矢野顕子

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楽しい気持ちを維持していくことが一番大事

「ガチ!」BOUT.86

 

矢野顕子

 

ニューヨークにベースを置き、日本と米国で音楽活動を行っている、シンガー・ソングライター&ピアニストの矢野顕子さん。ニューヨークで定期的にライブを行う一方で、日本でも毎秋行う「さとがえるコンサート」や、米国在住アーティストとスペシャルユニットを組んで帰国コンサートを行うなど、音楽を通し、日米間で活躍している。来月のニューヨークでのライブを目前に控え、お話を伺った。(聞き手・高橋克明)

 

来月2日 NYで年末ライブ

矢野さんにとって、ニューヨークはもう、東京よりもホームタウンですね。

矢野 そうかもしれないね~。だって、もう20年住んでいるんですもの。日本ではテレビに出たり、もっと、こう「仕事場」って感じで、こっちはもともとの自分の姿を見ていただく場所って感じがしますね。日本(のライブ)だと、楽しんでいただく要素の中に、曲と曲の間に地元の話題を入れたりするんですね。でも、こっちだとお客さんがより音楽に集中している感じがするので、結局、その雰囲気がトークではなく、自分を本来の音楽に集約させていくって感じ。だから同じライブでも曲1曲分多くなりますね。

そのライブがいよいよ12月2日に迫ってきました。

矢野 この年末にやるコンサートっていうのはやっぱり1年の総まとめ、みたいなところもあるんです。あとは、この街で、このバンドでやれるっていうのはものすごくうれしいんですよ。とにかく私自身が一番楽しみにしてるだろうっていうくらい。(笑)

矢野さんの惚れ込んだすごいメンバーだと聞きました。

矢野 もう、なにかね、ニコニコしちゃいます。彼らと一緒にライブができるっていうのを考えるだけで(笑)。その私の期待感も含めて、皆さんには楽しんでいただきたいなって。絶対ね、ライブを聴いていただけたら、バンドの事を好きになってもらえると思う。この4人でしか出せない音っていうのがあるんです。それは本当にどこにもないの。それをぜひライブで一緒に感じて、一緒に揺れてほしいですね。

矢野顕子ずっと一線でやってこられた秘訣(ひけつ)って一言で言うと何でしょう。

矢野 スタッフの力が大きいと思います。こういう音楽をやりたい! やる! って私が言ったところで、会場はどうするの? レコードはどこから出すの? って言われたら終わりですよね。意志があって、そして優秀なスタッフがいて。ただ、そのスタッフに付いてきてもらうためには、常に私自身がちゃんと良質の音楽を作るということに向き合っていかないといけないな、とは思っています。

今後の矢野顕子のたどり着く先ってどこでしょう。

矢野 うーん、やりたいことはいつも、もうやってるからねー(笑)。自分の中からやりたいっていう気持ちがどんどん湧き出てくる、温泉の源泉のようなものをちゃんと維持していくこと。それだけだと思いますねえ。

先日インタビューさせていただいた古内東子さんも矢野さんのライブをニューヨークで見て、自身もやりたいと思い実現したそうです。

矢野 ありがたいですよね、本当に。そう言ってくださると今度は私の方がその期待に背かないようにって励みになります。あのね、清水ミチコさんがずっと私のモノマネやってくれてますけど、あれもいつも思うんですけど彼女にいつまでもマネしたいなって思われる存在でありたいと思うわけ。

あ、そうなんですね。矢野さん、怒ってないかなって思って見てました。(笑)

矢野 私たち、すごく仲いいんですよ。

では、清水さんは許可を取ってやってるわけですね。

矢野 ううん、全然。勝手に。(笑)

(笑)

矢野 でも、でも、でもね、素晴らしい才能だと思うんですよ。一度、一緒にコンサートやったんですけど、照明のスタッフがステージ上を見てないとどっちがどっちか分からないって。実に似てるんです。何がすごいってピアノまで完コピするんです彼女。「バッタもん」っていうCDが昨年出たんですけどね。

「バッタもん」なのにクオリティーが高い。(笑)

矢野 すごいですよ~。でもそうやってフォローする人がいてくれてうれしいんです。古内さんにしても私が音楽のクオリティーを落とさないようにしている事に敬意を払ってくれているんじゃないかなって思うんです。だからこそ、私自身がいつも音楽を作りたいなっていう楽しい気持ちを維持していくこと。やっぱりそれが一番大事なんだと思いますね。

矢野顕子(やの・あきこ) 職業:シンガー・ソングライター、ピアニスト
青森生まれ。1976年「JAPANESE GIRL」でソロデビュー。81年シングル「春咲小紅」が大ヒット。90年ニューヨークへ移住。2010年は、10年ぶりの弾き語りアルバム「音楽堂」、森山良子とのデュオ〝やもり〟のファーストアルバム「あなたと歌おう」をリリース。10月にはウィスコンシン州マディソンで出前コンサートを行った。公式サイト:www.akikoyano.com/

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2010年11月20日号掲載)

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