本田 健 感謝をしている人は、お金も、チャンスも、人間関係も引き寄せる

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本田 健

BOUT. 287
作家 本田 健に聞く

初の英語の書下ろし著書を出版

投資家で経営コンサルタントとしてのバックグラウンドを持つベストセラー作家、本田健さんの自身初となる英語の書き下ろし著書「happy money/The Japanese Art of Making Peace with Your Money」が、Gallery Books出版から6月4日に発売された。お金についてのこれまでの考え方がガラッと変わるような豊富なエピソードとテクニックが詰まった同書は、今後、世界20カ国以上で発売される。本書について本田さんにお話を伺った。 (聞き手・高橋克明)

 

初の英語の書下ろし著書『happy money』

初の英語の書下ろし著書『happy money』

 

今回、初の英語版出版が決定されました。世界での出版は以前から考えられていたことなのでしょうか。

本田 もともと自己啓発の本が好きで、作家をやり始めたので、いつか英語で書いて日本人以外の世界の人にも読んでもらいたいという夢は持っていましたね。

ただ、日本の著者が、英語で執筆して、アメリカのエージェントと契約して、メジャー出版社から本を出すということは…。

本田 普通はありえないですね(笑)。日本でヒットした作品が翻訳されてアメリカで出版というのは稀にあるかもしれませんが、個人で単身ニューヨークに乗り込んで、ゼロからっていうのは、聞いたことはないですね。

本田さんはすでに日本で700万冊を売った実績があります。すでにある、今までのベストセラー著作を英語翻訳にして発売、ということは考えなかったですか。

本田 その方法もありますが、僕が考えるグローバルオーディエンスと日本人読者は、やはり少し違います。日本で売れた本だからといって、そのまま翻訳してアメリカで受け入れられるかというと、そうではありません。そこはちゃんとリサーチして、彼らの心の琴線に響くように考える必要があると思うんですね。

なるほど。最初からグローバルを意識した上で書き下ろした、と。

本田 はい、その通りです。僕はこの本を書く際に、インド人、南アフリカ人、チュニジア人、フランス人、ドイツ人、オランダ人、中国人などさまざまな国籍、年齢の人たちに聞き取り調査をしました。

日本人に限定するわけではなく、日本人も含む世界中の「人間」にフォーカスを絞ったわけですね。

本田 そうです。今回、全人類共通のテーマを書くにあたりどんなテーマがいいか考えました。そして全ての人に共通したテーマは「お金」だということに気づきました。例えば、20代、30代はあまり「健康」というテーマに興味がある人は少ないと思います。一方で、「セクシャリティー」だと逆に20代、30代は興味あるけれど、50代以降になると、どうでもいいやという人も出てきます。60代でセックスのことばかり考えている人はそう多くないでしょう。「スピリチュアル」に興味がある人もいる一方で、全く興味がない人もいます。そう考えると、全ての世代の人たちがみんな困っていて、みんな知りたいと思っているテーマは「お金」だと思いました。

なるほど。世代や人種を選ばない、最も興味があって、最も知りたいと思う対象なわけですね。

本田 そして、お金は人の一生を大きく支配してしまうものでもあります。極端にいうと「健康」がなくても「セックス」がなくても、人はなんとか生きていける。でも、お金が全くなければ、明日から食べていくことができません。

つまりは生きていけない。

本田 その通りなんです。でも、「お金」って何?と聞かれても、答えられる人は少ないと思います。

例えば…銀行の通帳の数字、とか。あるいは、実物の紙幣とか、コインとか…。

本田 でも、最近ではスマホでも、支払えますよね。結局、みんなちゃんとした回答ができないぐらい不思議な存在なんですね。

世界共通の最も知りたいテーマにかかわらず、説明ができないもの、だと。

本田 多くの人たちは、お金は使うと減ると思ってるので、なるべく使わないようにしようと思っています。でも使わないようにしたとしても、やっぱり友達とはごはんを食べに行きたい。そして欲しい服も、車も、iPhoneもある。やっぱり生活していくのに最低限のお金は必要です。お金は欲しい。けれども、怖い。つまり、お金に関してはいつも「Love & Hate」の関係なので、ほとんどの人はどうお金と付き合ったらいいのかわからないのです。

かなり複雑で得体が知れないもののように思えてきました。(笑)

本田 それをこの本で解き明かしています。「happy money」というタイトルをつけたのは、「アンハッピーマネーの中で生きてないですか?」という問い掛けでもあります。お金をもらった時にイライラしたり、使う時もドキドキしたり、罪悪感を感じたり、お金と幸せな関係を持てていない状態から脱却しようというメッセージを込めています。そのためには、まず「お金」に感謝することが大切です。

お金に感謝する、という感覚は、アメリカ人には新鮮に映るかもしれないですね。

本田 そんなにお金がなくても幸せに暮らしている人もこの世にはいます。その人たちは、お金をもらった時に「ありがとう」と感謝の気持ちで受け取り、そして、気持ちよくお金を使っています。こういう人がいちばん世界で幸せだと思います。僕の知り合いのお金持ちの人に「何歳くらいからお金持ちになった感じがしましたか?」と聞くと、みんな「最初に1億(円)稼いだ時」とか、「会社が上場した時」などとは答えません。そして、ほとんどの人たちが、「まだ金持ちじゃない」と言います。「でもファーストクラスに乗ってるじゃないですか」と言うと「でも、まだプライベートジェットを持っていない」と答えるのです。

あははは。なるほど。

本田 プライベートジェットを持っている人に聞くと、今度は「でも、国内専用の小さいのだから、もっと大きいのは欲しい」と答えます。

天井はないですね。

本田 その通りです。つまり、豊かさと、どれだけお金を持っているかは関係ないということです。今、必要なものはすでに持っていると思う心があるか、ないか。今の自分の経済状態でもすでに豊かなんだと「感じられる」ことが大切なんですね。

それが、今の状況に感謝することにもつながるわけですね。

本田 感謝してる人というのはチャンスも、お金も、そして人間関係をも引き寄せるようになっています。これは人間関係の心理なのです。これは原始時代からそうですが、人間は一人で生きていけないからこそ、誰かに親切にすること、誰かと共存していくことが唯一、生きていける道だとDNAに刻まれてるんですよね。だから誰かに親切にする、誰かに親切にされたらそれを必ずそれを返す、というのが生存のために絶対必要な行為だったわけです。

人間の本能レベルで、感謝の心を持つ方が得、ですね。

本田 つまり、お金が入ってきた時にありがとう。お金が出ていく時もありがとう。まずはこのサイクルが大切です。もし自分がクリーニング屋さんだったら、お客さんは隣のクリーニング屋さんでも良かったわけじゃないですか。でもわざわざ自分のところを選んで来てくれる。それは、何か気に入ってくれたことがあったからといえるのでは。そのことに対して、本当に「ありがたいな」と心から思えるようになる。そして、お客さんを喜ばせようと一生懸命に仕事をする。

すると、またお客さんはまた持ってきてくれる、と。

本田 それは人間の本能に刻み込まれた習性なんですね。もちろんアメリカ人にとってもこれは同じです。なので、僕はアメリカで「ARIGATO」という言葉をはやらそうと思っています(笑)。「Thank you」というところを「ARIGATO」と言ったら何か、オシャレな感じがしませんか? フランス語の「Merci」みたいなイメージです。今、アメリカ(のメディア)でいっぱいインタビューをうけているのですが、「ARIGATO in 、ARIGATO out」と必ず言うようにしています。” When money comes in, ARIGATO. When money leaves, also, ARIGATO. ARIGATO in, ARIGATO out “と言ったら、多くの人が理解してくれます。

なるほど。それでは最後に、本田さんの当面のゴールを教えてください。

本田 まずは「ありがとう」という言葉を世界中の人に知ってもらいたいと思っています。世界中の人が「ARIGATO」というコンセプトを学んでいくことを想像するだけでワクワクします。僕が日本の文化でいちばん素晴らしいと思うのは「ありがとう」という心配りなんです。何かちょっとしたことにも、「ありがとう」ってお互い言い合える文化っていうのは、世界を見ても日本がいちばん多いと思うんですよ。サービスした方もありがとう、される方もありがとう、と言う、このお互いに対しての尊敬し合う関係こそが、僕は日本文化でいちばん素晴らしいところだと思っています。なのでそれをぜひ、この本『happy money』で伝えたいと思いますね。

 

本田 健

 

本田 健(ほんだ・けん) 職業:作家
神戸生まれ。経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイア生活に入る。4年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」「ライフワーク」「ワクワクする生き方」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。そのユーモアあふれるセミナーには、世界中から受講生が駆け付けている。著書は『ユダヤ人大富豪の教え』『20代にしておきたい17のこと』(共に大和書房)『きっと、よくなる!』(サンマーク出版)など130冊以上。累計発行部数は700万部を記録している。公式サイト:kenhonda.com(英語)、www.aiueoffice.com(日本語)

(2019年6月22日号掲載)

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〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

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