東京五輪を目前に、独自の商品アイデアとデザインで勝負をかけるブランド「J─Kanji」。日本の漢字文化を世界に広めることをコンセプトに、千社札や印鑑をはじめとするユニークな雑貨などを企画・販売し、日本の観光地などで存在感を増している。前回=1月25日号掲載=は同社の事業概略や日本での展開を紹介したが、今号では米国での戦略について話を聞いた。
英語名の“漢字印鑑”米国7店舗で展開
J─Kanjiの海外戦略について「株式会社ZEN」(代表取締役・吉田啓資氏)のブランド責任者・片桐英晃氏に尋ねると「正直、未知数な部分が多い。まずは反響を見て、中期的に戦略を組み立てているところです」と話す。同類の商品を海外展開で成功させているという事例が他社にもないため、手探りの状況のようだ。J─Kanjiは現在、「John」を「叙恩」など、英語名を漢字に当てた印鑑を、米国の紀伊國屋5店舗、そのほか含め合計7店舗で展開している。いずれもロサンゼルスやサンノゼ、シアトルといった西海岸が中心だ。未知数とは言ったものの、それら店舗では「かなり売れている」状況だという。
LAのジャパンフェア予想超えた盛況ぶり
海外戦略のもう一つの判断基準として参考となったのは、昨年10月にロサンゼルス・オレンジカウンティで行われた「OC JAPAN FAIR 2019」だ。日本のビジネス、文化、技術を広く浸透させることを目的に行われ、舞台イベントのほかに伝統文化体験やアニメ、飲食店など、約100のブースが出展した。10年続き、来場者は3日間で約3万2000人(過去最高)という規模のイベントだ。J─Kanjiは千社札や世界の国旗をモチーフに国名を漢字にしたマグネットやバッジ、50種類に及ぶステッカーなどを販売したが、想像以上に多くの人々が切れ目なく訪れたという。自社の調査によれば、ブースに訪れた人は2000人を超えたようだ。
ファッション性のあるTシャツも注目を浴びたが、断然人気を博したのはやはり千社札だった。自分用に買う以上に、家族や友人への大量購入も多かった。片桐氏は「ブースに群がる人々の様子を見て、(米国の人が)興味を持っていることが分かりました」と、手応えを感じたようだ。
約500種類の対応競合他社では「困難」
成功すればそれを追いかける競合他社も出てくるのではないか。その質問に片桐氏は「いや、誰もやりたくないと思いますよ。大変ですから」と首を振る。千社札は一つの売れる商品を大量生産すれば良いわけでなく、約500種類の名前の中から需要に応じて作らなければならない。かかるコストや手間は半端ないのだ。同社は前身も含め雑貨業20年の素地があるがゆえのなせる技のようだ(次回=3月28日号掲載=に続く)
■情報
【北米販売サイト】j-kanji.com/shop/
【北米問い合わせ先】〈電話〉212-997-0210〈Eメール〉info@weeklybiz.us