在米邦人・日系企業を中心に
さまざまな通信サービスを提供
個々の要望や状況にきちんと応える体制に
スマートフォン(多機能携帯電話)やタブレット端末の台頭など、めまぐるしく変化する通信業界。在米日本人・日系企業を中心に、携帯電話サービス「KDDIモバイル」をはじめ、さまざまな通信サービスを提供するKDDIアメリカの中西雅昭社長に通信業界の変遷、そして同社の展望などについてお話を伺った。
◇ ◇ ◇
―御社について教えてくだい。
中西社長 弊社では、携帯電話事業をはじめ固定電話やインターネット、企業向けにはデータセンターやアプリケーション、ネットワークサービスなど、国内・国外でのあらゆる通信事業を行っております。
ご存知の通り、KDDIは国際電電(KDD)、第二電電(DDI)、日本移動通信(IDO)が合併して生まれた会社で、KDDI発足後もパワードコムやツーカーグループなどこれまでに合計約20社と合併し、多くの異なる会社、異文化の人々による集合体です。それゆえ、常にオープンであるべきという社風の下、ビジネスを展開しております。
―新入社員のころに比べると、通信業界は大きく変わりましたか。
中西社長 非常に大きく変化しております。私が入社した時には固定通信しかありませんでしたが、それが独占から競争へと移行し、さらには移動体通信、続いてインターネットが加わり…と激動の30年でしたね。今では日米間の固定電話の通信料金は10円にも満たない非常に安い料金でかけられますが、私が入社した頃は、1分間の国際電話料金は1080円、指名通話は5400円。当時は国内・国際とも1社独占でしたし、当然光ケーブルではなく、大陸間に銅線を引いてつないでいましたからネットワークも非常に限られており貴重だったわけです。
電話機自体も変わりましたね。現代の子供たちにとって電話機とは“ボタンを押す”ものでしょうけど、私たちの時代は“ダイヤルを回す”もので、かつ昔は個人では購入できませんでしたからね。 携帯電話においては、存在すらしなかったものが誕生し、広く一般社会に受け入れられ、結果的には固定の電話に変わる存在として生活基盤に根付いていきました。
現在、日本の携帯電話契約者数は人口を上回る約1億3000万件。単純計算すると“一家に1台”ではなく“一人に1台”ですよね。いろんな携帯電話会社が次々と新しいもの、便利なもの、安いものを世に送り出した結果であり、まさに競争社会の成せる技だと思います。
―今後の携帯電話市場の動向は。
中西社長 高度な機能の搭載、軽量化、処理能力向上が進むにつれ、当然バッテリー消費量も増えます。携帯電話の進化において、次に課題となってくるのはバッテリー能力でしょう。それを追随して開発されたのが、現在弊社から発売中のスマートフォンGalaxy S Ⅱ(正式名称:Samsung Galaxy S™ Ⅱ, Epic™ 4G Touch)です。4G(第4世代移動通信)対応で大画面搭載、高い処理能力であるにもかかわらず、従来端末より長時間利用可能(当社比)となるなど、非常に優れています。また、世間ではアップル社のiPhone(アイフォーン)がそのブランド力で高いシェアを占めていますが、Galaxy S Ⅱもその高機能性とともに高いブランド力、市場支配力に期待しています。
またこの先、防塵(ぼうじん)や防滴、防水、耐衝撃など、利用者のニーズに合わせた性能を装備したもの、そしてセキュリティー強化が進められるでしょう。個人情報や企業情報の漏洩防止、さらには日本のほとんどの携帯電話にはATMカードや定期券、入館証などに代わる機能が装備されており、それらに対するセキュリティー対策が急務となっております。
―KDDIアメリカの今後の展望は。
中西社長 携帯電話サービスをはじめ、全ての通信サービス・サポートにおいて、お客さまのニーズに合ったものを提供することが私たちのビジョンです。渡米後すぐに電話が使えるか、短期滞在者向けの携帯電話プラン、対企業においては日本と同じサービスをこちらでも提供できるかなど、さまざまな課題が挙げられます。日本でごく普通に行っていることを海外でも同様に提供するのは意外と難しいことですし、当然トラブルも起こり得ますが、個々の要望や状況にきちんと応え、対処できる体制でいなければいけない、そういう会社にしたいと思っています。
なかにし まさあき 山口県出身。KDD入社後、英国赴任中にKDDIが発足し、KDDIヨーロッパ社長に就任。帰国後は、KDDI本社のグローバル事業本部(旧グローバルICT本部)本部長として、主に海外への事業展開や投資などに携わる。2011年10月、KDDIアメリカ代表取締社長に就任。趣味はゴルフとドライブ。
(「WEEKLY Biz」2012年5月5日号掲載)