セントラルパークの新装デラコルテ劇場を大解剖!

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現在、「Twelfth Night」を上演中

劇場の外観(Photo Jeff Goldberg/Esto)

劇場の外観

パブリック・シアターが運営するセントラルパークの新装デラコルテ・シアター(Delacorte Theater)は、1年半の改装工事を経て8月7日、シェイクスピア・イン・ザ・パークの『Twelfth Night(十二夜)』無料公演で再オープンしました。新しく生まれ変わったデラコルテ劇場を大解剖! 紹介します。

新装デラコルテ劇場のテープカットセレモニーの模様(photo credit : Rebecca J Michelson)

新装デラコルテ劇場のテープカットセレモニーの模様

テープカットのセレモニーで、パブリックの芸術監督、オスカー・ユースティス氏はデラコルテを「この劇場は“人々のための宮殿”、文化は皆のものであり、経済的障壁があってはならない」とスピーチしました。今回の改修は、アーティストと観客のためにアクセシビリティを改善し、スペースを近代化することに重点を置かれています。

観客席から照明ブース、楽屋に至るまで、スペースのあらゆる部分がバリアフリーになりました。そして、二つの新しいゲートがバリアフリーに対応し、ADA(米国障がい者法)席の数は2倍以上に増え、さらに、アーティストやクルーのためにスロープ、リフト、エレベーターも追加されました。

パブリックの前理事長、アリエル・テッパー氏は、「誰であろうと、どこの出身であろうと、生の演劇を観たことがなかろうと、デラコルテでは誰もが歓迎されていると感じられるようにすることです」と、「誰でも歓迎されていると感じる場所」を目指して設計されたと、セレモニーで劇場のコンセプトを伝えていました。

この改修は未来を見据えたものではありますが、最終的には、「シェイクスピアはみんなのものであるべきだ」という、シェイクスピア・イン・ザ・パークの創設者、故ジョー・パップ氏の遺志に寄り添い、無料公演を存続させることにこだわったとのことです。

「文化は皆のものであり、そのために5セントたりとも徴収し、経済的な障壁を設けることは、文化は皆のものであるというシェイクスピア・フェスティバルの基本的な考え方に根本的に反することになる」とユースティス氏は話しています。

デラコルテ劇場は1962年6月18日、パップとグラディス・ヴォーンが演出した『ヴェニスの商人』でセントラルパークに正式にオープン。それ以来、デラコルテでは150以上の作品が無料で上演され、ジェームズ・アール・ジョーンズ(1964年『オセロ』)、メリル・ストリープ(78年『The Taming of the Shrew』)、デンゼル・ワシントン(90年『リチャード三世』)、アン・ハサウェイ(2009年『十二夜』)、アル・パチーノ(10年『ヴェニスの商人』)などのスターが出演してきました。

現在『Twelfth Night(十二夜)』が、ジェシー・タイラー・ファーガソン、ピーター・ディンクレイジ、ルピタ・ニョンゴらが出演し、9月14日まで上演しています。

『Twelfth Night(十二夜)」劇中シーン(photo Joan Marcus)

『Twelfth Night(十二夜)」劇中シーン

『Twelfth Night(十二夜)』あらすじ

双子の兄妹セバスチャン(Junior Nyong’o)とヴァイオラ(Lupita Nyong’o)は、船旅の途中で嵐に遭い、それぞれ別の場所で救助されます。ヴァイオラは兄が溺死したと思い込み、男装して「シーザリオ」という名でイリリア侯爵オーシーノ(Khris Davis)に仕えることに。オーシーノはオリヴィア(Sandra Oh)という若き未亡人に恋しており、ヴァイオラ(シーザリオ)はその恋文の仲介役として彼女のもとへ通います。ところがオリヴィアは、男装したヴァイオラに一目ぼれしてしまい…。
(上演時間:115分、休憩なし)

『Twelfth Night』を上演中の座席の様子(Courtesy of Public Theater)

『Twelfth Night』を上演中の座席の様子

 

◉無料チケット取得方法

シェイクスピア・イン・ザ・パークの無料チケットは、デラコルテ・シアターでの対面抽選、TodayTixアプリでのデジタル抽選、パブリック・シアターでの対面抽選、自治体配布など、さまざまな方法で入手できます。開演前の未使用チケットのスタンバイラインも用意されています。各公演日にセントラルパークのデラコルテ劇場の無料チケット列で配布されます。無料チケットを受け取るには、パブリック・シアターのパトロンIDが必要です。(publictheater.org/login)にアクセスして、事前にIDを作成または確認することをお勧めします。

 

デラコルテ・シアター再オープンの概要

リニューアルオープン日:2025年8月7日(『十二夜』無料公演の初日)
改修期間:1年半
改修費用:約4200万ドル(主にニューヨーク市の支援による)
運営:パブリック・シアター(The Public Theater)

★改修のポイント

(1)アクセシビリティの向上

  • ADA対応の座席数が2倍以上に
  • 新設されたスロープ・リフト・エレベーター
  • バリアフリーのゲートや照明ブース・楽屋

(2)素材の刷新とデザイン性

  • グレーのサイディングを廃し、再生レッドウッド材を使用
  • 廃水塔からの再利用材で環境にも配慮
  • 木の香りと温もりを感じる空間に

(3)観客体験の改善

  • 女性用トイレの数を倍増(混雑緩和)
  • 全体的に快適さと機能性が向上

(2025年8月16日号掲載)

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