YOSHIKIのやり方は間違ってなかったと、今感じます(ToshI)
ToshIがいなかったら今までの曲は生まれてなかった(YOSHIKI)
「ガチ!」BOUT.182
米音楽の聖地、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)で11日、コンサートを行うカリスマロックバンド、X JAPAN。現地入りしたリーダーのYOSHIKIさんとボーカルのToshIさんお二人に時間をとっていただき、今度のコンサートの意味、お互いの存在について、そしてこの10年間についてお話を伺った。(聞き手・高橋克明)
10・11NYライブへの思い
いよいよ今週末、4年ぶりのニューヨークコンサートです。YOSHIKIさんは2カ月前のインタビューで「あれからもう4年も経つのか…」とつぶやかれていましたが、ToshIさんにとってはこの4年間は長かったですか。それとも短かったですか。
ToshI そうですね、早いような、長いような…うーん、どっちなんだろう(笑)。
YOSHIKI ちょうど4年だね。
ToshI ちょうど4年だね。
ちょうど4年です。あの時もステージ上でToshIさんの誕生日パーティーをなさっていたので。
ToshI うん、奇遇にもまた誕生日の時期にニューヨークでライブができる。(笑)
YOSHIKI まぁ誕生日は(日程が)変わらないから。同じ日だからね。(笑)
ToshI 確かに(笑)。そう思うと早かったですね。
ただ4年前と違うのは、今回はマディソン・スクエア・ガーデンという“聖地”での開催です。
ToshI いや、もう…なんて言うか…(しばらく沈黙)。まだ現場に行ってないからかもしれないけど、想像もつかないですね。YOSHIKIのここまで僕たちを引っ張ってくれるリーダーシップというか、力というか、それがいきなりマディソン・スクエア・ガーデンまで引っ張ってくれるのか、と。その力を、やっぱり僕は尊敬するしかないですね。
YOSHIKI X JAPANって、すべてが夢みたいなバンドで。ホントに今、現実で起きてるのかなってことがよく(あるんですね)。朝起きたら、「あれ、今まで夢見てたんじゃないのかな」ってことが多いバンドなんですよ。(笑)
ToshI うん、そうだねー。
YOSHIKI だから(今回も)また新しい大きな夢が一つ。本当の夢と、眠っている時の夢と、その両方みたいな感じで「マディソン・スクエア・ガーデンでやってる夢」を見てるのかなって。
でもX JAPANにしてみれば、マディソン・スクエア・ガーデンは決して(キャパシティー的に)大きくはなくて、夢ではないホールですよね。
YOSHIKI でも、いつも(そう思ってるん)だと思います。東京ドームも18回くらいやってるんですけど、毎回、夢見てるみたいな感じで。
ToshI いつもそうだよね。今でもそうだよね。
YOSHIKI 先日も横浜アリーナで(復活ライブを)やったんですけど、その時も次の朝起きたら「あれ、本当にコンサートしたのかな?」って。でも、全身が筋肉痛だったんで、やっぱりやったんだなって(笑)。すべてが現実っぽく思えなくて。
X JAPANというバンドは日本の音楽史の中でも明らかに特別な存在だと思うんです。他のバンドとは違うカリスマ性を持っているにもかかわらず、いまだにまだ夢だと感じられる、と。
YOSHIKI それ、よく言っていただくんですけど、でもカリスマ性とか、あまり実感ないんです(笑)。普通に頑張ってるだけなんでね。ただ日ごろから努力はしてるので、ステージに立った時に、たぶん発揮できるんじゃないかなとは思いますけど。
そのマディソン・スクエア・ガーデンのコンサートはToshIさんの中ではどういった位置付けでしょう。
ToshI 実は前回の横浜アリーナのコンサートが、今までのすべてのコンサートの中で一番ハツラツとできたんですね、自分の中で。何かアマチュア時代に初めてライブハウスでやるような、そんな気持ちで、ステージに立てて。そこがたまたま横浜アリーナだったっていう感覚だったんですけど。
何か……うれしそうです。(笑)
ToshI うれしかったですねー。その気持ちが続いてるので、今回も、一番最初にYOSHIKIと東京に出てきて、ライブハウスでやったころの、その時の続きみたいな感覚がありますね。場所(ホール)は全然違いますが、気持ち的にはその時と同じで、とりあえず楽しもうって。なんだか分かんないけど、とりあえずやるぞ、みたいな(笑)。うん、そんな感覚ですね。
YOSHIKI 高校の文化祭みたいな。(笑)
ToshI そう! 文化祭の時の気持ちなんです(笑)。だから、楽しみな気持ちの方が強いですね。
YOSHIKI やっぱりバンドってずっとやってると途中からどこまでが仕事で、何のためにやってるか、分からなくなっちゃう時があるんですね。でも、やっぱり、子供のころに音楽を聴いて、感動して、ロックミュージシャンになりたい! みたいな気持ちってあるじゃないですか。その新鮮な気持ちが最近また新たに実感できるようになってるんですね。長年やってると「仕事としてこなしてる」みたいな感じになっちゃってる人もいると思うんですよ。自分たちもそういう時期があったかもしれない。でも、最近また、音楽ができることに気持ちが高ぶって、感謝しつつ、うれしさがまた出てくるようになったんですね。
お二人の話を聞いているとビッグになったことより、出会ったころのまま音楽を楽しまれていて、で、高校の文化祭のノリでマディソン・スクエア・ガーデンまでやっちゃおうとされてる感じが…。
一同 (笑)
ToshI 確かにそうかも(笑)。感覚は同じって言えば、同じ。
YOSHIKI 中学の文化祭もあったよね。
ToshI あった、あった(笑)。あの時も…。
(※ 二人だけで学生時代に戻り、楽しそうに盛り上がっている)
(完全に忘れられてるので、さえぎるように) あの〜(笑)、今回、日本からもたくさんのファンがこのコンサートのために海を渡ってくると思うのですが。
YOSHIKI そうですね。僕たちがいろんな国に出て行っている時に、日本でそうやって応援していただけるのは何より心強いですねー。日本の方に限らず、アジアの方であったり、ヨーロッパの方であったり、今回のアメリカのコンサートにいろんな国の方から、応援に行きますって言葉をいただいて。(場所は)ニューヨークのイベントではあるんですけれど、自分たちとしては世界の人を巻き込んでのイベントだと。X JAPANとしての新たな第1弾として、“世界のイベント”だと思うんですね。
ToshI 活動していなかった時期が10年くらいあったんですけれども、その間に、X JAPANの音楽が世界中に広がっていって世界中のファンに支持していただいてる状況が、とても不思議に感じますね。前回のワールドツアーの時も世界中でこんなに自分たちの音楽を存在を受け入れてもらってるんだなって。だからこそ、今回はさらに大きな音楽の殿堂ともいえる会場で、また皆さんと一緒に分かち合えるのはやっぱり格別な思いがありますね。
YOSHIKI ……うん、やっぱり夢みたいだよね。活動してなかったこの10年間。(10年前に)まさか10年後にこんなにファンの方たちが世界中に現れるなんて想像もしてなかったし。
YOSHIKIさんにとってのToshIさん、ToshIさんにとってのYOSHIKIさんお互い、どういった存在でしょう。
YOSHIKI やはり、そのー…長いからね。長過ぎるっていうか(笑)。知り合って、もう40年以上ですよね。これはいろんなとこでいつも言ってますけど、僕のX JAPANの曲っていうのは、もう最初からToshIのイメージで書いてる。その楽曲の、それよりも先に、ToshIの声がどうやったら一番輝くのかっていうレンジも含めて、そこからスタートしてるので。全く違うボーカルだったとしたら、今までの曲は生まれてないんですね。ToshIがいたから、この曲が生まれてる。そういう意味でも自分の才能を引き出してくれた人でもあり、友人でもあり、パートナーでもあり、そしてこのX JAPANっていう化け物を作ってしまった人でもあると思うんです。(笑)
ToshI だからYOSHIKIが作る曲って、本当に、こう、大変なレコーディングが必要で、「ここまでやんなきゃいけないのかな」ってくらい厳しくて、当時は衝突したり、戸惑ったり、自信を失ったり。今、思えばYOSHIKIはそれくらい自分にも厳しく、アートを創造してきたんですよ。本当にいろんなことがあったんですけど、YOSHIKIもすごく苦しんだと思うんですけれど、それでも音楽に真摯(しんし)に向き合って、曲を生み出してきた。結果、時を超えて、国境を超えて、それは今、世界中の人の心に響いている。それを今になって感じますねー。
YOSHIKI 二十何年後に感じてる。(笑)
ToshI 25年後に(笑)やっぱりYOSHIKIのやり方は間違ってなかったんだなって感じます。ある意味、一番そばに、まぁ、そばにいなかった時期もあるんですが(笑)。一番そばで彼の人生と共に歩いてきたことは、とてもスペシャルな人生だったな、と。だって、彼を見てるだけで面白い(笑)。本当にちっちゃいころから一緒にいて、小学校のころに一緒にバンド始めて、で、今、こうなってる。僕は彼の一番のファンであり、また音楽を一緒に楽しめる一番の仲間であり…。でも、なんか、すべてを超えちゃってるので、言葉でなんて形容していいか分からないですね。こんな天才も、こんな努力する人もいないと思います。人間としても男としても尊敬してますね。
ToshIさんは昨日ニューヨークに到着されたそうですが、この街の印象はいかがでしょう。
ToshI 僕、最初に海外に一人で来たのがニューヨークだったんです。割と好きでプライベートでも何度か来てるんですね。
YOSHIKIさんからToshIさんにこの街のお勧めのスポットを教えるとしたら、どこでしょう。
YOSHIKI 公園とかいいんじゃない? セントラルパークで犬の散歩とか。(笑)
ToshI 犬の散歩ねー。(笑)
YOSHIKI あとは、マディソン・スクエア・ガーデンでも行ってみよっか?
行ってみよっか(笑)。本番の会場です。(笑)
YOSHIKI バスケットボール見に!
ToshI あ。いいね! ホッケーとか!
いや、下見に行ってください(笑)。前回のインタビュー時、YOSHIKIさんはロスよりニューヨークの方が好きだとおっしゃって、ちょっとうれしかったのですが。(笑)
YOSHIKI そうですねー。そこは間違いないですね。やっぱり“歩ける”っていうのがいいですね。
西海岸はどこに移動するにもクルマに乗らなきゃいけないですものね。それではお二人にとって「大好きな街」って書いてもよろしいでしょうか。
ToshI もちろん、もちろん。
YOSHIKI はぁー(タメ息)、なんで、僕はロスに住んでいるんだろう…。
一同 (笑)
さすがにそれは書けないです。(笑)
ToshI でも、前から言ってるよね、それ。(笑)
YOSHIKI もちろん、ロスはロスで大好きな街ですよ。(笑)
最後に、今回のコンサート、会場に来たファンには何を伝えたいでしょう。
ToshI 前回の横浜で久しぶりにファンのエネルギーと、僕たちのエネルギーが交わった時の、なんとも言えない高揚感とエネルギッシュなパワーを感じられたんですね。それが明日への糧につながるというか。やっぱりファンはすごく心強いなと。その時間を今回は世界の中心で、世界中から集まってきた方と共有して、さらにパワフルになれたらなぁと思っています。
YOSHIKI やっぱりToshIの言う通り、ファンの方のエネルギーはX JAPANのコンサートに欠かせない物で、彼ら、彼女たちに支えられたから今の自分たちがいると思うんです。同時に、世界っていろいろな情勢の中、いろいろな問題があると思うんですけれど、ただX JAPANのコンサートに限っては、国境も人種も世代も超えられるっていうことを証明したいんですね。それを、事実として示す、そんなコンサートにしたいなと思っています。
X JAPAN 職業:ロックバンド
1982年、当時高校生だったYOSHIKIとToshIを中心にバンドを結成。インディーズで絶大な人気を誇り、89年にXとしてメジャーデビュー。攻撃的なメタルナンバーとドラマチックなバラードの双方に定評があり、ビジュアル系バンドの先駆者的存在としても認知されている。92年にX JAPANに改名。同年8月に全米デビュー会見をMSGで行う。97年9月に解散したが、10年後に再結成した。先日、神奈川・横浜アリーナで4年ぶりとなる国内ワンマンライブ開催、ニューヨークでのライブも4年ぶりとなる。メンバーは、YOSHIKI(Dr, Piano)、ToshI(Vo)、PATA(G)、HEATH(B)、SUGIZO(G, Violin)。公式サイト:www.xjapanmusic.com
〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。
(2014年10月11日号掲載)
(撮影・鈴木貴浩)