BOUT. 279
演劇プロデューサー 松田誠に聞く
“2.5次元ミュージカル”の仕掛け人がニューヨークに挑む!
チケット入手が困難なほど、日本でムーブメントを起こしている“2.5次元ミュージカル”。その仕掛け人である演劇プロデューサーの松田誠さんが、自身がプロデュースする2.5次元ミュージカル版『美少女戦士セーラームーン/プリティー・ガーディアン・セーラームーン(“Pretty Guardian Sailor Moon” The Super Live)』と共にニューヨークにやってきた。ブロードウェイの劇場で行った3公演は全てソールドアウトに。米国にはない、全く新しいエンターテイメントで会場のニューヨーカーたちを魅了した。今後は世界進出を狙う松田プロデューサーにお話を伺った。
今回、3公演ともソールドアウト(満員札止め)でした。
松田 いやぁ、実際に(ニューヨークに)来るまでは、受け入れてもらえるのかって分かんないじゃないですか。『セーラームーン』が人気なのは分かってたんですけど、舞台は果たしてどうなのか。でも、チケットも発売と同時にすごく売れて。やっぱり待ってくれてる人はいるんだなと思いました。この間のワシントン(シアトル)での公演も、すごい反応で、もう衝撃でした。僕、今までいろんな国でやってきたんですけれども、一番、客席が盛り上がっていて、見たことない景色だったんですよ。
それは興奮しますね。
松田 アメリカ、すごいなって。僕も演劇の人間なんで、こうやってブロードウェイに来ると、メラメラ燃えちゃうんですよ。(笑)
やはりこの場所は特別ですか。
松田 この劇場の隣で『ライオン・キング』をやっていますけれど、『ライオン・キング』がすごいなと思うと共に、日本にも優れたコンテンツ、いっぱいあるじゃないですか。『セーラームーン』だけじゃなくて、いっぱい世界中に愛されているコンテンツがあるから、(それらを)もっと世界に広めたいなって気持ちになりますね。
アメリカではすでに人気のある日本のアニメ作品は多いです。
松田 そうですね。アメリカ(での公演)ならアメリカ人が見たいと思ってるものを作るべきなので、『ナルト』のようなすでに世界中にファンがいる作品とかで、挑戦できればいいなと思いますね。
日本での公演と海外用に内容は変えているのでしょうか
松田 今回の『セーラームーン』に関して言えば、台詞(せりふ)は極端に減らしてるんですよ。今までは、海外で公演する時もガンガン台詞をしゃべって、字幕(スーパー)を流していたのですが、今回、ノンバーバル(ほぼ台詞なし)に近づけてみようってトライしました。このやり方がいいカタチになったら他の(海外出展)作品も同じようにできるかなって思います。
そうなるとそれこそ北米だけじゃなく、全世界がターゲットに。
松田 言葉、関係なくなるんでね。
海外公演は、やはり収穫が大きいですか。
松田 そうですね。“Try and Judge”みたいなことをずっとやっている感じです。アメリカって、やっぱり大きいじゃないですか。当然、マーケットとしても、ターゲットとしても大きい。ある意味エンタメの先輩国ですから。ここで何かをつかめたらいいなとはずっと思ってました。そして、今回、ワシントン(公演の客の反応)を見る限り、この国でやれるんじゃないかっていう実感は持てましたね。
ニューヨークという街に対しての思い入れはいかがでしょう。
松田 むっちゃありますね。やっぱり、ショービジネスをやっている人間にしたら憧れの場所だし、なので今回、ブロードウェイのタイムズスクエアにある劇場で公演できるなんて、夢のようです。初めてここ(タイムズスクエア)に来た時に「なんなんだ、ここは!」って。世界の中心と呼ばれる場所なのに、劇場がいっぱいある!って、びっくりしたんですよね。日本だと考えられない。
なるほど! 確かに、ここは世界の中心で…。
松田 ど真ん中でしょ? “地球のへそ”と言ってもいいところじゃないですか。
で、そこにあるのが…。
松田 劇場なんですよ。
そういうふうに考えたことなかったです(笑)。でも、確かにそうですね。
松田 地球のど真ん中にあるのがミュージカルなんだと思ったら、もうその時点で感動しちゃって。初めて来た時に感じた、その感動を今でも思い出しますね。
今回は、そこでご自身の作品が上演されました。
松田 本当にうれしいですね。そのあと何本か他のミュージカル作品を見ながら「わぁスゲエな〜っ!」って思ったり「これだったら俺の方がいける」とか思いながら観るようになりました。(笑)
今回の成功を元にまた戻ってきてください。
松田 なるべく早く戻ってきます!
松田誠(まつだ・まこと)
職業:演劇プロデューサー
1967年東京都出身。日本2.5次元ミュージカル協会代表理事。ネルケプランニング代表取締役会長。演劇プロデューサーとして人気漫画『テニスの王子様』を2003年に初めてミュージカルにするが、当時は〝人気漫画作品の舞台化〟となじみが薄くチケットの売れ行きも決していいものではなかった。しかし、その後口コミで爆発的な人気となりシリーズ化。『美少女戦士セーラームーン』『黒執事』『NARUTO-ナルト-』などの舞台化を次々と手掛け、いずれもチケット入手困難な人気作品となる。演劇以外にも多方面で新しいエンターテイメントを仕掛けている、日本のステージコンテンツビジネスのトップランナーの一人。昨年出演したTBS系ドキュメンタリー番組「情熱大陸」では〝2.5次元ミュージカル〟仕掛け人のムーブメント作りの裏側にカメラが迫り話題に。DVD化されるなど注目された。https://www.j25musical.jp
(2019年4月13日号掲載)