合成ゴムや化学品の輸出入を通じて
米国のものづくりを支えてきた専門商社
新興国との拠点間ビジネスや中南米での販売網づくりに注力
世界各国に張り巡らされたネットワークを駆使して、売り手と買い手の間に立ち、「モノ」や「サービス」の商取引を推進する商社。メーカーによる海外生産の強化、新興国の輸出入拡大を背景に、昨今、その役割はますます重要になっている。今回お話を伺ったのは、米国に50年以上根を下ろし、合成ゴムや化学品の輸出入を通じてものづくりを支えてきた専門商社、Sanyo Corporation of Americaの新谷正伸社長。めまぐるしく変化する北米・中南米マーケットにおける、今後のビジネスの展望を語っていただいた。
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―御社の事業について教えてください。
新谷社長 弊社は、日本で65年の歴史を持つ「三洋貿易(株)」の米国現地法人として、1961年に設立された商社です。合成ゴムや化学品を中心に商取引を行い、専門分野での実績と信頼を築いてきました。化学品、と一口に申し上げてもその種類はさまざまですが、私たちが扱う商品の多くは、身近な暮らしで利用されている素材です。例えば、オムツの素材として使用されている、吸水性ポリマー。この素材は、昨今のペットブームの中、ペット用シートにも使用され、衛生保持にも貢献し、光ケーブルの内部に組み込まれその止水性を上げるなど、幅広い用途を有しています。また、主力商品の一つである合成ゴムは、タイヤをはじめ、ホースやパッキンなど、主に自動車製造分野で使用されています。ほか、お菓子のパッケージに利用される汎用(はんよう)フィルム、クレジットカードの表面に使用される電気特性のよい特殊フィルムなどの商品を、日本を中心としたアジア地域から輸入し、米国の市場へと提供することが弊社の役割です。
―他社と比べた御社の強みは。
新谷社長 私たちはグループ全体で社員250人程度の、いわゆる中堅商社です。総合商社ほどの取り扱い規模の大きさはありませんが、その分、専門的な分野のプロフェッショナルとして、お客さまのニーズにきめ細やかに応えることが可能です。ウェブや電話でのコミュニケーションよりも、ダイレクトにお客さまと会ってお話しする「現場主義」を大切に、築き上げて来た50年以上の信頼が、私たちの大きな強みだと考えています。
また、弊社が総代理店として取り扱っているゴム材料には、石油由来だけでなく、天然ゴムを主原料とする特殊ゴムもあります。石油価格や供給量に大きく左右されることはなく、環境にやさしいので、今後も安定的に提供することが可能です。そういった主力商品の特殊性、将来性も強みとなっています。
―今後の展望をお聞かせください。
新谷社長 当グループは、日本本社の他、米国、中国、タイ、ベトナム、インドに拠点を展開しています。今後は日本本社との取引だけでなく、中国と米国、インドと米国…と、内需や輸出が増えている新興国における拠点間ビジネスも増やしていく計画です。また、ブラジルやメキシコなど、中南米での販売網づくりにも注力しています。現在、日系の自動車メーカーの多くがメキシコでの生産拠点を拡充させています。それに伴い、自動車系サプライヤーの進出も増加しているため、私たちがお手伝いできることは多いのではないかと考えています。中でも注力している商品が、プラスチックやゴムに柔軟性を加え、加工をしやすくする添加剤「可塑剤」と、吸油性では飛び抜けて優れているノルボルネン樹脂。需要の高い商品を中心に、さらなる拡販を進めていきます。
―仕事上で大切にしていることを、教えてください。
新谷社長 「やってみよう」と思う主体的な気持ちですね。思いがないと、人は行動に移せません。営業もしかり。ビジネスを生み出してやろう、という意欲さえあれば、後は方法論に行動を落とし込むだけです。だから私は常日頃、営業スタッフに「やりたいことをやりなさい」と話しています。始めに会社の利益ありき、では人は動き出せませんからね。それは、入社後30年間ずっと営業畑を歩んできた私自身が、一番理解しています。 また、経営者として大切にしたいことは、「地域に貢献する」ということです。特に現在注力しているのは、ローカルのスタッフをより多く採用し、その地域での雇用を促進すること。弊社の次なる成長が、地域社会の活性化につながることを目標に、今後もまい進して参ります。
しんたに まさのぶ 1977年東京都立立川高校卒業。82年に早稲田大学理工学部を卒業し、三洋貿易に入社する。91年にSanyo Corporation of Americaへ赴任し、セールスマネジャーとして6年間勤務。その後、タイ現地法人、日本本社での勤務を経て、2012年Sanyo Corporation of Americaの社長に就任。趣味は野球観戦とマラソン。ニューヨークマラソンやホノルルマラソンなど、数々の大会に参加実績を持つ。 座右の銘は「人事を尽くして天命を待つ」。 Eメール:bshintani@sanyocorp.com
(「WEEKLY Biz」2012年9月22日号掲載)