今週は「シンデル法律事務所」
H―1B監査に関する最新情報 その1
H―1Bビザをスポンサーする企業への政府による厳しい監査活動についてはこれまでにも何度かお伝えしてきましたが、米移民局(USCIS)は、実在するビザの悪用および非合法な雇用を減らす目的はもとより、不法雇用に対するその他雇用主への抑止力効果を高めるため、雇用主に対してH―1B会社査察およびフォームI―9監査を引き続き大々的に行っています。
その結果、皆さんの中には既にご存知の方もいるでしょうが、ここまで移民局はH―1B専門職ビザ従業員をスポンサーした何千にも及ぶ雇用主に対して査察監査員を送り込んできました。この移民局による取り組みは、H―1BやLビザなど、ビザスポンサーとなる雇用主が従業員のビザを移民局に申請する際に強制的に支払う500ドルの詐欺防止費用(“Anti-fraud fee”)をその財源としています。更にI―9監査もその活動頻度が増えており、結果として正しくI―9管理をしないまま不当な雇用を続けている雇用主に対しては、厳しい刑事また民事処分を下しています。これら移民局による取り組みは、業界に関係なく実施されており、この監査査察に対する認識が徐々に深待ってきているのも事実です。
この移民局による大々的な監査活動は、オバマ政権がブッシュ政権時代の不法移民への取り締まり方法から一定の距離を置く形となっており、とりわけ法律違反であると知りながら不法雇用を続けている雇用主に対しては大変厳しく対応しています。例えば、最近移民局は無作為に選び出したH―1B雇用主の会社査察を米国内28都市で実施しました。更に米移民関税執行局(ICE)は就労資格を示すことができない外国人の不当雇用の防止に努めており、ここ数年内でも1週間で、650件ものI―9監査通知を出した週もあり、それ以降、厳しい取り締まりが今でも続いています。
H―1B会社査察は一般に事前の通知無しで行われ、申請されたH―1B書類の内容が詐欺ではないか確認するために実施されます。監査員はスポンサー会社が申請書通りに実在しているかどうかの確認を始め、ビザ取得者がその会社で申請書通りの雇用また給与を受けているかについても厳しく確認します。最近の報告によれば、監査員はH―1B従業員と直接面談することを要求し、その際、H―1B従業員の身分確認をします。更に雇用主の人事担当職員を通して、対象となっているH―1B従業員の雇用内容の確認および給与の支払い金額等を細かく確認しているようです。
今後、皆さんの会社にも突然会社査察が来ないとも限りません。人事担当をはじめ、会社で社員のビザを管理している方は、常に監査に備えて準備が必要です。
(次回は9月10日号載)
(「WEEKLY Biz」2011年8月13日号載)
〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web: