出生前診断19 ~
妊娠第1期:ファースト・トリメスタースクリーニング検査から更なる精密検査である出生前診断へ(4)~
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第54回
前回(4月1日号掲載)からスクリーニング検査で染色体異常の可能性が示唆された場合に、更に指摘された異常について精密に正確に調べることができる出生前診断について説明しています。まず従来から行われてきている非常に信頼性の高い二つの出生前診断の方法のうちの一つである絨毛(じゅうもう)検査(CVS)について説明を継続します。
CVSは通常、病院で専門医、専門技師によって行われます。胎盤の位置によって変わってきますが、膣・子宮頚部(けいぶ)からで行われる場合と、腹部に針を刺して行われる場合があります。どちらの方法も痛みはありませんが、人によっては細胞が採られた時に、生理痛のような鈍痛を感じることはあります。当施術に要する時間は30分ほどですが、実際の細胞を採る時間は1~2分未満です。
膣・子宮頚部からで行われる方法においては、仰向けに横になり、長く細いチューブを膣から挿入し、子宮へ届くようにします。専門医は、超音波によって子宮内膜と絨毛膜の間にチューブを配置させます。絨毛膜とは、妊娠が進むに従って胎盤となるもので胚膜のことで、卵膜の外層であり、胚外壁側中胚葉と栄養膜から形成される多層の膜のことを指します。ここで絨毛の一端を採取し、検査に送ります。
腹部に針を刺して行われる方法でも、仰向けに横になります。この場合も、超音波により胎盤と子宮壁の位置を確認し、この超音波によるナビゲーションの下、針を腹部を通し、子宮壁から胎盤の端へ到着するように刺し、細胞を採取します。絨毛は胎児の基礎であるため、絨毛を分析することは今後成長する胎児の遺伝子構造を明らかにすることが可能なのです。検査結果は1~2週間で得られます。
CVSの結果の染色体異常の確実性は98%です。
CVSを実行することにおいて一番の懸念はリスクについてですが、細胞を採取することによる妊婦や胎児に損傷を与えるリスクは非常に少なく、370分の1であることが分かっています。CVSの検査自体は安全で信頼性があると言えましょう。たまに、CVSの後、出血が見られることが報告されています。少々の出血は問題ないとされていますが、3日以上出血が継続する場合は担当医に相談してください。また、発熱が起こった場合は、非常に少ない確率でCVSによる感染症があり得ますので必ず担当医に連絡する必要があります。
(さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。