【独占インタビュー】八神純子

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BOUT. 326

シンガー・ソングライター 八神純子に聞く

NYの老舗ジャズクラブ「バードランド」デビュー

その時代のベストな曲を、歌を、届けていきたい

昨年デビュー45周年を迎えたシンガー・ソングライターの八神純子さんが6月29日と30日、ニューヨークの老舗ジャズクラブ「バードランド」でライブを行った。2日間の同地での初の単独ライブは両日ともにソールドアウト。拍手喝采で初日ライブを終えたばかりの八神さんに、お話を伺った。
(聞き手・高橋克明)

本当に素晴らしかったです!

八神 楽しかったぁ。(にっこり)

会場(老舗ジャズクラブ「バードランド」)に、これ以上なくピッタリなライブでした。

八神 ここはもう…マジカルですね。以前どなたかのショーをここに観にきて、その時に「あ〜、ここだったらリラックスして自分の歌が歌えるな」って思ってたんですよね。ちょうどいい緊張感を持ちながら歌える空気感があって。

では最初にここからオファーがあった時はうれしかった。

八神 めちゃくちゃうれしかったですよ! ニューヨークは東日本大震災(2011年)があった後にジャパン・ソサエティーのイベントで歌いに来たことはあったんですよ。その時にも、いつかここで歌いたいななんて思ってたので、それがやっと形になりました。

八神さんは、誰かのために歌うチャリティーコンサートのイメージもすごく強いです。

八神 今、「2回目の音楽人生」って自分で言ってるんですけど、活動を再開しようと思っていた時と東日本大震災が重なったんですね。息子が高校を卒業して、日本とアメリカと行き来して仕事しようと決めた時だったんです。なので、そのために歌おうって。

そして今回のバードランドは単独で、しかもチケット即完売により急きょ2daysになりました。

八神 結局、今朝まで(セットリストを)これでいこうか、アレンジしようかっていろいろと考えてました(笑)。日本語の曲と英語の曲とどのぐらいの割合にしようとか、MCも日本語と英語のバランスどうしよう…って。でも、最終的には決めないで出て、その場の感じる雰囲気でやろう、と。

結果、ニューヨーカーからも日本の観客からも、あれだけのスタンディングオベーションが起こりました。

八神 ホッとしてます。バードランドとブルーノートって、ライバルじゃないですか。ところが日本のブルーノートを経営するコットンクラブで、ここでライブができるお祝いライブをさせてくれたんですよ。その時に、今回の基本の形ができたので、ブルーノートさんにもコットンクラブさんにもすごく感謝ですね。そしてこういう機会を作ってくれた皆さんにも。

日本各地や西海岸、東海岸、さまざまなステージで歌われています。それぞれ観客に特徴はありますか。

八神 私のコンサートって、基本、皆さんすごく真剣に聴いてくださって、特に手拍子とかあるわけじゃないんですよ。手拍子しなくていいですよって言っちゃうんですね。歌を聴きにきてくれている。横の人が手拍子してると歌が聞こえないから、手拍子しなきゃいけないっていうのは絶対ないですよ、って最初に言うんですね。

皆さん、グッと聴き入ってらっしゃいました。で、終わった後に大喝采。

八神 皆さん、聴きたいと思ってくれているんだって気持ちがとっても伝わってくる。今晩もそういうライブでしたね。

八神さんが歌ってる時は、観客もそして八神さんご自身も幸せオーラで包まれているように見えます。

八神 幸せですよ、楽しいですよ、もちろん緊張はずっとあるんですよ。緊張もあるし、だけどその緊張と楽しさと喜びとそのバランスがすごくうまくとれる場所ってあって、ここは間違いなくそうですね。

何十年も歌い続けられてきました。今日の「みずいろの雨」を聴くと、今が全盛期なのではと思ってしまいます。

八神 ありがとうございます。今は、自分がすごく好きな声っていうか、歌い込んだシンガーの声になったかな、と思います。(「パープルタウン」という)曲が大ヒットして、その曲で紅白に出た当時(1980年)より、今の声の方が、いろんな歌が歌えて、表現力があると思っています。

実は僕、紅白で紫の衣装で歌われている八神さんをすごく鮮明に覚えてるんです。

八神 え〜〜!「パープルタウン」歌った時? おいくつでした?

6歳です。瀬戸内海の片田舎でテレビで紅白見たあと、家族で神社に初詣行く際、ずっと兄が「パープルタウン」を横で歌ってて覚えてるんです。(笑)

八神 本当にうれしい。まさか(今)ニューヨークにいるとは思ってないしね、お互い。(笑)

45年越しです(笑)。あの時の、すごくきれいな歌声のお姉さんに今、パープルタウンでインタビューしてる。(笑)

八神 お兄さんにもよろしくね。(笑)

アメリカに来られて37年。渡米されなかった人生を考えることはありますか。

八神 ありますよ。もしも来てなかったら、自分の中で1人の私しかいないですけれど…今は、日本にいた私と、アメリカに来たもう1人の私が自分の中に存在する。そして、その2人がとっても仲良しなんですね。サポートし合う。日本人の私が落ち込んでいると、アメリカ人の私が「What’s wrong with you ?」とか言うわけ。そうすると、日本人の私が「確かにね!」と答える(笑)。やっぱり日本人のいい所…アメリカ人のいい所がそれぞれあります。その2人が私の中にいて、とっても良かったって思います。

なるほど! 八神さんのこれからのゴールは何でしょうか。

八神 歌い続けていくことだけですね。先ほど“声”の話が出たでしょう。声って進化し続けるって分かったんです。ずっと進化していく中、その時その時の声に合った歌を書いて、歌っていける。その時代、時代のベストな曲を、歌を、届けていきたいなって思います。

バードランドのライブで熱唱する八神純子さん=6月29日、ニューヨーク(撮影:工藤)

バードランドのライブで熱唱する八神純子さん=6月29日、ニューヨーク(撮影:工藤)

八神純子(やがみ・じゅんこ) 職業シンガーソングライター
1958年1月5日生。愛知県出身。高校在学中からコンテストに出演し、74年『第8回ヤマハポピュラーソングコンテスト』に出場し、「雨の日のひとりごと」で優秀曲賞に入賞。78年『思い出は美しすぎて』でプロデビュー。以来、『みずいろの雨』「想い出のスクリーン」「ポーラー・スター」『パープルタウン ~You Oughta Know By Now~』などヒット曲を生みだす。87年に米国に移住に米国に移住。現在も海外と日本を行き来しながら、現在も精力的に全国各地を回り、音楽活動を続けている。
公式サイト:https://junkoyagami.com/
Facebook:junkoyagami.official、X(旧twitter):junko_yagami

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〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「ニューヨーク Biz!」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、1000人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

2024年7月27日号掲載)

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