【独占インタビュー】YOSHIKI

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BOUT. 319

作詞家、作曲家アーティスト YOSHIKIに聞く

音楽に身を捧げてきて、間違いなかった

チャイニーズ・シアターに手形と足形を刻む

ハリウッドを象徴するTCLチャイニーズ・シアター(ロサンゼルス)に、自身の手形・足形を刻んだYOSHIKIさん。30年間にわたり、最前線で世界に挑戦し続け、アーティストとしてはもちろんのこと、映画やファッションなどの分野でも続々と功績を残し、さらに慈善活動にも継続的に取り組んできた。「影響力のあるミュージシャン、作曲家の1人」に選出され、日本人として初の快挙を成し遂げたYOSHIKIさんに、今の気持ち、そして、今後についてお話を伺った。 (聞き手・高橋克明)

YOSHIKIさんの名前、手形、足形の順に型が取られ、ドラムスティックが埋め込まれた=9月14日(提供写真)

YOSHIKIさんの名前、手形、足形の順に型が取られ、ドラムスティックが埋め込まれた=9月14日(提供写真)

今回ハリウッドの(TCL)チャイニーズ・シアターに手形と足形が刻まれました。100年の歴史の中、日本人として初の快挙です!

YOSHIKI セレモニー自体が、アメリカの地上波で流れたみたいで、何十年もお会いしてなかった人とかいろいろな方からメッセージが来て、反響の大きさを実感しましたね。やっぱり凄(すご)いことだったんだなって。

よくある(ハリウッド)ウオーク・オブ・フェームではなく手形・足形は米国暮らしの僕たちにはどれだけ凄いことなのか分かるのですが、日本の報道の仕方だとひょっとして、その凄さが、日本の人には伝わっていないのかと心配になりました。

YOSHIKI (お話を頂いた時は)世界中を飛び回っている最中だったので、当日の朝にスピーチを考えたんですけど(笑)、(セレモニー)最中にその凄さを実感できた感じですね。

実際に手形を押しつけた瞬間、何を考えてらっしゃいましたか。

YOSHIKI 一つは、なぜ僕がこんな栄誉あることに選ばれたんだろうって、自分なんかね、そこまでの偉業を成し遂げたわけでもないのに、ちょっと恐縮っていう気持ちがありました。もう一つは、やっぱり僕は音楽でもロックとか、クラシックとかやってきて、いろんなところでいつも賛否両論を起こしてきたのだけれど、でもそのエンターテインメントとアートの中に自分という身を捧(ささ)げてきた…そこは間違ってなかったんだなって思えましたね。その二つの思いが同時に頭の中で駆け巡っていました。

日本人で、あの場所に手形を残せる人間がいるとしたら、僕はYOSHIKIさん以外思いつきませんでした。セレモニーは米ABCテレビでトップニュースにまでなりました。今回のチャイニーズ・シアターで、米メディアの対応はその前と後で変わりましたか。

YOSHIKI まぁ、正直変わりました(笑)。やはり今までは、何をやっても僕は“日本のロックスター”という肩書、そこから超えられなかった。だけど今回、そこに名を刻んだアーティストとして呼ばれるようになりました。

こちらのニュースでは「マイケル・ジャクソン、プリンス、レッド・ツェッペリンらを1人にまとめたような人だ」と報道されました。もう「日本のロックスター」ではないですよね。今回、僕もYOSHIKIさんとのインタビューが8度目なのですが、慣れるどころか回数を重ねるたび余計緊張するようになりました。(笑)

YOSHIKI いやいや(笑)。でも、今回の評価で逆にこれからのプレッシャーは大きいですね。何年後に、やっぱりそれに値することを成し遂げなきゃいけないんだなっていう目標ができたし、またそれに背中を押される気分ですね。

何かを成し遂げては、また何か新たなことに挑戦する。その歴史をXファンならびに、YOSHIKIファンはもう何十年と見続けてきました。同時にその命懸けな生き方に、YOSHIKIさんの体や心を心配するファンも多くいます。

YOSHIKI 自分でも心配です(笑)。自分でもどこかで倒れるんじゃないか、みたいな。何かをクリアするたび、もっと必死に生きてる気がしますね。

何かを成し遂げるのがゴールではなく、YOSHIKIさんの場合は、そこからまた新たな何かに挑戦していく。

YOSHIKI そうですねー…。毎日、弱い自分との戦い…ですね。今まで以上に必死で、1日1日を生きる…それしか考えてないですね。

スピーチでは、ファンへの感謝とお母さんへの思いを伝えていました。その二つの思いがYOSHIKIさんを形作っていっている気がします。

YOSHIKI 今回ね、これから始まる世界ツアーのタイトルが「レクイエム」なんですけど、ちょうど去年、母が亡くなった時に、このツアーの話も頂いて。最初は(ツアーすることが)無理だと思ったんですね。母を亡くしたことがこんなにつらいことなのかって、自分でもびっくりするくらいでして。正直、涙が止まらない日々が続いて、お医者さんにも行きました。なんとかしてくださいって。
そんな日々の中で、僕は音楽家なんで、作曲を始めて「レクイエム」って曲を作ったんですけど、その楽曲を作っていく中で少しずつ、何て言うのかな…前向きになれてきた…ということは、この曲って自分以外の誰かにも力になれるんじゃないかって。だったら、この楽曲を演奏する世界ツアーを決行しようって。そう判断した時、この曲のタイトルが今回の(ツアー自体の)タイトルにもなりました。
母が亡くなってしまったところから始まって、また新たな挑戦が始まった。なので、もう精いっぱい生きるしかないのかなって。あの時点でギブアップするってチョイスも自分中であったわけですから。ここまでだったんだなって。

ギブアップの選択肢をチョイスしなかった結果に、今がある、と。

YOSHIKI そう。もう一度残された人生というか…ね。頑張ってみようって。なので、次のツアーは今までのコンサートとは、ちょっと意気込みが違いますね。

90年代から挑戦してきた北米での音楽活動、今振り返ると長かったですか、それとも…。

YOSHIKI 長かったですね、うん。もう、30年ぐらいかな。日本に帰ろうと思ったことは、何回も、何回もあって。
やはりいろんな意味で日本ってね、良い国というか、住みやすい。アメリカという、荒波の中にずっともまれ続けて、よく溺れずにここまで来れたなとは思います。もう、いつ溺れてもおかしくなかったって瞬間ってたくさんあったし、それでも、もがいて、もがいてこれたのは、このまま死ねないって気持ちだけだったのかなって。最初(渡米した時は)世界っていう壮大な海のアメリカ(のミュージックシーン)を、優雅に泳ぐんだくらいの、そういう気持ちだったのだと思うんです。でも(現実は)結局、1日1日を必死だったと…今もそうですけど、それをずっと続けてきた感じですね。

多くのメディアを前に流ちょうな英語でスピーチするYOSHIKIさん=9月14日(提供写真)

多くのメディアを前に流ちょうな英語でスピーチするYOSHIKIさん=9月14日(提供写真)

いよいよ10月からの世界各国の名所でのクラシカルコンサートツアー、意気込みは。

YOSHIKI そうですね、なんていうのかな…やっぱり…芸術家としての人生をまっとうするっていうことが僕の中では一番最初にあって。最高の芸術を届けるっていう…その過程の中で、自分が本当に駄目になっちゃってもいいんじゃないかっていう…そんなこと言っちゃいけないんですけど…でも、そのくらいの気持ちでやってます。
今回、クラシックっていうくくりのコンサートではあるんですが、チャイニーズ・シアターの手形をした後に、すごく自分を冷静に見つめることができて。このYOSHIKIという人間が構成される過程って、やっぱりロックがあって、クラシックがあって、人生自体にも波乱万丈があったからだろうなって。その全てを今回のコンサートで表現すべきなんだろうなって思ったんです。なので、思いっきりロックのエレメントを今回取り入れようと。どのように評価されるか分からないですけど、今までのロックコンサート、クラシックコンサート含めて一番チャレンジングなコンサートになると思います。正当に評価されたら、歴史に名を残すかもしれない。(逆に)よくない評価になるかもしれない。場合によれば、酷評される可能性もある。でも、そういうチャレンジをしたい、しようと思っています。

チャイニーズ・シアターに名前を連ねた直後に、また人生最大の勝負をされる、YOSHIKIさんにシビれます。

YOSHIKI やっぱり人生挑戦し続けるしかないかなって。芸術家に限らないだろうけど、多分……僕は、息を引き取るその瞬間まで挑戦してると思います。苦しみってね、味わった部分だけ、逆に人を幸せにすることができるっていう…ちょっとうまく説明できないけど、そういうふうに考えちゃうタイプなので、僕はその苦しみを芸術に変えて、それを無駄にしたくない。苦しい境遇にあるんだったら、それでも頑張って生き延びるのは、すごく前に向かって歩く人たちの救いになると思ってます。

型取りを終え、集まった人々にピースサインで答えるYOSHIKIさん=9月14日(提供写真)

型取りを終え、集まった人々にピースサインで答えるYOSHIKIさん=9月14日(提供写真)

YOSHIKI 作詞家、作曲家、「X JAPAN」「THE LAST ROCKSTARS」リーダーとしてピアノ、ドラムを担当。
これまでに天皇陛下御即位十年記念式典の奉祝曲、愛知万博公式イメージソング、ハリウッド映画のテーマソング、そして世界最高峰の米ゴールデングローブ賞公式テーマソングを作曲するなどグローバルに活動。YOSHIKI率いるX JAPANは、これまでアルバム・シングル合わせ3000万枚を超える売上げを誇り、5万5000人収容の東京ドームを18回ソールドアウトにした記録を持つ伝説のバンド。2014年に米ロックの殿堂マディソン・スクエア・ガーデン公演、17年に英ロックの殿堂ウェンブリー・アリーナ公演を成功させ、米クラシックの殿堂カーネギーホールでの単独公演と合わせ、アジア人として初めて音楽の三大殿堂を制覇。
音楽活動以外にも、自身が立ち上げた着物ブランド「YOSHIKIMONO」のデザイナーや、日本人男性として初めて「VOGUE JAPAN」の表紙を飾るなど、ファッションアイコンとしての顔も持ち、21年には、仏バカラのアルクール・グラス180周年を記念したデザイナーに抜擢されるなど、活動は多岐にわたる。また、米国“501⒞⑶”非営利公益法人Yoshiki Foundation Americaを設立し、長きにわたり慈善活動に力を入れている。そして22年、YOSHIKIは日本コカ・コーラとタッグを組み、エナジードリンク「リアルゴールドX」「リアルゴールドY」を発売した。

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公式サイト:jp.yoshiki.net/(日本語)
インスタグラム:@yoshikiofficial
X(旧:ツイッター):@yoshikiofficial

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クラシカルワールドツアー
「YOSHIKI CLASSICAL 10th Anniversary World Tour with Orchestra 2023 ‘REQUIEM’」

〈ロサンゼルス・ドルビーシアター公演〉
・会場:ドルビーシアター
・日程:2023年10月20日(金)
・チケットリンク:www.ticketmaster.com/event/09005EABD2E95718

〈ニューヨーク・カーネギーホール公演〉
・会場:カーネギーホール
スターン・オーディトリウム/ペレルマン・ステージ
・日程:2023年10月28日(土)
・チケットリンク:www.carnegiehall.org/calendar/2023/10/28/yoshiki-classical-0800pm

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〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「ニューヨーク Biz!」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、1000人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

(2023年10月7日号掲載)

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