

あ、はい。大丈夫です。ちゃんと書きます(笑)。今後の工藤さんの目標を教えてください。

工藤 日本人の音楽をもう少し海外の方に理解していただけるように、進化した音楽活動をしたいなってちょっと思ったりしてます。父が演歌歌手だったんですけど、今の演歌はもう演歌じゃなくなってきたりして、(ある時期から)ストップしてるんですよね。そこからずーっと進化してなくて。それをなんとか進化できる方法はないかなって。そうしたら外国の方が聴いてもすごくエキゾチックでステキな音楽に聴こえると思うんです。新しい日本の文化を新しい意味で紹介するのは音楽しかないかなと思ってますので。

最後に在ニューヨークの日本人にメッセージをいただけますでしょうか。

工藤 皆さん、さまざまな理由でニューヨークに住まれていると思うんですけど、やはりいい意味で日本人であることに誇りを持ってこの街で暮らしてもらいたいなって思います。日本人なのに、日本のことを悪く言ってる人を見た時、すごく悲しいなって思ったことがあって。アメリカ人もメキシコ人も、もうあらゆる国の人が自分の国を愛していて、すごくよく言うのに、どうして日本人だけ、日本のことを悪く言いがちなのかなって。なので、たくさん日本ファンのアメリカ人を作ってくださいって言いたいです。

 

★インタビューの舞台裏★ → ameblo.jp/matenrounikki/entry-12059778170.html

 

工藤夕貴(くどう ゆうき) 職業:女優
1971年東京生まれ。84年「逆噴射家族」でヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。91年「戦争と青春」で日本アカデミー賞の優秀主演女優賞をはじめ、女優賞を複数受賞。スコット・ヒックス監督の「ヒマラヤ杉に降る雪」(99年)、カマル・タブリージー監督の「風の絨毯」(2003年)、ロブ・マーシャル監督の「SAYURI」(05年)、ブレット・ラトナー監督の「ラッシュアワー3」(07年)、ジム・ジャームッシュ監督の「リミッツ・オブ・コントロール」(09年)の他、「L change the World」(08年)、「座頭市 THE LAST」(10年)など国内外の作品に出演。カナダ人俳優ガブリエル・アルカンとともに主演したクロード・ガニオン監督「カラカラ」(12年)は、12年モントリオール世界映画祭で「世界に開かれた視点賞」と「観客賞(カナダ長編部門)」を受賞した。

 

作品紹介

「この国の空」This Country’s Sky

「この国の空」This Country's Sky

芥川賞作家・高井有一による原作は1983年に出版され谷崎潤一郎賞を受賞している。監督は「さよなら歌舞伎町」「海を感じる時」「共喰い」などの脚本を手掛けたベテラン脚本家・荒井晴彦。1945年、終戦間近の東京。19歳の里子(二階堂ふみ)は、日に日に悪化する戦況を感じながら毎日を過ごしていた。度重なる空襲、明日も分からない極限状態の中、このまま結婚も望めそうになく自分は死んでいくのだろうか、という不安にさいなまれていく里子は、傍にいた妻子ある男である市毛(長谷川博己)との恋に突き進んでいく。
2015年―130分―DCP―監督・荒井晴彦 出演・二階堂ふみ、長谷川博己、工藤夕貴、富田靖子、利重剛、上田耕一、石橋蓮司、奥田瑛二ほか

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2015年8月22日号掲載)

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