デジタル版「ガチ!」第2回のゲストは俳優の加藤雅也さんです。
モデルとしてパリコレにも出演、その後、俳優デビューを果たした加藤さん。二枚目俳優として、テレビ、映画に多数出演して人気絶頂の1995年、単身渡米してハリウッド俳優にも挑戦し、約7年間、アメリカをベースに活動しました。そんな加藤さんだから語る本当の意味でのボーダーレス、そして、コロナ禍における世界で通用する日本人とは、この時代だからこそ聞きたいお話を聞きました。3回にわたってお届けします。
BOUT. 301
俳優 加藤雅也
アフターコロナこそ〝日本人〟であることが武器に
高橋 俳優になられる前は、モデルをやられてらっしゃいました。
加藤 元々モデルをやるつもりもなく、普通に就職してって、考えてたんですけど。学生時代に「なりませんか」っていう話になって。全く知らない世界だし、「あぁ、こんな世界があるんだ」って。その世界に入って学んだことは非常にいっぱいあったんですよね。
高橋 それって、今につながってますよね。
加藤 そうですね。パリコレまで行ったんですけど、当時のパリコレのモデルっていうのは本当にギリシャ彫刻みたいな人たちだったんですよ。背が186、187、188(センチ)ぐらいあって。(彼らと比べると)僕は小さいわけですよ。そうすると、物理的に服が着られないわけです。モデルとして致命的ですよね。あぁ、これじゃあ一生の仕事にできないんじゃないかって思ったわけですよ。
高橋 実力とは違うところで。
加藤 そうですね。で、これは何か新しい世界を考えなきゃいけないと思った時に、モデルという仕事と割とリンクしている芸能の俳優という仕事が浮かんだわけで。日本でファッションモデルをやったって、世界に出たらどんだけすごい人がいるかって、やっぱり上を見れば見るほど自分なんて、ある一部でしかないわけで、なんにもならないんですよ。
高橋 その頃から世界に無意識でも目が向いていらっしゃった。
加藤 モデルをやるまではそんなふうに世界なんて、あんまり見てない。モデルという仕事をやることによって、すごく認識したんですよね。「あぁそうか、世界っていうのはあるんだ、そこに」っていう。それはモデルをやってすごく良かったことですよね。
高橋 なるほど。
加藤 やっぱり目標は遠くに持っていっていいんですよ。だけど、その手前に落ちても、まあそれも人生だし、それは悪いことでもない。グローバルスタンダードで物事を考えるべきだろうなってのは、その辺から思いましたよね。
高橋 加藤さんは30歳(1990年代前半)にハリウッドに挑戦されましたが、
加藤 行かないと、日本人が壁を突破していくことができない時代だったんですよ。今だったら行かないでしょ。だってこっち(日本)に来るんだもん。オーディションが。
高橋 (ハリウッドから)お声掛けされた時はやっぱりうれしかったですか。
加藤 もちろん「これがチャンスなのかな」とは思いましたよね。僕の中でいろんな経験値になったっていうのは事実です。ハリウッドに行って一番最初に言われた言葉が、「とにかくサバイバルして生き延びることなんだ」と。アカデミー賞取っても仕事がない俳優さんはいっぱいいる。取ってないけど俄然トップでいる人もいっぱいいる、と。だからサバイバルをしていかなきゃいけないっていうことを教えられました。みんな「I don’t care whatever you’ve done ten years ago.(この10年間何をやってきたかなんてどうでもいい)」みたいな感じなんですよ。
高橋 なるほど。
加藤 「だから何?」って。「What’s next ?」。要するに過去に何をやったかなんてどうでもいい、と。次、あなた何するの?っていうことに興味がある。どんなにルックスが良くてもそんなのは関係ない。私が信じるものは、「What you see is what you get.」とかって言われたわけですよ。要するに、フィルムを見て、この演技を見て、いいと思ったら採用する。見た物しか信用しない。そのためには、とにかくどんどんどんどん、自分が前に出て、それがたとえどんなに小さな作品であれ、「素晴らしかった」ならば、仕事になる、と教えてもらいましたよね。
高橋 日本人としてハリウッドに挑戦するのは、並大抵ではないと想像します。
加藤 英語をしゃべれればハリウッド映画に出られる、わけでは決してなくて。「日本人とはなんぞや」とか「日本人らしさとはなんぞや」っていうものを主張しないと特徴がなくなるかもしれないですよね。
高橋 常に時代を見ていかなきゃいけない中で、今回のコロナっていうのは言ってみれば近代一番大きな変化だと思います。
加藤 僕らの演劇界、舞台の世界でも、もちろん最悪の状況だけれど、この中で生き延びる術を考えていけば、今後の新しいショービジネスの形になるだろうなとは思います。嘆いててもしょうがない。嘆くよりも新しい事をどうやればできるのかっていうのを考えていく、良いキッカケになったんだろうな、と思うし。…僕は日本映画も、もっと日本映画らしいものを作っていいんじゃないのって思います。
高橋 これから若い子たちで世界に出ようとする人たちに何かメッセージお願いします。
加藤 日本のものを勉強してから行くと、「急がば回れ」になるかもしれないけど、すごい役に立つと思います。たとえば、デザイナーになりたい人は着物を勉強してから行く。だって他の国の人に着物は作れないんだもの。例えば平安時代のころの色をベースにしたりすると、世界は「おっ!」って思うはずです。彼らにはない発想なんだから。
高橋 読者にメッセージをいただけますか。
加藤 海外に住めば住むほど日本の文化を勉強したらそれが自分たちにとってアドバンテージになります。どんどん勉強してください。あとは、どこに住んでようが、やっぱりグローバルなニュースに目を向ける、ということですね。世界の流れを読み取るっていうことですよね。そして、海外に暮らす、日本人同士、助け合いましょう。俺は外国人と一緒に仕事してるから偉い、みたいなことではなく、日本人同士まず助けるっていうこと。困った時、最後はやっぱり日本人同士だなって思う時、あると思いますよ。
加藤雅也(かとう・まさや) 職業:俳優
1963年生まれ。奈良県出身。大学3年の時にスカウトされモデルデビュー。ファッションモデルとして多数のファッション誌、東京コレクション、パリコレクションを経験し、88年に主演映画「マリリンに逢いたい」で俳優デビュー、以来、国内外を問わず、映画やドラマ、舞台に至るまで幅広く活動する。95年にLAに拠点を移して英語での演技、メソッド演技の勉強し、98年の「GODZILLA」でハリウッド映画初出演。北野武監督「BROTHER」(2001年)、三池崇史監督「荒ぶる魂たち」(02年)などで海外からの評価も得る。近年では、20年公開の『彼女は夢で踊る』はスペインのマドリード国際映画祭で審査員賞。『決着』はロサンゼルスの映画祭「Japan Connects Hollywood」でスポットライト賞、最優秀俳優賞を受賞。今年4月より放送予定のWOWOW「華麗なる一族」に出演する。
■出演作品紹介
WOWOW開局30周年記念ドラマ 「華麗なる一族」
政財界をまたぎ、富と権力をめぐる人間の野望と愛憎を描いた山崎豊子の傑作小説をドラマ化。WOWOW開局30周年を記念し、不朽の名作がよみがえる! 4月18日(日)放送・配信スタート。
大阪万博を間近に控えた日本の高度経済成長期、富と権力獲得の手段として、関西の政財界で閨閥(けいばつ)を張り巡らす阪神銀行の頭取・万俵大介(中井貴一)を中心に、一族の繁栄と崩壊が描かれる。加藤さん演じる一之瀬は、阪神特殊製鋼の工場長。先代の敬介の代から会社の発展に努め、若くして専務となった鉄平(藤ヶ谷太輔)をいつも温かく見守り続け、鉄平もまた一之瀬に信頼を寄せている。鉄平と同じく高炉建設を常々夢に思っていた。四々彦(工藤阿須加)の父。一之瀬親子は、万俵家では片鱗も見出せない、温かい血の通った父子である。
■放送日:2021年4月18日(日)放送・配信スタート
■公式サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/ichizoku/
(『ニューヨーク Biz!』2021年2月20日号掲載)
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〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、1000人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。