オーガニックコットンの「風で織るタオル」が日本国内外で高い注目
人、大地…全てが喜ぶ商品作りを
1953年、タオル産地で名高い愛媛県今治市に生まれ、タオルメーカーとして先進的かつ独創的な発展を遂げてきた「池内タオル株式会社」。2002年、米国最大規模の生活用品展示会「ホーム・テキスタイルショー」で、自社ブランドタオル「IKT」が日本製品で初の最優秀賞を獲得。風力発電100%で製造された、オーガニックコットンの「風で織るタオル」が国内外で高い注目を集めている。創立60周年を期に、3月1日より社名を「池内タオル株式会社」から「IKEUCHI ORGANIC株式会社」へと変更し、さらなる躍進に向けて歩みを進める同社の展望について、代表取締役社長の池内計司氏に伺った。
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―新社名「IKEUCHI ORGANIC」に懸ける思いをお聞かせください。
池内社長 私たちは「最大限の安心と最小限の環境負荷」を理念に掲げ、世界で最もピュアなタオル作りを目指してきました。使用するオーガニックコットンは、最も基準の厳しいエコテックス・クラス1の認定。これは、赤ちゃんが口に含んでも安全という業界最高レベルの水準です。通常の綿花栽培では大量の農薬や枯れ葉剤が使用され、生産者はもちろん農地周辺の住民、大気や土壌、動植物にも悪影響を及ぼしています。弊社ではこれを問題視し、生産畑だけでなく綿糸に紡績される段階まで厳しい環境負荷検査をクリアしたオーガニックコットンのみを使用する姿勢を貫いてきました。
そして創立60周年を迎えたのを期に、弊社は「タオルメーカー」から「オーガニック専業メーカー」へと変革を遂げ、日本の素晴らしい商品や、環境に対する考え方を、世界へ発信する企業として生まれ変わります。手掛ける商品は、タオルだけでなく、オーガニックコットンを用いたシーツや生活雑貨、ニット、ベビー用品など、テキスタイル全般。これまでは全商品のうち92%がオーガニックコットンを利用した商品でしたが、1日からは100%に。新社名である「IKEUCHI ORGANIC」には、地球環境との調和を目指して歩む、次なる60年への意志が込められています。
―2月3日、御社初の「2014年新作発表会」の開催地として、ニューヨークを選ばれた理由は?
池内社長 今治市のいちタオルメーカーであった私たちが、国内外で飛躍するきっかけとなったのは、ニューヨークで開催された「ホーム・テキスタイルショー」での受賞でした。世界32カ国、約1000社の中から最優秀賞を受けたこの地は、弊社にとって思い入れのある場所であり、第2の原点とも考えています。
実は同賞を受賞する前、弊社のタオルは日本でありがちな、デザイン過多なものでした。しかし米国では、タオルは生活の一部であり「空気のようにシンプル」であるべきものなのです。ここからアイデアを受け、「色の種類は幅広くとも、柄はシンプルで、10年後の買い替え時にも同じものがある」というコンセプトで持続的な商品を開発しました。見かけのデザインだけを変えて安易に新商品とうたうことはせず、品質向上の努力をし続けながらも、良いものはずっと作り続ける。この姿勢が顧客ニーズにマッチし、弊社の成長を大きく後押ししました。
ニューヨークは、私たちにたくさんのチャンスを与えてくれた街。ですから、「新たなスタートはここから」と決めていたのです。
―新作商品について教えてください。
池内社長 毎年、予約開始後すぐに完売になる人気商品が、「コットンヌーボー」シリーズです。自然な環境で育てられたオーガニックコットンは、天候や条件により、その風合いや肌触りに違いが出ます。生きた植物だからこそ生まれる年ごとの違いを、ワインのように楽しめるのが同商品。米国の優れたテレビ作品に贈られる「エミー賞」受賞者への副賞として採用されるなど、米国でも注目度は上昇中です。「コットンヌーボー2014」は既に予約が開始され、3月下旬に配送予定です。
米国在住の画家、藤田理麻さんとのコラボレーション商品の新作“ハピネス”と“フリーダム”は、鮮やかな色合いが美しい品です。ほか、バスマットやシーツ、タオルケットなど、今まで弊社が扱っていなかった分野での新商品も発表。今後も、オーガニックを軸とした多様な商品作りに挑戦していきます。
―今後の展望をお聞かせください。
池内社長 私たちの商品や考え方に触れることのできる直営店を、日本をはじめ、世界中でオープンさせていく予定です。その皮切りとして今年3月18日、東京都南青山に弊社初のフラッグシップストアがオープン。店内には、実際に手を洗い、弊社のタオルで手をふきながら、その使い心地や洗濯後の風合いを確認できるスペースが用意されています。また、現在ニューヨークにはショールームがありますが、主にバイヤーや専門店などの法人向け。今後は、個人のお客さまが気軽に入れる直営店の展開を計画しています。
商品については「赤ちゃんが口に含んでも安全」という基準をクリアした私たちですが、そこで満足するつもりはありません。今後はさらに技術を進化させ、「食べても安全な商品」を作りたい。使う人はもちろん、オーガニックコットンを育む人々や大地、全てが喜ぶ商品作りを次の60年、よりシャープに、ブレることなく続けていきます。
〈プロフィル〉 池内計司(いけうち・けいし) 1949年愛媛県今治市生まれ。一橋大学卒業後、松下電器産業(現パナソニック)に入社。83年、家業を引き継ぐため池内タオルに入社し、第2代代表取締役社長に就任。環境問題への関心は高く、98年にはタオル業界で初めて環境マネジメント規格ISO 14000を取得。100%風力発電での操業を行い、昨年6月には国連グローバル・コンパクトの「WindMade」認証を日本企業として初めて取得するなど、再生可能エネルギーの普及にも注力している。〈ウェブ〉www.ikeuchitowel.com/
(「WEEKLY Biz」2014年3月8日号掲載)