〈コラム〉座位習慣に潜む危険性 一日30分ジムで汗を流すだけでは埋め合わせにはならない

0

日本クリニック「医療の時間」第46診

現在、5600万人以上の米国人が障害者として生活しています。医療分野での障害者というのは、日常生活に支障がある状態の人を指します(食事、着替え、入浴、歩行など)。障害を持つということは入院のリスクが高まる他、医療費が高額であるなど、生活に大きな影響があります。
「身体運動と健康」という米国の雑誌で、2月に掲載された研究発表によると、どれほど運動しようとも、常に座位で活動することは、障害への独立した危険因子になるということが分かりました。
リサーチには、60歳以上2286人を対象とした、政府による全米健康・栄養調査データを使用。被験者は加速時計を着用し、2002年から05年まで、座位時間とその運動量を測定しました。
以前の研究では座位と障害の関係については、患者からの自己報告が主であり、それだけでは検証には不十分でしたが、加速時計の投入により、客観性に優れたデータ収集が可能となりました。このリサーチによると、高齢で体重が重い人ほど、自分の運動能力を過大評価している傾向があることが判明しています。
研究によると、年齢が60歳に到達すると、12時間以上を座位で過ごす人は誰でも、あらゆるタイプの障害のリスクが高まることが分かっています。そして毎時間、座位で過ごす時間が増える度に、そのリスクは倍になるとのことです。
この研究によって、座位習慣が障害のリスクを高める個別の危険因子となることが初めて証明されました。さらに、座位習慣で生活することが、適度な運動をする習慣がないのとほぼ同じくらいの、障害の危険因子となることが分かりました。
現在、多くの人々が毎日少しでも運動をすれば、仕事で一日中座っていても問題ないだろうと考えています。しかし、一日30分ジムで汗を流すだけでは、一日8〜12時間のデスクワーク、テレビ鑑賞やネットサーフィンで過ごすことへの、埋め合わせにはならないということが分かったのです。
これを踏まえて、座位で過ごすことが多い方は、少しでもその時間を減らす努力をしましょう。例えば、①電話などできることは立って行う②お茶やコーヒーをくみに行くたびに、オフィスを少し歩き回る③エレベーターを使わず階段を使う④近場なら車を使わず、できるだけ歩く⑤モールなどで駐車する時、入り口から少し遠目に駐車して歩く―などができるでしょう。少しのアイデアで、一日の座位時間を改善できます。もちろんエクササイズも大切ですが、健康に年を重ねたいですよね。Let’s move and be healthy !!
(参照:the Journal of Physical Activity & Health)
(次回は4月第4週号掲載)

drvitale〈今回の執筆者〉ケン・ヴィターレ医師/Kenneth C. Vitale, MD
日本クリニック/15W 44th St. 10FL. NY,NY 10036
スポーツ医学、理学医療科、リハビリテーション科。

過去の一覧

Share.