出生前診断22
~妊娠第1期:ファースト・トリメスター
簡易な検査で精密な結果が得られる時代に突入した(3)~
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第57回
今回も、染色体異常を精密にスクリーニングできる新しい血液検査について説明していきます。前回のリポートで、精密な結果を得ることができるこの簡易な検査が侵略的な施術である出生前診断(絨毛検査(CVS)や羊水検査)に取って代わるもの、という市場に存在する認識は、誤りであり、精密なスクリーニングに留まること、そして、代替にはなりえないとお伝えしました。
今回から、この代替できる、という誤った市場の見解の謎について説明していきますが、この血液スクリーニング検査は、日本の市場で言う新型出生前診断のことで、日本でも正しい認識が妊婦のみならず医療専門家間にも正確に普及しているかどうか、は疑問があります。日本では2013年に導入され臨床研究として実施され始めましたが、14年のNHK報道では、“妊婦の血液を採取するだけで、胎児に異常があるかどうか調べられる新型出生前検査”と伝えました。この叙述は、誤解を招く誤った事実の提示です。
新型出生前診断という日本の命名も誤解を招くものがあります。そもそもこの検査は診断ではなく、スクリーニングに過ぎないからです。日本では無侵襲的出生前遺伝学的検査(non-invasive prenatal genetic testing ; NIPT)、母体血細胞フリー胎児遺伝子検査(maternal blood cell-free fetal nucleic acid(cffNA)test)、母体血胎児染色体検査、セルフリーDNA検査とも呼んでいます。
日本には存在しない遺伝子カウンセラーらが米国では活躍しています。遺伝子カウンセラーによると、より多くの妊婦がセルフリーDNA検査についての正しい知識のカウンセリングを受けることによって、なぜこれらの検査がスクリーニングに過ぎず、診断ではないか、を理解することができる、と言っています。また、これらの新検査の会社らのマーケティングが誤解を招くことも示唆しています。
では、このセルフリーDNA検査とはどのような検査でしょうか。次回から、この技術的な説明をしていきます。
(さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。