移民局による最近のビザ申請審査の厳しい現状(その3)
米国の政策調査機関であるthe National Foundation for American Policy(NFAP)が最近発表した移民局によるビザの審査状況に関する調査結果に関し、これまでいくつか記事を紹介してきましたが、今回は質問状が届く割合、および国籍による違について紹介したいと思います。
まずL―1B申請に対する質問状発行割合についてですが、前回の記事でも触れましたが、ここ最近大変高い割合で質問状が届いております。左記一覧表からもその驚くべき推移をご確認いただけるかと思います。
では、その他のビザの質問状発行の割合はどうでしょうか。
L―1Aビザ申請の質問状発行割合は2004年度が4%、07年度が24%、そして11年度が51%となっており、L―1B同様大変高い割合です。
H―1Bビザ申請の質問状発行割合に関しては、04年度が4%、07年度が18%、そして09年度が最も高い35%となっており、11年度は26%と下がっていますが、引き続き高い割合である事には変わりありません。
最後にO―1Aビザ申請の質問状発行割合に関しては、04年度はわずか1%だったのに対し、07年度が13%、09年度がその2倍以上となる28%、更には10年度の30%、11年度の27%と引き続きその割合が高止まりしています。
一方、ビザ取得者の国籍に目を向けてみると、とりわけインド人のL―1B、またケースのタイプとしては特に新会社でのL―1B申請ケースでの却下の割合がとても高くなっています。その却下割合は08年度が2・8%だったのに対し、09年度には22・5%にまで引き上がっており、米国での新ビジネスを開始する段階の調査プロジェクトなどを目的とした申請も多い中、大変高い却下率となっております。米国の基本的な考え方、また法律では人種や国籍による差別は断じて禁止しています。悪い言い方をすれば、このような状況は、移民局審査官が特定の外国からの新規企業また労働力の参入を歓迎しない差別的な体質が根付いているのではないかという懸念さえ抱かせます。一方、カナダ人のL―1B申請却下率は08年度の2%から09年度の2・9%と微増に留まっている現状もあります。(次回は11月10日号載)
(「WEEKLY Biz」2012年10月13日号載)
〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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