自分を知らない人も楽しませる自信あります!
「ガチ!」BOUT. 245
日本プロレス界の盟主である新日本プロレス。そこの期待の星である高橋広夢選手―。一昨年、メキシコのメジャー団体であるCMLLで謎のマスクマン、カマイタチとして登場。今年に入り、米団体ROHを中心に北米に活躍の場を移している。世界を舞台に戦っているカマイタチに、今後の展望など、話を伺った。 (聞き手・高橋克明)
北米で定期的に参戦
新日本プロレスから海外修行に出て、現在どのくらい経ちましたか。
カマイタチ 最初はイギリスで半年くらい、そのあとメキシコで2年2カ月、アメリカは今5カ月くらいですね。
ちょうど3年くらいですね。会社から帰国命令が出るまでは戻れない?
K そうですね。でも、もし今戻ってこいって言われても自分は断ると思います。
まだ修行期間でいたい、と。
K もう少し必要かなと思っています。帰るのであれば、もっといろんな技術なり身に付けて、3年前の自分とはまったく違う自分で帰りたいので。そのためにはもう少しだけ。もうちょっとで(理想の自分に)たどり着けそうな気もするので。
新日本からニューヨークに修行に来られたレスラーには何度かインタビューしてますが、皆さん「早く帰りたい」ってぼやいてた選手も多かったですが。(笑)
K もちろん帰りたいって気持ちもありますよ(笑)。もともと海外、苦手だし。自分の中でオッケーが出たら、今スグでも帰りたいですけれど(笑)。でも、ガマンして耐え忍ぶのも一つの修行だと思ってるので。その分、上に行くために早くいろんなものを吸収したいですね。
新日本というマット界の盟主の中でも、これだけの期間、海外に出されるのはそれだけに期待されていたと思うのですが…。
K (さえぎって)いや、自分から手を上げました。(海外修行に)行きたいって。やっぱり成功したレスラーは誰もが通る道なので、自分的には早く行きたくて仕方がなかったんです。まぁヤングライオン(新日本所属の若手レスラー)は、いろいろと(日本にいても)ガマンしなきゃいけないことが多くて。(笑)
寮生活にしろ、道場での稽古にしろ想像を絶する厳しさと聞いてます。(笑)
K 正直耐えられなかったです(笑)。でも厳しいのは全然、問題ないんですよ! そういう世界なんで! それより試合で結果を出せなかったことの方がつらかったです、だから一度外に出て自由になりたいなと。
厳しいのが耐えられなかったのではなく、自由を求めてきた、と。
K ほんとそうです。一日でも早くそこから抜け出したかったので、イギリスに行かせてください! って。
なんとなくのイメージですが、近年の新日本の若手海外修行き先って、北米かメキシコのイメージが強いのですが、イギリスを希望された理由はなんでしょう。
K 何かしら自分にスタイルをつけたかったんですね。ヨーロッパ特有の、キャッチ・アズ・キャッチ・キャン(スタイルのレスリング)に憧れもありましたし、(アイルランド出身のプリンス・)デビット(現・フィン・ベイラー)さんにお願いして、いろいろ手伝っていただいて。
実際のイギリスマットはいかがだったでしょう。
K うー…ん、実際に行ってみると、今はもう、昔ながらのスタイルってなくなってしまって、アメリカンプロレスが主流になってしまってましたね。これはー、自分が求めてるものじゃなかったなぁと思ってしまいました。
そうなんですね…。
K なので、ずっといてもダメだと思い、メキシコを希望したんです。
マスクマンとして。
K そうですね。メキシコに行くなら素顔を隠してマスクマンとして行きたいというのは、最初から会社に希望を出してました。
イギリスの正統派レスリングとは、真逆のルチャリブレ(プロレス)はいかがだったでしょう。
K いやぁ、最初は苦労しましたね。初めての経験だったので、こんなに(前が)見にくくて、呼吸もしにくいのか! って。ただでさえメキシコは高地なのに、慣れるまではホント大変でしたね。
そう考えたら(獣神サンダー・)ライガーさんは、すごいですね。
K いや、すごすぎますよ。全身コスチュームですから!
そして北米に来ました。アメリカのマットはいかがでしょうか。
K 日本とアメリカは大差ないかもしれないですね。でもメキシコとイギリスはさすがに違いました。イギリスってリング自体が結構小さいんですよ。メキシコだと3歩で歩く距離が2歩だったり。タイミングが狂うんです。
なるほど。
K イギリスの後のメキシコは試合感覚がズレます。例えば相手をロープに振ってのドロップキックだとか、ジャンプするタイミングから違ってきます。そのあたりはかなり戸惑いましたね。あ…メキシコはマットが異常に硬い。
へー。飛んだり跳ねたりで、一番柔らかいイメージがありました。
K いや、ボディスラムが必殺技になるくらい硬い(笑)です。キツいですよ、受け身一つで呼吸できなくなるくらい。結局、普段ボクシングも兼用のマットなので、そのくらいの硬さになっちゃうと思うんですけれど。
ボクシングと同じリング(笑)。観客はどこの国が一番良かったですか。
K お客さんはですね、自分が一番好きなのはメキシコですかね。とにかく盛り上がってくれるんですよ。何をしても反応が返ってくるというか。レスラーからしたら、すごくありがたい。僕が入場しただけで、大ブーイングなので。
日本人レスラーが入場した際は。
K そう。やっぱりうれしいですよね。
同期の選手も日本に凱旋(がいせん)帰国して活躍されています。焦りはありませんか。
K いやー、すごい焦りますよ。自分と一緒に頑張ってきた、渡辺高章選手なんて、自分の方が先に遠征に出ましたからね。なのに、彼は先に凱旋して、もう(日本マットで)活躍してるわけですから。気持ち的には複雑になります。
その焦りも含めて、この先のアメリカでの活動はどうしていきたいでしょう。
K 自分はジュニア(・ヘビー級)として、ヘビー級のIWGPのベルトも取りたいという願望がありまして。多分、歴代のジュニアヘビーのレスラーの中で、ジュニアの階級のまま、ヘビーのタイトルを取った選手っていないんですよ。なので、そのためにも、技であったり、体であったり、風貌であったり、ヘビーでも通用するように、なんなきゃなと思います。今の時点で、すでに3年前の自分とは比べ物にならないものを見せれると思ってますので。
なるほど。
K 新日本プロレスのトップって誰ですか? って聞かれたときにカマイタチ、でしょ、みたいな感じでファンの方に言ってもらえるように頑張ります。
最後に読者にメッセージをお願いします。
K まだ自分のことを知らない人はたくさんいると思うので、とにかく、Youtubeでも、ほかの動画サイトでも、なんでもいいので、自分の試合を観てください。で、いつか会場にも足を運んでください。絶対に面白いものを見せる自信があるので!
カマイタチ 職業:プロレスラー
1989年12月4日生まれ。東京都八王子市出身。2010年8月24日、新世代育成プロジェクトNEVERにてプロデビューを飾る。13年6月9日、後楽園ホールで行われた最終戦で中西学と組み永田裕志&渡辺高章と対戦し、勝利後、イギリスへ遠征することを発表した。14年1月31日、メキシコのメジャー団体であるCMLLにてOKUMURAがパートナーとして呼んだ謎のマスクマンであるカマイタチとして登場。16年4月末からは米団体ROHを中心にNEW(Northeast Wrestling)やプロレスリング・ゲリラなどのインディー団体に定期的に参戦する。
〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。
(2016年10月22号掲載)