出生前診断24
~妊娠第1期:ファースト・トリメスター
簡易な検査で精密な結果が得られる時代に突入した(5)~
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第59回
前回から、染色体異常を精密にスクリーニングできる新しい血液検査に関する市場の見解の誤りの背景、そして、当技術であるセルフリーDNA検査についての説明を開始しています。
前回、複数の新スクリーニング検査の会社のマーケティングが常染色体トリソミーを正確に検出の結果は最低でも99%確率で罹患の可能性を実証している、と説明していることからその情報に基づき産科医または遺伝カウンセラーらが妊婦にその確率を伝えている報告されていることをお伝えしました。
スクリーニング検査の正確性を分析する大切な事後確率の一つで、陽性反応適中度(Positive predictive value:PPV)があります。これは検査結果において、罹患している、と出たとしても、実際は罹患していない割合を示しますが、上記にある99%という説明にもかかわらず、2015年に臨床結果を発表した医療文献において全くこの内容が正確でないことが示されています。この発表は、米国内でも著名なワシントン大学病院によるもので、12年3月から13年末にかけて、632人の妊婦のケースの新スクリーニング検査を追跡調査したところ、実際罹患してたケースは77.4%である、と報告されました。また、スクリーニング検査による陽性反応の結果を基に、実際の出生前診断を行わずして、9人の妊婦が中絶を行ったことが発表されています。検査の正確性が誤っていることは命に関わる判断を行う場合、致命的であると言えます。
それでは、なぜこの誤差が起きるのか、セルフリーDNA検査とは何を検査するものなのでしょうか? このセルフリーDNA検査を理解することにより、精密な結果を得ることができるこの簡易な検査が侵略的な施術である出生前診断(絨毛検査(CVS)や羊水検査)に取って代わるもの、という市場に存在する認識は、誤りであり、精密なスクリーニングにとどまり代替にはなりえないことが理解することができます。次回から当技術を説明していきます。
(さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。