【独占インタビュー】堀口恭司 夢を与える存在になりたい

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BOUT. 306

格闘家 堀口恭司に聞く

CT州での「Bellator MMA」バンタム級タイトルマッチ

 

メイン試合直前、巨大スクリーンにあおりVTRが流され始まると、会場のボルテージは一気に最高潮に

メイン試合直前、巨大スクリーンにあおりVTRが流され始まると、会場のボルテージは一気に最高潮に

2021年12月初旬、コネチカット州のモヒガンサンで開催された総合格闘技イベント「Bellator MMA/ベラトール」でのバンタム級タイトルマッチ。“日本が誇る最高傑作”格闘家の堀口恭司選手が逆転KO負けを喫してしまい、格闘技界に衝撃が走りました。試合からちょうど2週間後、再起を誓う堀口選手にお時間を頂きました。
(聞き手・高橋克明)

現在の体調はいかがでしょうか。

堀口 自分的には何の問題もないんですけど、KOされたんで、1カ月ぐらいの練習ができないですよね。医者からは、普通のランニングも、するなって。それ以外は暇だなってくらいです。(笑)

試合からちょうど2週間が経過しました。今振り返って改めて試合後の感想は。

堀口 負けは負けで、しっかりと認めているんで、悔しいのは悔しいですけど、また来年トーナメントがあるので、そこで借りを返したいな、と。そこで借りを返すことによって、もっともっと格闘技を盛り上げると思うんですよね。

試合自体は完全に堀口選手がコントロールされていました。

堀口 そうですね、終始ペースをコントロールしてたなっていうのはありましたけど、やっぱり格闘技なので、一発入れば、ああやって終わっちゃう世界なので。もう、ちょっと勝ちに徹したほうが良かったかなとは思いましたね。やっぱり会場の雰囲気がメインイベントだし、ちょっと盛り上げようかなっていうのもあって。

アメリカの会場だと、少しのグラウンドの膠着状態でブーイングが入ります。あのまま行けば完全に勝てたのに、会場の空気で、打ち合いにいくのも堀口さんらしいというか。

堀口 打ち合いでも勝てるって思ったので、それがミスでしたよね。でも、技術面では自分も通用するんだなっていうのは思いました。これからちょっと、逆に楽しみになったなと。

これまで日本人選手が、アメリカのメジャーMMA団体に挑戦する際は、通用するかしないかという論点でした。こと堀口選手に限っては、ベラトールであれタイトルマッチであれ、「勝つこと」が期待されます。そのあたりがプレッシャーになることはありますか。

堀口 あまり、そのあたりは考えてないんですよね。周りの声も気にならないし、やってる対人間同士なので、別に日本人だからどうのこうのとか、そういうプレッシャーとかも全くないです。

衝撃的なラストで会場は沸いたのですが、堀口選手がKOされて立てない時間が長引いた際、会場はその後、静まりかえりました。意識が戻ったのはどのあたりからですか。

堀口 意識戻ったのは、病院に運ばれた後ですね。なので、全然覚えていないです。

担架で運ばれて退場する際、観客に向けて左手を高々と上げて歓声に応えてらっしゃったんですが…。

堀口 それは全く記憶にないです。はい。(笑)

…無意識の中でも「また(このリングに)戻ってくる」と…鳥肌が立ちます。

堀口 いやいや、結局、負けてしまったので。プロの世界で勝ちが全てで、それを落としてしまったわけですから。

「ベラトール272」の世界バンタム級タイトルマッチでセルジオ・ペティス選手と接戦を繰り広げる堀口恭二選手(右)=2021年12月3日

「ベラトール272」の世界バンタム級タイトルマッチでセルジオ・ペティス選手と接戦を繰り広げる堀口恭二選手(右)=2021年12月3日

それでも翌日のツイッターのトレンドで堀口選手の名前が1位になったり、確実に格闘技熱は再発したと思います。

堀口 格闘技(界に)また火がついてきたっていうのはうれしいですけど、やっぱり、勝ちに徹した方が良かったんじゃないかなとかも思ったりしますね。過ぎたことはもう過ぎたことなんで、次のグランプリ取れば、もっと大きい起爆剤になるんじゃないかなと。だから今はそこをしっかりと目指してますね。

ただ今回、頭部へのダメージが残っているのではないかとも思われます。堀口選手は「日本格闘技界の宝」とも言われてるので、少し休まれていいのではないかという声もありますが。

堀口 前から思ってたんですけど、「日本の宝」とか言われても、多分、自分はそういうのじゃないんですよね。道を切り開いてる人がいないと、後に続く人も出てこないと思うんですよ。自分が(故・山本)KIDさんから夢をもらったように、自分も子供たちとか、未来に向けて、夢を持たせたいんですよ。日本人だからできないとか、日本人は弱いっていうのを払拭したいんですよ。

言葉は悪いかもですが、未来の子供たちや格闘技界のためには「捨て石」になってもいい、くらいな気持ちだ、と。

堀口 そういう感じですよね、自分は。根本的に、考え方として、自分は日本の宝だなんて思ってないです。道を切り開くためには、犠牲になる人も必要で、自分はどっちかっていうとそっちな気がしますね。もちろん目指すところは、しっかりと(チャンピオン)ベルト巻くことですけど、正直言って、ベルト取って終わりっていうんじゃ夢を与えられないっていうか。夢を与える存在になりたい。自分がKIDさんにもらった夢を、今の日本の子供たちだったり、夢がない子たちに、今度は与えたいなって思いますね。

堀口選手にとって、KIDさんの存在はすごく大きいですね。

堀口 今の自分があるのは、KIDさんのおかげなので。やっぱり、受け継いでいくものじゃないですか夢って。自分だけ良ければいいっていう人たちが結構多いと思うんですけど、そういうのをカッコいいなって自分で思わないですよね。何かを犠牲にしてでも、道を切り開いている人がカッコいいなって自分は思ってるんですよ。そういう自分の憧れの人物像になりたいって、そういう感じですかね。

シビれます、本当に。

堀口 いや、全然(笑)。頭おかしいんで、自分。この間のKOでも殴られてますし。(笑)

KOの前から一貫しておっしゃっています(笑)。ずっと以前から、メインであれ、タイトルマッチであれ、相手が誰であれ、子供たちに夢を与えるために、応援してくれるみんなのために、と言い続けてました。

堀口 そうですね。やっぱり夢ってすごい大事だなと思うので、うん。それを本当に子供たちにあげたい。自分の周りはすごく応援してくれてるんで、だからこそ、今回(の敗戦)は申し訳なかったなと思いますね。でも、ここからストーリーが出来たって感じなので、次回のトーナメント、楽しみにしてもらえたらうれしいです。しっかり優勝して、きっちり借りを返したいと思っているので楽しみにしてください。

 

堀口 恭司(ほりぐち・きょうじ) 職業:格闘家
群馬県高崎市出身。フロリダ州ココナッツクリーク在住。アメリカン・トップチーム所属。幼少より伝統派空手を学び、PRIDEやK-1の影響を受けて空手からMMAへ。2013年にはUFCデビューし4連勝を飾り、フライ級ランキング3位に名を連ねる。その後、16年からはアメリカの名門アメリカン・トップチームの所属になり、タイトルマッチ後も3連勝を挙げるが、日本格闘技を盛り上げたいと17年3月にRIZIN電撃参戦を発表。現RIZINバンタム級王者。日本人史上初のBellator世界王者。Bellator世界バンタム級ランキング7位。元修斗世界バンタム級王者。日本人及び軽量級総合格闘家において世界トップクラスの実力を有しており、アメリカの総合格闘技団体「UFC」在籍時はフライ級ランキング最高3位まで上り詰め、UFC 186のメインイベントで当時のUFC世界フライ級王者デメトリアス・ジョンソンと対戦した。
■公式サイト:https://horiguchikyoji.com/
■ツイッター:@kyoji1012
■YouTube:www.youtube.com/channel/UC-GUnpgY8Er056ZUI_CdDOA

(2022年1月8日号掲載)

 

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〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、1000人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

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