
作品を前に笑顔で撮影に応じる画家の河村武明TAKEさん=5月16日、ニューヨーク天理ギャラリー(撮影:森田)
脳梗塞を乗り越えNYに挑んだ夢の個展プロジェクト
絶望の淵から復活
ある日突然、言葉を失い、耳が聞こえず、利き手を動かせなくなった画家のTAKE(河村武明)さん。脳梗塞に倒れ、すべてを失ったのは34歳の時。しかし、深い絶望の淵から立ち上がり、自分の可能性を信じ続け24年。人生を賭けた思いを胸に、ニューヨークへの挑戦を決意。今年5月、同地では初となった個展「トビダスアート(~TOBIDASU ART~ Breaking Boundaries)」を実施した。
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1967年、徳島県阿南市生まれのTAKEさん。現在は日本全国で個展を開催し、650回にものぼる講演も行うなど精力的に活動している。全国に広がる支援者の協力もあり、ニューヨークでの夢の個展プロジェクトが実現した。

作品を鑑賞する来場者。一番奥の作品が「限界を超えて─TAKEと亀とニューヨークの奇跡─」=5月16日、ニューヨーク天理ギャラリー(撮影:森田)
挑戦する先に夢がかなう
NY個展オープニングレセプションでスピーチ
興奮しています。こんなすてきな会場で、ニューヨークで個展をできるとは。これも皆さんのおかげです。ありがとうございます。24年前、脳梗塞が発病して重い障害を頂き、それはそれは深い絶望でした。北野武さんの映画『HANABI』をきっかけに左手に筆を持って絵を描き始めました。自分もびっくりしました。左手で絵が描ける。絶望から希望になった時でした。この時からニューヨークで個展ができるって思わなかった。それから路上販売から挑戦する日々でした。高島屋の個展をいただき、そしてニューヨークの個展。挑戦する先に夢がかなうんですね。皆さんありがとうございます。今はまだ夢の途中です。ニューヨークでの個展開催が世界に進出するきっかけです。57歳で夢いっぱいのアホなおっさんでした。
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事前にTAKEさんが考えたスピーチを、一番近くでその挑戦を見て、共に歩んできた妻の育子さんが代読する形で伝えられた。
生き方を作品で表現
TAKEさんの代表的な作品テーマは「飛び出すアート」。枠から飛び出すアートは、TAKEさんが枠の中に収まらずに飛び出していこうという生き方そのものを表現したもの。
「電動ノコギリで切った木を継ぎ、枠から飛び出すさまは“常識破り”、“自分の枠を超えろ”という、自分の人生そのもの」という。空飛ぶ亀は、左手で絵を描き始めたTAKEさんの挑戦の始まりだった。
「自分の可能性を信じ、枠を飛び越えれば、亀は空を飛ぶ! 不可能はない」と、熱い思いをアートを通して世界に伝える。ニューヨークへの挑戦は、世界進出に本格的に動き出す一歩となった。

個展には大人から子供まで、日本からもファンが大勢訪れた=5月16日、ニューヨーク天理ギャラリー(撮影:森田)
■NYでの個展に向け製作した新作■

「障害という巨大な波を超えて:TAKEのトビダスアート」 画面全体を覆うようにトビダした巨大な波嶺は、北斎が描いた躍動感そのままに、円運動を描きながら、遥か彼方に見えるニューヨークの摩天楼へと迫る。その構図は、見る者の視線を自然と、自然の猛威の先に現れる巨大都市へと引き込む。相似形を描く四つの波は、山を思わせるニューヨークのビル群を中心に対峙し、荒々しい動きの中にも独特の遠近感と安定感を生み出している。

「龍が炎を受け取る:NYが喜びで飛び跳ねる!」 長きにわたりたいまつを掲げていた自由の女神は、そのたいまつを龍に託し、彼女と街は歓喜に包まれた

「限界を超えて─TAKEと亀とニューヨークの奇跡─」 空を飛ぶ亀という、現実にはありえない光景を描くことで、不可能を可能にするTAKEさんの生き方を表現している

「グローバル・ブルーム」 ニューヨークのエネルギーと創造性が凝縮された様子を丸いキャンバスを地球に見立てて表現。キャンバスから勢いよく飛び出すように描かれたニューヨークの高層ビル群は、この都市のダイナイズムと未来へ向かって成長し続ける力強さを象徴している。
■情報■
〈ウェブ〉「たけの世界」www.hyougensya-take.com/
〈ショッピングサイト〉「たけの世界」hyougensya.buyshop.jp/
(2025年6月14日号掲載)
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