どんなサイズの映画でも役作りのプロセスは変わらない
新作PRでNYに 「ガチ!」BOUT.136
1993年に映画デビューしたイギリス人俳優、ユアン・マクレガー。ロンドン映画祭、MTV映画祭、欧州映画祭、ゴールデングローブ賞など、米国のみならず世界各国でも数々の映画祭で受賞、ノミネート経験を持つ。毎年コンスタントに2〜3本の作品に出演し、確実なキャリアを築いているユアンに、最新作やゴールデングローブ賞ノミネートなど、役者人生について話を伺った。(聞き手・高橋克明)
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昨日、発表になったゴールデングローブ賞のノミネート、おめでとうございます。
ユアン ありがとう! ここ最近、新作(「インポッシブル」)のPRばかりしてたから、前々作でのノミネートを昨日の朝9時にいきなり電話で知らされたのはビックリだったよ。(笑)
ノミネート作(「砂漠でサーモン・フィッシング」:2012年公開)の出演を決めた理由を教えてください。
ユアン まず、砂漠にサケの放出をする、っていう突拍子もないストーリーにひかれたんだ。もちろん共演陣も素晴らしいメンバーだったしね。それに僕の演じた主人公の水産学者のアルフレッドは今まで演じたことのないタイプだった。「彼」の話し方、考え方をより深く知るために(「スラムドッグ$ミリオネア」を手掛けた)脚本家のサイモン(・ビューフォイ)と何度も話し合ったよ。
いつもそのように役作りをされるんですか。
ユアン そうとは限らない。作品によるんだ。どの作品であれ、無意識のうちに僕が「彼」になり、「彼」が僕になったとしたら、その時が成功なんだと思う。役になりきったといえるのだと思う。その役が自分のものになったという瞬間が来るんだ。その間は僕が僕じゃなくなるってことでもあるんだけれど。
うーん、とてもハードな仕事に聞こえます。(笑)
ユアン イエス! ハードだよ(笑)。特に撮影が始まる3週間くらい前になると、ナーバスになるね。例えば、僕はイギリス人だから、アメリカ人を演じる時は「おい! 僕のアメリカ人は大丈夫か?」って鏡に向かって自問自答したり(笑)。だから「慣れる」ってことはあり得ない。毎回、違う人物を演じるわけだからね。
大作からインディペンデント、アクションからドラマまでさまざまなタイプの作品に出演されてきました。それぞれに違ったアングルからの演じ方を求められると思うのですが。
ユアン あんまり違いは感じられないんだ。どれも同じだと思う。まず観ている人にとって、その役が“ビリーバブル”であることが必要になってくる。大掛かりな予算の映画でも、小さなサイズの映画でも役作り自体は変わらない。多分、テレビでも舞台でも同じだと思うよ。「ムーラン・ルージュ」(2001年)のようなミュージカル映画は「I LOVE YOU」って一言のセリフを言うのに長い尺で歌わなきゃいけない(笑)。「アイランド」(05年)のようなアクション大作だと肉体的にとても厳しい思いをするし、「天使と悪魔」(09年)のようにクルーの数も膨大だと、何をするにしても待ち時間に耐えなきゃいけない(笑)。それぞれによってハードな部分は違うけど、その役になりきるってことはほぼ一緒のプロセスなんだ。
今度の新作「インポッシブル」は04年のスマトラ沖地震による津波被害にあった白人一家の実話を基にしたドラマです。作品に取り組む上で一番注意した点はなんでしょう。
ユアン まず、出演自体をどうするか迷ったよ。とても責任を感じる役だからね。でも、脚本を読むと、そこには懸命に生きようとする家族の姿があったんだ。彼らを演じたい。彼らの姿を伝えたいっていつの間にか思っていた。そして、何より僕の俳優人生においてチャレンジだったのが、実生活では(4人の)父親だけど、作品の中で父親役は初めてだということ。父親として子供に対する感情は分かっているけれど、演じるとなると、どういう自分になるのか興味深かった。共演した子供たちは、それぞれ個性が違って、それでいて僕との呼吸がピッタリ合っていた。彼らと一つの作品を作り上げていくのは素晴らしい経験だったよ。
最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
ユアン 実は日本にはまだ行ったことがないんだ。ぜひ、行きたいと思ってるよ。とてもビューティフルな国だと聞いてるし、本当に、本当に、本当に、行きたいと思ってるんだよ。(笑)
ユアン・マクレガー 職業:俳優
1971年3月31日生まれ。英国スコットランド出身。幼いころから演技に目覚め、学校卒業後、16歳で初舞台を踏む。以後ギルドホール音楽演劇学校で3年間演技を学び、92年にテレビドラマ、93年に「Being Human」で映画デビューを飾る。95年のダニー・ボイル監督作「シャロウ・グレイブ」で注目を浴び、翌年、同監督の「トレインスポッティング」で世界的にブレークする。以降、ハリウッドにも進出。99年には「スター・ウォーズ」新3部作で若き日のオビ=ワン・ケノービ役に大抜擢、2005年の完結編まで見事に演じきった。その他の代表作に「ムーラン・ルージュ」(01)、「ビッグ・フィッシュ」(03)がある。12年はカンヌ国際映画祭の審査員も務めるなど、監督、俳優として高く評価されている。
〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。
(2013年1月1日号掲載)