〈ピープル〉ソプラノ歌手 田村麻子さん

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「歌っていいな、と思っていただけたら」

11月10日、NY倫理友の会総会で歌声披露

田村麻子
たむら・あさこ ソプラノ歌手
東京藝術大学大学院修士課程修了。ニューヨーク・マネス音楽院首席卒業。2002年「3大テノール・コンサート」(横浜)で日本代表ソプラノソロとしてドミンゴ、故パバロッティ、カレーラスと共演。07年ニューヨークのリンカーンセンターでデビュー、ニューヨーク・タイムズ紙から「輝くソプラノ」と高い評価を受けた。15年4月には米国大リーグのナショナルズに招聘(しょうへい)され、外国人歌手として初めて米国歌斉唱の栄誉を得る。ニューヨーク「メトロポリタン歌劇場管弦団」との共演、ロンドン「ロイヤルアルバートホール」での「蝶々夫人」の主役など、クラシック音楽に詳しくない人でも一度は聞いたことのある、世界の大舞台を飛び回り、活躍する音楽家。

ニューヨーク在住の田村麻子さん。世界の大舞台で活躍するソプラノ歌手だ。田村さんは11月10日に開催されるニューヨーク倫理友の会第16回年次総会にゲストアーティストとして登場し、その歌声を披露する。会の開催を前に本紙ではその思いを聞いた。

◇ ◇ ◇

田村さんは17歳で初めて見たイタリアオペラに衝撃を受け、歌の道に進んだ。イタリア留学を考えていたが、三大テノールの一人プラシド・ドミンゴ氏のコンクールで最年少かつ、日本で唯一のファイナリストとなった折、氏より米国行きを進められる。オペラはイタリアが産んだ伝統芸術なだけに、異国人を排除しようとするきらいがある。オペラの本場ではあるが、日本人が仕事をするには難しい状況だったのだ。

1998年にニューヨークに渡り、マネス音楽院を首席で卒業。これで海外でもやっていけると思ったが「学校では賞も取り奨学金ももらったけれど、大海に放り出されてみたら、お話にならないほどの競争で。日本人のソプラノなんていらない、ナニ言ってるの? という状況でした」

2年ほど何のオーディションも受からなかったが、ある日オペラ「椿姫」のオーディションで得意とするアリアを歌うと拍手喝采。審査員は田村さんを招き寄せると告げた。「本当に素晴らしかった。演出家が東洋人は取らないと言っているから採用できないけれど、でも頑張って」。コンクールなら1位でも、仕事のキャスティングではこれが現実。ショックで大泣きした。

それでも諦めずに、2003年1月、イタリアの歌劇場から小さな役が来た。これがイタリアでの劇場デビューとなり、そのまま数年間イタリアでオーディションと勉強の毎日を過ごす。オペラ「ルチア」の主役をルーマニアの劇場で務めたのち、ついにイタリアの劇場でイタリアのオペラ「ルチア」の主役を歌うチャンスが来た。この後、米国に戻ると、ここでもオーディションに受かり始めた。「ヨーロッパで活躍している歌手」として見てもらえるようになったのだ。今ではニューヨークを拠点に、世界各地を飛び回って活動している。

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当日は「いろいろな経緯があってこのニューヨークにいる日本人の皆さんにお会いできるだけで楽しみ」と話す。「日本の曲からオペラのアリアまでの欲張りなプログラムで、30分、最高の時間を楽しんでほしい。“歌”っていいな、と思っていただけたらうれしいです」(田村さん)

 

◇ニューヨーク倫理友の会 第16回年次総会
【日時】11月10日(木)午後6時開会
【講演】(社)倫理研究所理事長・丸山敏秋
【演奏】ソプラノ歌手 田村麻子
【会場】NYAC(NYアスレチッククラブ)10階
【会費】会員110ドル・非会員120ドル(共に食事・ワイン込み)
【問い合わせ】ニューヨーク倫理友の会事務局まで。
〈電話〉212-869-1922〈Eメール〉nyrinri2@hotmail.com

(2016年10月22日号掲載)

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