今週は「シンデル法律事務所」
L―1Bの会社特有の専門能力
皆さんの多くが実感しているかとは思いますが、最近の傾向として移民局は、L―1ビザの申請を大変詳細にわたって審査しており、とりわけL―1Bビザについてはそのビザ取得者がどれ程の専門能力を有しているかを厳しく審査しています。弊社でもL―1Bビザの申請後に質問状(追加資料・情報のリクエスト)を受け取ったケースや却下されたケースが多々見られます。その多くの理由が、ビザ取得者の専門能力や知識が十分でないという理由です。その専門能力や知識は、アメリカの雇用主、または雇用主の外国の関連会社が生産した会社特有の製品やサービスに関するものでなければならない、という移民局の見解が窺えます。
実際、1990年以前の“Sandozケース”と呼ばれる判例が存在するのですが、当ケースではL―1Bの専門知識は会社特有のものでなければならないという判決が下されました。しかしながら、90年以降、移民局はその個人特異な専門知識は必要ではあるが、必ずしも会社特有である必要はないという文書を何度か公布しており、最近では、米国大使館(国務省)も知識は特異でなければならないが、必ずしも会社特有である必要はないという文書を公布しています。
このことからもL―1Bビザに関しては、移民局より国務省の方がより柔軟な姿勢をとっていることが窺えるのですが、忘れてはならないのは、移民局の審査官はアメリカ人の雇用を守るべきであると感じていることから、質問状をあえて発行し、その質問状の問いにアメリカ人労働者が短期間のトレーニングで同じ仕事をできる程度の仕事内容、専門能力の必要性ではないかと回答を求める場合もあります。ただし、本来これはL―1Bビザの取得要件ではないので、もしこの質問をされた場合には、その質問の根拠を問題視すべきなのです。現在、移民局はL―1ビザの質問状の内容について議論をしているようです。今後の移民局の動きには注目です。
証拠資料に対する審査官の判定基準
多くの人に知られていないのですが、ビザ申請で申請者が証明しなければならない証拠の基準は“preponderance of the evidence”(証拠の優越)と呼ばれます。それは、証拠資料が50%を超える確率で真実であるかどうかという基準で、言い換えれば、証明しなければならない事項の程度が51%以上であることを意味します。しかしながら、残念なことに、移民局はこの重要な基準を忘れているかのように審査を行っております。
(次回は2月11日号載)
(「WEEKLY Biz」2012年1月14日号載)
〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
過去一覧