【独占インタビュー】ビリギャル本人 小林さやか

0

BOUT. 325

ビリギャル本人 小林さやかに聞く

今年5月、コロンビア大学教育大学院を卒業

NYって最高だけど実際に来ないと分からない

ここは「違う」ことが当たり前 こんなに自由でいいんだ!

120万部を超えるミリオンセラーとなった『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(坪田信貴・著)のモデル、小林さやかさん。日本での社会人経験を経て、留学していたニューヨークの名門大学・コロンビア大学教育大学院を今年の5月に卒業した。ニューヨークに来て、何を感じ、何を得たのか、お話を伺った。 (聞き手・高橋克明)

今年5月、コロンビア大学教育大学院を卒業した小林さやかさん。卒業式には、高校2年の時に出会った恩師、坪田信貴氏(左)も駆け付けた

今年5月、コロンビア大学教育大学院を卒業した小林さやかさん。卒業式には、高校2年の時に出会った恩師、坪田信貴氏(左)も駆け付けた

空前のベストセラー、『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』がもう10年前になります。今振り返って、当時の社会現象をご本人はどう見ていましたか。

小林 意外と冷静に見ていた気がします。自分からしたら、頑張って普通に受験勉強していただけで、そんな人は他にもたくさんいるし、実際、慶應(大学)に入学してみたら、同じように(高校時に)無理だって言われて(頑張って)合格してきた人だらけだったので。

本人は意外と冷静に見ていた?

小林 どうして私なんだろう、とは思ってました。そんなスゴイことじゃないです、と(当時の)インタビューで答えた記憶がありますね。

社会現象にまでなったのはなぜだと思いますか。

小林 自分なりに分析してみると、一つは「スゴ過ぎないこと」だったからじゃないかと。これがハーバード(大学)だとあそこまでヒットしなかったと思うんですよ。

みんながイメージできる範囲内だったと。

小林 そう。慶應大卒なんていくらでもいるじゃないですか。頑張ったら私も!と思える範疇(はんちゅう)の上が慶應だった。ちょうどいい憧れられるレベルだったと思うんです。

なるほど。確かにそうかもしれないですね。

小林 で、もう一つは私があの本を書いてないってことだと思うんです。

作者はさやかさんの塾の講師、坪田(信貴)先生ですね。

小林 もし私が自分で書いたとしたら、「なんだこいつ自分で言いやがって」って自慢してるように感じる人もいたと思うんです。日本人の感覚からすると、癪(しゃく)に障るというか。

米国だったらウケるかもしれないけど、日本人はそこは謙遜しなきゃいけない。(笑)

小林 そうそう(笑)。坪田先生が、「聞いてください、皆さん。この子、こんなことも分からなかったのにこんなに頑張って勉強して慶應に入ったんですよ」って書いたから、エンタメとして受け入れられたのかなと。なので「皆さんもできますよ」ってことを客観的に書いてくれたのが良かったのだと思います。

さやかさんとプライベートでお会いした際、最初にビックリしたのが、冷静なその分析力でした。当時、あれだけブームになったアイコンなのに、一切、偉そうにしていない。(笑)

小林 だって全然特別じゃないから(笑)。坪田先生に出会ってなかったら、どこの大学にも進学していなかった自信があるので。先生と出会って、「こんな面白い大人がいるんだったら、その世界にちょっと私も行ってみたいな」と思えて。そして、先生が正しい努力の仕方を教えてくれたんです。学校の先生だったら1ミリも勉強したいとは思わなかった。(笑)

環境や出会いの重要性ですね。

小林 一つの出会いだけで、こんなに人生変わるんだって。奇跡を起こしたわけじゃなく、環境が整って、正しい努力をして、その上で自分に自信を持って一歩踏み出す勇気があれば、本当に誰でもできる。今もそう思ってます。

今年(の5月)、コロンビア大学の大学院を卒業されました。コロンビアに進学したのはなぜでしょう。

小林 やっぱり坪田先生に救ってもらった人生だから、今度は私が人のためにできることはなんだろうって考えたんですよ。それまでも講演会を500回くらいしたのですが、どうしても「私ができたんだからみんなもできるよ」って言っても「それはあなただからだろう」とか「もともと頭良かったからじゃない」って思われたりもしたんです。なのでもっと科学的に話せるようになりたいって思ったんですね。

再現性、というか誰にでも適用できるように構築的に学びたかった、と。

小林 で、慶應受験を乗り切った自分が、あれを超えるぐらい大きな挑戦をするには、もう日本から出ないとダメなんだろうなっていうのは、ずっと感じてたので、もう行っちゃおうと思って。

以前、英語は吐きそうなほど嫌いだっておっしゃってました。(笑)

小林 そう(笑)。でも、海外に憧れはあったんですよ。妹が「お姉ちゃんみたいになりたいけど、別のルートでやってみたい」って、中学卒業したらニュージーランドの高校に留学しちゃったんですよ。それで英語ペラペラになって帰ってきて、上智大学に帰国子女枠で入ったんですけど、彼女を見て「留学ってこんなに人を変えるんだ」って思って。

確かに留学して後悔したって人、あまり見たことないですね。

小林 で、行くならアメリカがいいかなって。私なんだかんだ大学卒業してすぐ就職したんですけど、海外ではギャップイヤーってのがあるじゃないですか。(学業を納めた後)1、2年何やってもいい、旅して回ってもいい、バイトしてもいいし、何もしなくてもいいっていう時間を欧米では普通の文化としてあるじゃないですか。

日本にはない文化ですね。

小林 そう! 日本だと「君、この1年何してたの」っていう余白を悪とする文化がちょっとある気がして。それはよくないなと思ってるんですけど、私も大学卒業してすぐ周囲に流されて就職して、必死で働いてたらすぐに3年ほどたっちゃって。その後、結婚したりで(留学の)タイミングを逃しまくっちゃってたんですね。で、日本だと30(歳)超えちゃうと留学しちゃダメ、とは言わないけど、意味ないみたいな風潮があるじゃないですか。その時、34(歳)だったけど、もう行っちゃおう!と(笑)。でも、今振り返ってもあんなに正しい判断なかったなと思えますね。

ギャップイヤーも、そしてある意味キャリアのブランクも実は大切なことかもしれないですね。

小林 日本は、年齢にいつもせっつかれている感じがします。日本は、周りと一緒じゃないとみんな不安になっちゃうんだなぁとニューヨーク来て本当に感じましたね。それって、実は世界からみても割とユニークなことだったんだなって。(笑)

こっちだと逆に歩調を合わせようとする人間がいない。(笑)

小林 そうそう(笑)。本当に自由に自分のやりたいことをやりたいタイミングでやれるというか。「違う」ことが当たり前ですよね。日本は日本でハーモニーを大切にする文化で、それはそれで素晴らしいとは思うんですけど、私は、こっちの誰も気にしない、って空気の方が合ってますね。ニューヨーカーって、too muchなぐらい自信があるじゃないですか。日本人は「できること」も「いやいや、私なんてまだまだ」って言うけど、ニューヨーカーは「できないこと」まで「できるよ!」って言う。たとえば「僕、日本語しゃべれるよ」って言っても、「こんにちは」しか言えないとか。

あはははは。同じこと言おうとしてました。イー、ニー、サン、シー、ゴー、とか。数数えるだけなら、世界中の言語話せるわ。(笑)

小林 (笑)。それ出来てないから(笑)。でもそれくらいの方がいいですよね。それでいいんだって思います。私すごいコンプレックスも割とあったんですよ。でもこっちにいると、なにか気にならなくなったっていうか、気にしてるのは私だけなんだろうなって思えるようになった。自信はtoo muchぐらいでちょうどいいって思います。

確かに。

小林 なので、皆さん1回、絶対来てほしいって思う。夏に一度日本に帰国しようと思っていますが、ニューヨークには絶対また戻ってこようと思ってます。ニューヨークって本当に最高だけど実際に来てみないと分からない。そして、自分自身が絶対に変わると思います。特に女性はなんて言うか、日本だといろいろ我慢している方多いと思うんですよ。そういう人がニューヨークに来ると開放される。こんなに自由でいいんだ! って人生変わったって言って帰っていく人が多いんですよね。私もそうですけど、衝撃を感じると思います。ぜひね、空気を吸ってほしい。臭いけど、本当すごく臭い、申し訳ないですけど(笑)。でも、ここの空気を吸ってほしい。

では、この先の目標を教えてください。

小林 私は日本人のマインドを変えたいです。日本人ってすっごい優秀なんです。人のことを思いやれて、聡明で、クリエーティブでで、愛情もあふれてて…なのに自信がないって本当に異常です。去年の夏、ヨーロッパに2カ月半くらい回ったんですけど、どこ行っても日本のファンがいるんですよ。フィンランドの小さい町の大学の食堂ですら、日本のファンがいました。日本語で話し掛けられて、「何で日本語しゃべれるの」って聞いたら「フィンランド人は日本、大好きだからね」って言われたり。南米にも、北欧にも、もちろんここアメリカにもいっぱいいますよね!

日本の方が思ってる以上に。

小林 そう! それを日本人が知らないっていうのは、本当にもったいない。こんなに日本の文化が世界で評価されてるのに日本人がそれを知らないなんて。なので日本人にはもっと世界に出てほしい、コンフォートゾーンを抜け出して、自分ができるって思ってほしい。自分にはちゃんと価値があるんだってことをちゃんと感じてほしい。その頑張り方みたいなのを皆さんにこれからも伝えていきたいですね。

小林さやか

小林さやか(こばやし・さやか)
1988年、名古屋市生まれ。高校2年の時に出会った恩師、坪田信貴氏の著書『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称:ビリギャル)の主人公。慶應大卒業後、ウエディングプランナーを経て、“ビリギャル本人”としての講演や執筆活動などを展開。2019年4月より、聖心女子大学大学院へ進学、21年3月修了。22年9月より、米国コロンビア大学教育大学院の認知科学プログラムに留学。24年5月修了。著書に『ビリギャルが、またビリになった日 勉強が大嫌いだった私が、34歳で米国名門大学院に行くまで』(講談社)がある。
公式サイト:https://birigal.biz/

◇ ◇ ◇

『私はこうして勉強にハマった』


ビリギャル本人が初公開!
1年で偏差値40上げて慶應大学に現役合格した勉強法!
書籍『私はこうして勉強にハマった』(著者:ビリギャル本人さやか)が7月9日、サンクチュアリ出版から発売された。再現性のある科学的根拠に基づいた勉強法を、親しみやすいさやかさんの語り口調と実体験を基に分かりやすく説明している。

◇ ◇ ◇

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「ニューヨーク Biz!」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、1000人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

(2024年7月20日号掲載)

↓画像をクリックしていただくと拡大してご覧になれます

Share.