〈コラム〉「そうえん」オーナー 山口 政昭「医食同源」

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マクロビオティック・レストラン(1)

早いもので「そうえん」がオープンしてから、四十年が過ぎました。創業者のガイさんから引き継いでからでも、もうすぐ四十年になります。(ガイさんというのはあだなです。)「マンハッタンでは新しくオープンしたレストランの七十パーセントが三年以内に倒産する」といつか『ニューヨーク・タイムズ』に出ていましたが、それがほんとうだとすれば、四十年という月日は、ほとんど奇跡に近いといえるかもしれません。
私がアメリカに来た一九七一年は、ちょうどベトナム戦争の真っ最中で、のちにウォーターゲート事件で失脚するニクソンが、戦争終結を宣言して大統領に就任してから二年がたっていましたが、大統領の意図とは反対に戦争は拡大の一途をたどり、米国内では厭戦ムードが漂っていました。ウッドストック・フェスティバル(六十九年)に四十万人が集結したのも、それと無縁ではないでしょう。
千ドルのお金を持ってヨーロッパに行き、一日四、五ドルの予算で七か月間(二十か国)旅してくるのが翌七十二年、| |いまとは物価が違うとはいえ、三日に一度は野宿(二度は一泊一ドルから一ドル五十セントのユースホステル)、食事はスーパーマーケットで買ったパンと生人参とミルク、交通手段はヒッチハイク、といったように、これより下はないほどの貧乏旅行だったから、その後の人生に影響を与えないはずがない。
そのひとつが「マクロビオティック村」です。はじめは十エーカーくらいを考えていたのですが、いくつも物件を見ているうちに欲が出て、購入したときは一七一エーカー(東京ドーム十四個分)になっていました。しかも相手の言い値で買ってしまった。言い値の三十五万ドルより二十パーセントくらい低い値段でオファーしていれば、おそらく、その中間あたりでアクセプトされていたでしょう。買い物は、ほんとへたなんです。
(次回は5月5日号掲載)

〈プロフィル〉山口 政昭(やまぐち まさあき) 長崎大学経済学部卒業。「そうえん」オーナー。作家。著書に「時の歩みに錘をつけて」「アメリカの空」など。1971年に渡米。バスボーイ、皿洗いなどをしながら世界80カ国を放浪。

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