笑ってもらえることが僕にとって一番の幸せ
「ダックマン」 と称した黄色の着ぐるみでバケツのドラムを叩く日本人のパフォー マー、中村鷹人(なかむら・たかひと)さん。 世界を巡る大道芸人としてオーストラリアから出発し、 カナダを経て、ニューヨークにたどり着いた。 タイムズスクエア駅構内で、金・土・ 日曜の午後4時から8時までは確実に演奏している。
巡業のきっかけは3年前。 日本からワーキングホリデーでオーストラリアを訪れたものの留学 センターに貯金を全て吸い取られ、ホームレス状態に。「 このまま死ぬなら、せめてひと花咲かせてやろう」と、 廃材バケツを利用したドラムを叩き始める。
路上以外に老人ホームや小学校でのイベントも行い、 俳優やユーチューバーとしても活動する。オーストラリアでは、 活動がドキュメンタリー映画(https://youtu. be/5OYw__05VL8)として上映されているという。
中村さんの思いは、壮絶な生い立ちにも関係する。 生まれてすぐに母親に捨てられ、施設で育った。 3歳でいったん母親に引き取られるが激しい虐待を受ける。 父親は多額の借金をかかえ自殺。 2人の妹も生まれて1年経たずに亡くなった。 12歳から働き始め、20歳になって「 あとはもう自分で育ってくれ」と言う母と正式に決別する。
「僕みたいに底辺にいた人間が頑張ることによって、 元気をもらえる人がいるのではと思ったんです」と語る笑顔に、 痛々しさはない。
その後は、一度カナダに戻り、ドイツ、オランダ、 ロンドンを巡る予定だ。 最終的にはアジアの貧しい国に行きたいという。「人と会って、 笑ってもらえることが僕にとって一番の幸せなんです」と、 エンターテイナーとしての表情を見せた。
(2018年10月20日号掲載)
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