「たかがプロレス、されどプロレス」ですから
「 ガチ!」BOUT. 211
1980年代に「クラッシュギャルズ」として日本全国を熱狂的な女子プロレスブームに巻き込んだ女子プロ界のカリスマ、長与千種さん。そんな長与さんが6月初め、自身が設立した女子プロレス団体「Marvelous(マーベラス)」に所属するレスラー発掘のために来米し、ブルックリンにある練習場でトライアウトを実施した。米国にレスラーを発掘しにきた理由や、今後の目標など、お話を伺った。 (聞き手・高橋克明)
日本の女子プロレス新団体、NYでトライアウト
今回の渡米の目的は新しい人材を見つけるためのトライアウトと聞きました。
長与 日本で新しく女子プロレス団体「マーベラス」を立ち上げるにあたって、すでに即戦力が4人と、あと10代、20代の候補生が徐々に入ってきたんですけれど、やっぱりアメリカにもプロレスが大好きで、可能性がある子たちがたくさんいると聞いたので。ただ、どんなコがいる?ってメールや電話じゃなく、わざわざ海を超えて来たのは、実際に彼らを見たい、話したい、彼らの熱意を感じたいと思ったからなんですね。
言葉が通じなくても…。
長与 そう! 会話はできる。国籍や人種は違っても目指してるところは一つなので、それを高めていけるような一つの道ができればいいなと思いますね。(それによって)日本でデビューをしてアメリカに逆輸入するコもいれば、アメリカで日本人をデビューさせてっていう可能性もあると思うんですよ。
今回、男子レスラーのオーディションも同時に行われました。既成の女子プロレス団体ではなかったように思います。
長与 男子レスラーが女子レスラーを育成することが普通だったんですけれど、その逆は皆無に近かったと思います。(男女問わず)アメリカと日本で逆輸入し合えたり、それこそ「マーベラスUSA」ができれば理想だなと思っています。アメリカ(のプロレス)にはパフォーマンス的な技術とか派手さがあったり、逆に日本には細かい技術があるので、お互いに補い合っていければ、それこそハイブリッドのレスラーを育てることができると思うので。
アメリカには日本にない華やかで個性的なレスラーもそろっていますから。
長与 もう、ほんっとそうなんですよ。本当にさまざまですよね。でも、それこそがプロレスですから。あのマーベル(注)のキャプテン・アメリカとか、ファンタスティック・フォーとか、そういったキャラクターのおもちゃ箱をひっくり返したような、夢を与えられる団体にしたいですね。
「マーベラス」の旗揚げ興行は来年春の予定ですが、手応えはいかがですか。
長与 もちろんあります。でも旗揚げは一つの通過点に過ぎなくて、その先を見てるんですね。私、長与千種が考えるプロレスっていうのは最高の芸術でエンターテインメントなんです。「たかがプロレス、されどプロレス」ですから、そこに足を運んだ人を元気にしたり、あるいはうんと楽しませたり、あるいは「明日頑張ろう」って思わせる一つのサプリメントであったり。それを目指してる団体なので、この先もずっと、皆さまに見ていただきたい。いつかマーベラスの選手一同をこっち(ニューヨーク)で勢ぞろいさせて、皆さまに見ていただければ、一番いいですよね。
(注)「マーベル」 70年以上の歴史を持ち、数々のスーパーヒーローと彼らが活躍する作品を世に送り出している米国の漫画出版社
★ インタビューの舞台裏 → ameblo.jp/matenrounikki/entry-12037583259.html
長与千種(ながよ ちぐさ) 職業:女子プロレスラー
1964年12月8日、長崎・大村市出身。80年8月8日、全日本女子プロレス、田園コロシアム大会の大森ゆかり戦でデビュー。83年からライオネス飛鳥との「クラッシュギャルズ」で日本全国に空前のブームを巻き起こす。得意技は、ランニングスリーとスーパーフリーク。89年5月引退。芸能生活を経て93年に現役復帰。94年にガイア・ジャパンを旗揚げ。2005年のガイア解散と同時に再度のプロレス引退。数回の単発出場を経て14年3月、約5年ぶりにリング復帰。「That’s女子プロレス」興行プロデュースを手掛けながら同年、新団体「マーベラス」を設立。後進の育成とともに、新人レスラーの発掘に力をいれている。詳細はwww.marvelcompany.co.jp参照。飲食店やドッグカフェの経営をしており、実業家としての顔も持つ。
〈NY・トライアウト〉
男女、人種問わず挑戦
元クラッシュギャルズの長与千種さんが来米し、自身が設立した女子プロレス団体「マーベラス」のトライアウトを4日、ニューヨーク、ブルックリンのThe Ludus Wrestling Centerで開催した。
同団体は、男子練習生も採用しており今回のトライアウトでも、女子に限定せず募集したことから当日は男子レスラーも多数参加し、男女25人ほどのレスラーが全米から人種を問わず集まった。トライアウトはリングの上で受け身やロープワークなど基本を行った後、試合形式でレスラーたちのパフォーマンスをチェック。リングサイドから厳しいまなざしでレスラーの一挙一動を見守る長与さんに応えるかのように、それぞれが自らの技術や個性を全力でアピールした。
長与さんは、今回集まったメンバーの中から男女問わず最初のレスラーを選びたいとし、米国でのトライアウトは今後も続けていきたいと意気込みを話した。また、その際には自らリングシューズを履き、自身が学んだプロレスを教えると、集まったレスラーたちと約束を交わした。
同団体では、新人レスラーを広く募集している。詳細はウェブサイト(www.marvelcompany.co.jp/marvelous/)参照。
〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。
(2015年6月27日号掲載)