新しい血液検査は胎児のDNAを調べて結果を出しているのではない

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出生前診断25
~妊娠第1期:ファースト・トリメスター
簡易な検査で精密な結果が得られる時代に突入した(6)~

「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第60回

前回のリポートでは、染色体異常を精密にスクリーニングできる新しい血液検査が市場に出ていますが、この正確性における認識が明確でないために、当スクリーニングの結果に基づいて、実際は胎児が正常であるのも関わらず中絶を選択しているケースがあることをお伝えし、この市場の見解の誤りは当技術であるセルフリーDNA検査の方法論にあることを示唆しました。

今回から、セルフリーDNA検査とは何を検査するものなのかを説明し、精密な結果を得ることができるこの簡易な検査が侵略的な施術である出生前診断(絨毛検査=CVS=や羊水検査)に取って代わるもの、という市場に存在する認識は、誤りであることを示すために当技術を説明していきます。そして当スクリーニングは、“精密なスクリーニング”に留まり代替にはなりえないことを理解することができるでしょう。

日本のウィキペディアを見ても、当スクリーニング検査は「胎児の単一遺伝子病や染色体異常の診断」とありますが、この診断という言葉は不適切で誤りです。また同事典には、「アメリカ合衆国のシーケノム社が2011年に開発したMaterniT21により、胎児の染色体異常が診断可能になった」とありますが、これも誤解を招く記述であり、誤りです。

染色体異常がスクリーニングできる新しい血液検査は、胎児のDNAを調べて結果を出しているものではありません。それでは、何を調べているのでしょうか?

当スクリーニング検査を市場に出している会社らは「妊婦の血液からcell-free fetal DNAを調べる」とあります。cell-free fetal DNAとは日本語では、細胞フリー胎児DNAのことです。

これは、当スクリーニングが、妊婦の血液中に存在するごく僅かに循環する胎児のDNAの断片に対し、染色体異常があるかどうかを分析する、ということを意味します。
これはどういうことでしょうか? これは胎児のDNAを調べていることにはならないのでしょうか?

次回は、妊娠中の胎児と母親の構造を簡単に説明して、当スクリーニング検査の本質を認識していきます。

(さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子)

さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子【執筆者】清水直子しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。

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