商売ではなく楽しんでもらうための曲作りを
「ガチ!」 BOUT.154
東海岸最大のアニメコンベンション「OTAKON2013」で10年ぶりのライブを 行ったT.M.REVOLUTION(西川貴教)。「るろうに剣心」や「機動戦士ガンダムSEED」など数々のアニメ主題歌に起用され、アニメファンからワールドワイドに高い支持を得ている。ライブ直後の興奮さめやらぬ西川貴教さんにお話を伺った。
(聞き手・高橋克明)
OTAKONに10年ぶり出演
今回で20回目を迎えた記念すべきOTAKON。西川さんにとっては10年ぶりの出演となります。
西川 10 年前は、日本国内にいるとOTAKONがどういうイベントなのかという情報も入ってこなかったし、どのくらいの方が集まってくださるのかも分からなかった。ですから実際に行ってみて、遠く離れたアメリカで日本の音楽やポップカルチャーに興味を持ってくださる方が大勢いることに本当に驚きました。 今回は、そのOTAKONが20年も続いているということ、10年前に伺った時よりさらに勢いや規模が大きくなっているということにとても感動しましたね。OTAKONは、日本のいわゆる「コミックマーケット」のようなイベントに非常に近いのですが、日本のゲームやアニメといったポップカルチャーがベースにありつつも、20年続くうちにアメリカのもの、“アメリカ味”になっていることが素晴らしいと思いました。 こちらから出ているカルチャーをただ受け止めるだけでなく、地域の方が独自の方法で楽しまないと、こういうものは広がっていかないものだと思っています。 ですからそういう意味でも、完全に「OTAKON」という一つのアメリカ発信のイベントとして成り立っていると感じました。
会場に入って、実際にファンの熱気を感じた時はどのように感じたでしょう。
西川 ライブのMCこそ英語を織り交ぜていましたが、もちろん曲は日本語ですし、基本的には僕の音楽や僕自身に興味を持ってくださる方が来てくれているので、結構日本語で話したんです。ちょっとしたコール&レスポンスも日本語でしましたし。実際に現地のサイン会などでファンの方と直接コミュニケーションを取る機会も作っていただいたのですが、皆さんが一生懸命日本語で話しかけてくれたのが本当にうれしかった。 日本語ってマイノリティーですから、そういう言葉にまず興味を持ってくれたことに感動しました。
アメリカでは年々アニメファンが増え、このようなイベントが盛り上がりを見せています。
西川 まだまだ限られた人たちのニッチなマー ケットだと思うんですが、他にはない日本のオリジナリティーをアピールする貴重な機会だと思うので、一つのきっかけとして臆せずにトライしていければと思います。僕は一例でしかないと思うし、僕だけではまだ点でしかないので、これからは点を線にする作業をしなくてはいけない。アニメやゲームだけでなく音楽やその他の日本のポップカルチャーを、線にして、さらに束にしてかからないといけないと思うんです。僕自身も、そういう機会を模索していきたいと思いま す。
日本独自のコンテンツを世界にアピールしていく施策のために、国もようやく重い腰を上げたところなので、今後も積極的にみんなでチャンスを探っていければと思いますね。僕が広報大使を務めている文化庁の「アニメミライ」という若手アニメーター育成プロジェクトも、そういう新たなコンテンツ作りを担う部分も大きいと思っています。
OTAKONも含めてこういうイベントは純然としたファンの方のものですから、そこで商売うんぬんというわけではなく、本当に楽しんでもらうためのきっか け作りをたくさんしていきたいし、そういうところで求めてくれている人がいることをわれわれもきちんと認識していければと思いますね。
今回のために特別CDをリリースされました。すでに大きな注目を集めていますが、今後につながっていく実感はありますか。
西川 いやいや、まだまだです(笑)。世界のいろいろなところで日本の文化に興味を持ってくださる方がいるにもかかわらず、これまでそういったものが気軽に手にとってもらえるような状態になかった。それをきちんとチャンスに変えていくのは、まだまだこれから。そのために越えなくてはならないハードルもたくさんありますし、逆に言えばそういうものを乗り越えるためには、アーティスト単体の力だけでなくいろんな方の協力が必要だと思っています。
西川 今回、アメリカでは5年ぶりのライブでした。まだ海外でのワールドツアーが実現できていないので、そういう他の国や地域で待ってくれている人のところに直接、歌を届けに行くチャンスを作っていければと思います。
NYにはどういった印象をお持ちでしょうか。
西川 ちょっと頭をリセットしていろいろなこと をインプットするのに、僕にとってニューヨークは大切な場所なんです。行った時は、もちろんミュージカルも楽しみですし、小さな美術館がたくさんあるのでそういうところをいくつも回るのがすごく好きですね。僕はミュージカルを定期的に行っているので、作品のライセンスの交渉などで訪れたこともあるんです が、やはり目の肥えたニューヨークの方々に評価していただけるような活動を、どんな形であれニューヨークでトライしてみたい気持ちもあります。
NYにも大きなコミックコンがあります。またぜひ、次回はニューヨークでのライブも期待しています!
西川 5年前のコミックコンでのライブは僕にとっても印象深いものでしたから、なるべく早くまた公演できるように僕もがんばりますし、ファンの皆さんからもそういう声を上げてもらえるとうれしいなと思います!
TM.REVOLUTION 西川貴教
職業:ミュージシャン
1970年生まれ。滋賀県出身。1996年、西川貴教のソロプロジェクト(T. M.REVOLUTION)として「独裁 – monopolize -」でデビュー。その後「HIGH PRESSURE」「WHITE BREATH」「HOT LIMIT」「ignited」など、ヒット曲を連発。2008年には「滋賀ふるさと観光大使」に就任。その他司会・俳優など幅広い分野にて精力的に活動を展開している。ことし2月に、セルフカバーベストアルバム『UNDER : COVER 2』を発売し、6月から全国ツアー「T.M.R. LIVE REVOLUTION ’13 -UNDER:COVER 2-(32公演)」中。
〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。
(2013年8月24日号掲載)