日本クリニック「医療の時間」第19診
皆さん、フルマラソンの時期が近づいてきました。準備されている方もたくさんいると思いますが、今回はフルマラソンを上手に走り抜くために役に立つ「カーボ・ローディング」についてお話したいと思います。 私たちの体は約1900カロリーを蓄えておくことができるといわれています。これは16マイル(約26キロ)を走るために必要なカロリーで、さらに長距離走の訓練を重ねると、人体は脂肪代謝と貯蓄された糖質を利用して20マイル(約32キロ)以上、走れる持久力を発達させます。これでもうマラソンの準備は整ったように見えますが、実は他にもまだできることがあります。それが、カーボ・ローディングです。 カーボ・ローディングとは、簡単に言うとグリコーゲン(糖質)の基となる炭水化物をマラソン当日3日前から大量に摂取する食事方法で、フルマラソンの最後の6マイル(約10キロ)を走り切るのに大変役立ちます。 体重1パウンド(約0・5キロ)当たりの一日の糖質の消費量は3〜5グラムです。普通、レース直前には運動量を減らすので、余ったカロリーは疲労回復を促し、体内に蓄えられます。さらに、カロリーの貯蓄を促進するための鍵となる炭水化物と水分の摂取量の比率は1:3なので、例えば体重は140パウンド(約63・5キロ)のマラソン選手の場合、マラソン当日の3日前から一日に4(糖質消費量)×140(体重)=560グラムの炭水化物、そして560(炭水化物量)×3(水分比率)=1680グラムの水分を摂取します。この時、少しの脂肪分とプロテインも摂取しましょう。 これらを確実に実践していくと、レース前には2〜5パウンド(約1〜2キロ)体重が増加します。ただ注意することは、カーボ・ローディングはお腹いっぱい食べることを意味するのではないということです。本来、体重増加が目的ではなく、レース中に燃焼する分のカロリーと水分を蓄えるのが目的です。普段通りの食事で炭水化物と水分の分量を増やします(全体の約80%)。炭水化物は主に2回の食事(朝、夕)から摂取するようにします。それ以外にも、一日2回以上はスナックを取りましょう。ベーグル、シリアル、エナジーバー、プレッツェル、ポテトチップス(塩味)などが良いでしょう。 最後の食事はレースの12〜15時間前に取るようにします、もし朝食に何か食べたければレースの2〜4時間前に300カロリーほど摂取してもいいです。ただ、マラソン当日の朝食は走ることには、あまり助けになりません。 その他の注意点としては、特別なことはせず、普段、食べ慣れているものから栄養を摂取しましょう。フルマラソン当日に食事が必要な場合は、持参して行くのも良いでしょう。 最後に、カーボ・ローディングをすることでガスが出やすくなるため、ガス止めの薬を飲むのもよいでしょう。 皆さん、効率的な食事法で”Have a good Mara-thon ! “(米スポーツ医学大学の研究報告より) (次回は11月19日号掲載) 〈今回の執筆者〉ケン・ヴィターレ医師/Kenneth C. Vitale, MD 日本クリニック/15W 44th St. 10FL. NY,NY 10036 スポーツ医学、理学医療科、リハビリテーション科。NY大学医学部卒業。NYU Harkness Center for Dance Injuriesにて資格取得。アメリカ大学スポーツ医学会(ACSM)、東京大学、欧州などで講演を行う。 過去の一覧