〈コラム〉法律の専門家がお答えします

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senmonka今週は「シンデル法律事務所」

最近の気になる移民法関連ニュース(その3)

前回、前々回に引き続き、移民法に関わる会社による不当な雇用管理に対する政府の対応について紹介します。
これまで、会社側の不当雇用、そして正しく施行されていないI―9管理についていくつか例を取り上げて紹介してきました。その中でも多く見受けられる誤りの一つに、雇用側がI―9のプロセスで新規従業員に対して提出してもらうべき身分証を会社側が勝手に決めるケース(法律上、会社は新規従業員が提示する資料(就労許可証や永住権等の身分証)を基に就労資格を判断しなければならず、会社が提出すべき身分証を指定し提出を求める事は出来ない)で、就労資格の誤った判断も含め、会社が正しくI―9プロセスを遂行しない場合、多額の支払い命令が発生する等、結果として会社に多大な悪影響を及ぼすことになります。このことからも移民法弁護士などにより、しっかりとI―9トレーニングを受けていれば、このようなケースは避けられたことでしょう。
このように不法就労者の故意の雇用からI―9プロセスの不当な遂行まで様々な例が報告されていますが、それを裏付ける形として、政府による会社への突然の査察も会社の規模に関係なく頻繁に行われています。最近の一つの例ですが、ある小規模の会社(従業員41名)に、入国管理や税関等を監視する米国土安全保障省の一局である移民・関税執行局(ICE)による査察が入りました。ICEは、会社が全従業員のうち18名に対し、本来行うべき雇用のタイミングでI―9プロセスを行わず、他に2つの違反があったと判断しました。ICEの分析によると、この会社のI―9フォーム記入上の誤った記載率が49%(違反ごとに770ドルの罰金)でした。
ただ、当会社は、従業員が少ないことに加え、損失も多く、また不法就労者の雇用も無く、今回が初めての違反ということから、首席行政聴聞官室(OCAHO)により最終的に1万4630ドルの交渉罰金額が提案されました。この事から、過去に違反暦がない会社など、特定の事情に対してOCAHOは、交渉を認める場合もあります。今回のケースに関しては、ICEが既に会社へ3年間の支払いプランの交渉を行ったので、OCAHOは3年間の間に全額を支払うか、一括で1万500ドルを支払うかの選択肢を与えております。この背景には、現在、移民法関連の違反数が増えていることがあり、より確実に罰金を回収すべくICEも実用的な支払いプラン等の柔軟な対応を取っているようです。
とりわけI―9など一見単純作業にも思えますが、非常に奥が深いフォームの一つで、一つの間違いが重大な違反へと判断される要因ともなりますので、より注意深く対応する事が重要です。
(次回は5月第2週号掲載)

sindel_faceup〈今週の執筆者〉
弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law)
NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員
アメリカ移民法弁護士協会会員
1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。

〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800
Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com

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