ロウアーマンハッタンのバッテリーパーク近くにあるユダヤ人遺産博物館(Museum of Jewish Heritage)では、8日から「アウシュビッツ─昔のことでも 遠くの話でもない─(Auschwitz. Not long ago. Not far away)」と題した特別展が開催されている。
ポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所が当時のソ連軍に解放されて74年後に初めて、収容所の歴史的意義にささげられたこの特別な展覧会が米国の人々に紹介される。オープニングの8日は第2次世界大戦の終結を祝った「ヨーロッパ戦勝記念日」である。強制連行されたユダヤ人らの日用品や衣服、思い出の写真などオリジナルの品が700点以上の展示されており、北米最大規模となる。
開催に先駆け、2日にはメディア向けに内覧会が開催され、報道陣で埋め尽くされた会場からはニューヨーカーの関心の高さがうかがわれた。
内覧会では、特別展チーフ・キュレーターのロバート・ジャン・ヴァン・ペルト氏らがスピーチ。アウシュビッツの記憶が風化しないよう警鐘を鳴らした。キュレーターだけでなく、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の生存者の遺族らにもインタビューする機会が与えられた。
特別展ではナチス・ドイツによるホロコーストの歴史が、第1次世界大戦前からさかのぼってたどれるようになっている。スーツケース、眼鏡、靴といったアウシュビッツ強制収容所の生存者や犠牲者の何百という個人的な遺品だけでなく、時代ごとの周辺地図や収容所の模型なども展示されており、これまで北米でのアウシュビッツに関する展示会で最も包括的なものとなっている。
生存者だけでなく、犠牲者をガス室に直接送り込んだSS(ナチス親衛隊)の証言ビデオや、当時のニュース映像も見ることができる。
日本の外交官・杉原千畝が数千人のユダヤ人を救うために発給した、「命のビザ」といわれる日本通過ビザも展示されている。
特別展は2020年1月3日まで。
●情報
Museum of Jewish Heritage– A Living Memorial to the Holocaust
【住所】Edmond J. Safra Plaza 36 Battery Place , NYC
【開館時間】(特別展示のために延長)
日─木 午前10時〜午後9時(午後7時までに入館)
金 午前10時〜午後5時(午後3時までに入館)
【入場料】(音声ガイド=英語、スペイン語、フランス語、ヘブライ語、北京語、ドイツ語、ポーランド語、ロシア語=利用料も含まれる)大人16ドル、学生10ドルなど(詳細はウェブ参照)
【ウェブ】https://mjhnyc.org/exhibitions/auschwitz/
(2019年5月11日号掲載)