ベン・バーンズ

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16歳のカスピアン王子の弱さと強さ表現


素晴らしい作品に主演できて光栄

「ガチ!」BOUT.19

BEN BARNES

2005年、全世界で1億部の売り上げを記録した小説「ナルニア国物語」の第1章をディズニーが映画化。アカデミー賞3部門にノミネートされ、6億3780万ドル(約730億円)を売り上げるメガヒットとなった。あれから3年、第2章が16日、全米公開された。ストーリーのキーとなる〝カスピアン王子〟役に抜擢され、本格的にハリウッドデビューを果たした俳優、ベン・バーンズに話を聞いた。
(聞き手・高橋克明)

 

ナルニア国物語/第2章:主役に抜擢 

本作に出演することが決まった時の気持ちを聞かせてください。

ベン 午前4時に自宅に電話がかかってきて、カスピアン役に決まったことを伝えられたんだ。こんなに大きな作品に出られるとわかって興奮したよ。原作は小さい時に読んでいた作品だったからね。本当に嬉しかったよ。

本作には、ネズミやスカンクなどのCGキャラクターが沢山出てきます。撮影では目に見えない相手と演技をしなくてはいけなかったと思いますが、舞台出身のあなたにとって、やりづらかったのでは?

ベン 初めは戸惑ったよ。だけど、シーンの説明を受けて、セリフを覚えているうちに、いないはずのナルニアン達の存在を感じるようになって、不思議と演技に没頭できたんだよね。僕は昨日の試写会で初めて彼らが一緒に写っている映像を見て驚いたんだよ(笑)。

試写会では楽しめましたか。

ベン 全然(笑)。撮影したのが随分前だったし、このシーンはどこで撮影したっけ…とか、どういう風に演じたんだっけ…なんて思いながら見たから、全然リラックスして見れなかったんだ。また、今度落ち着いて見ないとね。

本作の出演が決まった時、長年ロンドンで出演していた舞台「ヒストリー・ボーイ」を降板することになりました。

ベン とてもとても難しい決断だった。もしかしたら人生の中で一番ツラい選択だったかもしれないね。6年以上も立っていた舞台だったし、素晴らしい作品に出演していることを誇りに思っていたから、映画への出演が決まった時は嬉しい気持ちと、ツラい気持ちが混同していて、とても複雑だったよ。

カスピアン王子を演じるにあたり気をつけたことは?

ベン カスピアンは、自分の父親が叔父に殺されたことを知って逆上し、復讐しようとする。だけど、自分勝手な行動で、仲間を死なせてしまうことになる。その後悔から、仲間を守り、戦い抜く強さを得るんだ。16歳のカスピアンにはとても大きな責任感だよね。でも、弱い自分や失敗した過去を受け入れ、成長して行く過程が僕は好きだな。映画を見てくれる人にもその成長ぶりが伝わればいいけど。

ペンシー兄妹の長女、スーザンとのキスシーンはどうでした?

ベン 実はちょっと心配だったんだ(笑)。原作にはないシーンだったからね。ナルニア国から1300年も遠ざかっていたスーザンはカスピアンとの別れの時“もう会うことないし…”とキスをする。でも、その別れと共に、カスピアンは一国の王として生きて行く決意を固めるんだ。ただの男から王になる大事なシーンだと僕は理解したよ。

26歳のあなたが、10歳も若い年の役を演じました。

ベン もちろん、若く見えるような役作りをしたよ(笑)心もカラダも未熟な16歳のカスピアンでなければこのストーリーは成り立たない。だから、撮影中も原作を何度も読んで役作りに挑んだんだ。

撮影中の失敗談は?

ベン 装着するのに1時間以上もかかる衣装を付けた後に、初めてピーター役のウィリアムと会ったんだ。彼がふざけて僕にオレンジジュースをかけようとしたら、本当にかかってしまって、また1時間以上かけて2人して衣装を着替え直した事があったよ。あれは恥ずかしかったね(笑)

第1章から出演しているペンシー兄妹4人との共演はいかがでしたか?

ベン ほとんどのスタッフと出演者達は第1章と同じだったから、とてもいい雰囲気の現場が既に出来ていたね。彼らは本当の兄弟のように仲が良く、常に一緒にいたよ。年の近いウィリアムとは一緒にスポーツをしたり、決闘シーンのための体力作りを一緒にしたな。

剣を使った決闘シーンや、馬に乗るシーンが沢山ありました。

ベン すべてが初めての経験だったよ。乗馬は実際に自分で乗るシーンもたくさんあったから撮影に入る1カ月前から猛特訓を受けたんだ。殺陣のシーンは、素晴らしい殺陣師の人に、ダンスを覚えるように振りつけてもらってね。不思議と自分のカラダに動きが入っていったんだ。大変だったけど、素晴らしい経験だったよ。

2010年に公開予定の第3章への出演も決定されました。

ベン 撮影は今年の11月から入る予定なんだ。だから、さらに成長する時間があるってわけさ。王を演じる前にね。

(すべての写真はPhoto Credit: Murray Close)

ベン・バーンズ 職業:俳優

1981年8月20日、イギリス生まれ。キングストン大学で演劇を学ぶ。イギリスでの舞台経験は豊富で、ナショナル・ユース・ミュージック・シアターに参加し、15歳で舞台デビュー。その後も数々の舞台に出演。そして、ロンドンのウエストエンドにあるウィンダムズ・シアターで上演され賞に輝いたアラン・ベネットの「ザ・ヒストリー・ボーイ」で絶賛を浴び、「ナルニア国物語第2章」のキャスティング・ディレクターの目に留まる。

■作品紹介「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛 The Chronicles of Narnia: Prince Caspian」 全世界で社会現象を巻き起こした「ナルニア国物語/第1章」のスタッフとキャストが再結集して贈る本作は、構想、スケール、ドラマ性において前作を遥かに凌いでいる。

l to r: SKANDAR KEYNES, WILLIAM MOSELEY, BEN BARNES, ANNA POPPLEWELL, PETER DINKLAGE

〈あらすじ〉ペベンシー兄妹の治めた黄金時代から1300年の歳月が流れたナルニア国。かつて全能なる王アスランに祝福され、生きとし生けるもの全てが幸福に包まれていた魔法の国は、戦闘民族テルマール人に征服され、もはや存在しない。人間たちに迫害され生き残ったナルニアの民は森に逃れ、この暗黒の世界に再び光をもたらす者の出現を待ち続けていた。一方、テルマールの王宮では、亡き王の弟ミラースが、正統な王位継承者カスピアンの暗殺を企てる。“伝説の四人の王”を呼び戻すと言われる魔法の角笛だけを手に城から逃亡した王子は、森の奥深くで、ナルニアの民と出会う…。

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2008年5月18日号掲載)

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